第26話 頭に「は」のつく映画といえば?

 かつて「対戦ゲーム」といえば、隣でファミコンのコントローラーを握っているか、ゲームセンターの対面型筐体で格闘ゲームをやっているか、ぐらいだったと思いますが、最近はネット経由で「顔も本名も知らない誰か」と対戦するのが当たり前の世の中になりました。

 そのようなゲームで多いのが、POV(Person of View)やFPS(First Person Sight)と呼ばれる、「一人称視点」で撃ち合う内容。


 そんな映画があれば、没入感が違うのに……と思っていたあなた。そんな映画、あります。新感覚アクション。 

 

 頭に「は」のつく映画、「ハードコア」を紹介します。


 原題は「HARDCORE:HENRY」。


 2016年のアメリカ・ロシア合作映画。監督はイリヤ・ナイシュラー、出演はシャルト・コプリー、ヘイリー・ベネット、ダニーラ・コズロフスキー、アンドレイ・デミエンティエフ、ダーシャ・チャルーシャ、ティム・ロスほか。

(タイトルが似ていますが、2018年の邦画「ハード・コア」とは別物です)


 ヘンリーは、見知らぬ研究施設で目を覚まします。声が出ませんし、自分の過去の記憶が思い出せません。


 研究者であり、ヘンリーの妻と名乗る女性・エステルによって、機械の腕と足が取り付けられました。


 説明によると、ヘンリーは事故で肉体を大きく損傷しており、機械製の人工パーツによってカバーしようとしているそうです。

 記憶喪失なのも、どうやらその事故が原因のようです。

 声が出ないヘンリーに、人工声帯を埋め込む手術の直前、研究施設は謎の集団によって襲撃を受けます。


 エステルと共に脱出しようとしたヘンリーですが、よりによってエステルはさらわれてしまいました。


 ヘンリーを知る友人・ジミーの助けも入り、機械の身体で超人的な運動能力を駆使し、妻のエステルをさらった男・エイカンから救出するためにアジトへ向かいます。


 エイカンの部下たちに、ジミーは殺されてしまうのですが、何度殺されても、不思議なことにジミーは元気な姿で駆け付け、ヘンリーを助けてくれます。


 ジミーは、元はエイカンの研究所の職員でした。


 事故で瀕死の人間を改造して蘇らせて、無敵の「サイボーグ兵士軍団」を組織して、戦争をしている国に高額で売りつけることが目的で研究を進めていたのです。


 ですが、エイカンの指示が原因で、ジミーは大怪我を負い、脊髄に損傷を受けて車椅子生活となってしまいました。

 エイカンを恨んだジミーは、自分のクローン人間を複数体生成し、遠隔地から意識を同調してコントロールできる装置で自分のクローンを操り、ヘンリーを助けていたのでした。ヘンリーを使い、エイカンへの復讐を成し遂げるために。死んでも元気な姿で復活するのは、クローンのスペアが何体もいるからです。


 そして、ヘンリーはエイカンと対峙するのですが、そこで驚くべき事実が明かされるのです……といったアクション作品です。


 スタントマンの頭部にカメラを固定し、映画は全編に渡って「主人公の視点」で激しいアクション、追跡劇を延々と繰り広げます。

(乗り物酔いとか、弱い人は酔っちゃいそうなくらい、ぐらんぐらんと視界が揺れます)


 主人公のヘンリーは声帯を付けられる前で、自分で喋れないというのも、見ている側の“一体感”を高めるのに一役買っています。主人公・ヘンリーの顔は画面に一度も現れず、観客は安心して「ヘンリー」に没入することができます。


 ロシア出身の新人監督イリヤ・ナイシュラーが作ったプロモーション映像が2015年にネット上で反響を呼び、クラウドファウンディングでこの長編映画化が実現したそうです。


 馬に乗ろうとすると「荒野の七人」の音楽が掛かったり(そして、落馬して音楽が止まったり・笑)、クライマックスの研究施設屋上の大立ち回りでは、自分の両足にアドレナリン注射をぶちこんで、クィーンの曲で一気にボルテージが上がるところなど、音楽の使い方も絶妙で、見ていてテンションが上がります。


 こういう映画こそ4DXでやってくれればいいのにー!

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