第19話 頭に「て」のつく映画といえば?

 クリスマスの時期にはまだ早いですが、もしも誰かと一緒に過ごす予定が無い方、ぜひ見ていただきたい作品……。


 頭に「て」のつく映画、今回は「天使のくれた時間」を紹介します。


 2000年のアメリカ映画。原題は「The Family Man」。

 監督はブレット・ラトナー、出演はニコラス・ケイジ、ティア・レオーニ、ドン・チードルほか。


 若い頃、「ロンドン行きは考え直して」と恋人のケイトに反対されながら、彼女と別れ、仕事で成功するためにロンドンに旅立ったジャック。


 その結果、13年後のジャックは、ニューヨークのウォール街で成功し、大手金融会社の社長として、優雅な独身生活を満喫していました。

 代わりに、クリスマスイヴもひとりで会社に残って、ひとりで仕事漬け。

 少し寂しい人生です。


 帰り道、立ち寄った店で、不思議な青年・キャッシュと出会います。

「これから起こることは、あんたが招いたことだ」

 謎めいた言葉を残して、キャッシュは姿を消しました。


 その日の夜。


 豪華な高層マンションの自宅で眠りに入った彼は、翌朝起きると、見知らぬ庶民的な家のベッドにいることに気付きました。


 隣には、13年前に別れたはずのケイトが寝ており、そして2人の幼い子供までがいました。


 ジャックはロンドン行きを中止して、そのままケイトと結婚、エドじいさんの店でタイヤの小売業をしている、家族のいる庶民的な「もうひとつの人生」を経験していくことになるのですが……。


「もしもあの時、違う道を選んでいたら?」という“もうひとつの選択肢”を考えさせてくれる、クリスマスのファンタジー映画。


 ジャックも最初は、ケイトとの甘い結婚生活を堪能します。

 2人の幼い子供の相手をする、パパとしての楽しい日々。ああ、家族ってこんなに賑やかで幸せなんだっけ。


 そんな日々も束の間、とにかく、ちびっ子たちの世話で忙しかったり、高いスーツを勝手に買おうとしただけで「子供たちの学費はどうするのよ、生活に余裕ないのよ!」とケイトに怒られたり、ジャックは窮屈さを感じ始めます。

 金融会社の社長だったジャックは、金に糸目をつけず傲慢なやり方でのしあがってきたので、貧乏だから何もできない、というのが苦痛なのです。


 そんな折り、ジャックが働いているタイヤ店に、「車がパンクした」とピーターという人物が偶然にも立ち寄ります。


 ジャックは「前の世界」で金融会社の社長を務めていましたが、ピーターはそこの会長だった大人物です。彼の性格や趣味は熟知しています。


「こっちの世界」では初対面になりますが、ジャックは、ピーターに取り入って経済の知識を生かし、金融会社に転職して働き始めました。

 やっと生活を軌道に戻すことができた、とマンションの一室で豪勢な暮らしを始めたのですが、ケイトは浮かない顔。


「なぜだ? 人がうらやむ生活ができるってのに」

「子供の教育に悪いから、都市部を離れて地方に移り住んだのに……でもいいわ、あなたが本当にしたいなら、私もついていく。あなたを選ぶわ」


 そう答えるケイトに、ジャックはモヤモヤした気持ちを抱えます。


 かつてジャックは、ケイトを“選ばなかった”からです。

 それなのに、ケイトは自分を“選んで”くれる……。


 立ち寄った店のレジ係で、あの青年、キャッシュがいました。


「“きらめき”は一瞬だ。永遠には続かない」


 その言葉で、ジャックはもうじき、この世界に“別れ”が訪れることを知るのです……。


「もうひとつの人生」を疑似体験させてくれるファンタジーで、クリスマスに見るにはいい話。

 邦題のセンス、いいですよね。


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