第5話 これが、王子様を気持ちよく育てる方法らしい。「ワンツー、ワンツー?」

 アスカちゃんの、言う通り。

 そう。

 王子様という盲動犬の世話は、基本、ご主人様がやる。

 視覚に障がいをかかえる人の、仕事。

 他の人には、まかせないらしい。

 盲導犬の食事は、基本的に、朝か夜の一食のみ。

 うんちは、リズム良く、 1日に 1回。

「おうじさまのうんちは、しっぱいも、おおいんですよ?」

「すごい、言い方…」

 王子様…、いや、盲導犬がうんちに失敗したときは、きびしく叱らなければならないそうだ。

「うんちのしっぱいは、しかたないよね~」

 そういう甘やかしで接すれば、成長が遅れてしまう。

「おうじさま?そのうんちは、ダメ!」

 叱る、叱る。

 叱られれば、犬は、学習できるから。

「怒られた!もう、失敗はしないワン!」

 痛みを忘れずに学習できた犬は、伸びる。

 うんちをしたくなると、必ず、ご主人様に知らせてくれるようになるという。

「あ…、うんちしたい!」

「どうしたの、おうじさま?」

「ご主人様?お願いです。うんちを、させてください!」

 特に、外出する前は注意。

 自宅でうんちをすませてから、ご主人様の元に向かわせるようにしたいもの。

「どうしたの、おうじさま?そんなにも、モジモジして…」

「くうん、くうん…」

「…おうじさま?やっぱり、うんちしたいの?」

 仕事の外出時間が長引けば長引くほど、がまんができなくなっちゃう。

「おうじさま?うんちしたいんだよね?」

 王子様の気持ちを、察してあげよう。

「ハナおねえさん?」

「はい」

「おうじさまが、うんちをしたそうにモジモジしていたら、どうすればいいとおもいますか?」

「王子様がうんちしやすいように、動きやすいようにしてあげるとか?」

「おおあたたり!」

 まずは、犬の胴体のハーネスを外す。くさり製の首輪姿から、革のひもだけの姿にしてあげるんだ。

 すると…。

「やった!開放されたワン!」

 王子様は、気を良くしてくれるらしい。

「でも、アスカちゃん?知らない人がいるところで、王子様、おしっこして良いですよだとか、うんちして良いですよとかって言うの、勇気がいると思いますけど」

「へんなめで、みられちゃうから?」

「ええ」

「そんなときには、ワン・ツーです」

「ワン・ツー?」





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