第142話 エッチな誘惑 ※一部第三者視点
現実世界に戻った俺達はあれから話し合い、桃乃の提案で笹寺は仕事場には復帰せずに自身の父親がやっている工場で少しの間働くことにしてもらった。
笹寺の話を聞いた時から胸騒ぎがしていたが、仕事場に来てからその原因がわかった。
「同期の栗田から聞いたんですが、笹寺さんが突然地方へ転勤になったって営業部では話になっているそうです」
「ああ、やはりそういうことか」
胸騒ぎの原因がやっとわかった。誰かが笹寺を意図的に異世界へ連れて行ったことになる。
「やっぱりマリアンヌさんですかね?」
可能性としては異世界の存在を知っている人物になる。今のところはアメリカ本社の秘書であるマリアンヌがそれに当たる。
そもそも、誰でもよければアメリカ本社の人が日本支部の人物を異世界へ送る意味がわからない。それなら適当に誘拐して異世界に連れて行けばいい。
「いや、確実な証拠もないだろうし、笹寺が飛行機で移動しているときは見ていないって言っていたからな」
「それじゃあマリアンヌさんじゃ――」
「私の名前を呼んでなにかあったのかしら?」
俺と桃乃が話していると、突然女性に声をかけられた。振り返るとそこにはマリアンヌが立っていた。
「えっ……」
突然の出来事に桃乃も思考が停止している。ここは俺の出番だろう。
「な……なぜマリアンヌさんがいるんですか?」
少し驚いてしまったが、桃乃よりは……隣を見ると桃乃に睨まれていた。
どうやら頼りないところを見せてしまったようだ。
俺は考える時間を割くために、そもそも居る理由を聞くことにした。その間にも俺の思考は急加速し、言い訳を導き出している……はず!
「今日行われる日本支部の営業報告と今後の話し合いで社長が呼ばれているのよ」
どうやらマリアンヌは仕事の都合でこちらに来ているようだ。それにしてもいつまで日本に滞在している予定なんだろう。
「それで私がどうしたのかしら?」
俺はマリアンヌを見ると今日もピチッとしたスーツを着ていることに目を向けた。その視線はマリアンヌも感じたようだ。
「いや、言いにくいので――」
「そういうことね。やはり日本人は積極的じゃないのね」
そう言いながらも、俺の手を自身の腰に回し、脚を俺に絡めて耳元で何か話し始めた。
「ミスター笹寺はどこにやったの?」
「……」
俺は突然の出来事で固まってしまった。息子も仕事場だからと戸惑っているようだ。
マリアンヌの刺激が強すぎる。これはエロ漫画の世界なんだろうか。
「ふふふ、その様子じゃ何も知らないようね」
マリアンヌは優しく俺の耳を噛むと、そのまま立ち去って行く。その後ろ姿は薄い黒色のオーラを放っていた。
「ももちゃん、あの人なんなんだ!?」
「先輩……ここ仕事場ですよ?」
桃乃は恥ずかしそうに俺の股間を見ていた。どうやら反応してしまったようだ。
俺の息子よ。
そこは耐えてくれよ!
「あー、これは仕方ないからな」
俺は少し屈みながらもすぐに仕事を始める。さっきマリアンヌが言っていた会議に、なぜか俺も参加することになっていたからだ。
それにしてもマリアンヌが何か言っていた気もするが、突然大胆な行動をしたため俺は忘れてしまった。
♢
ある一室で男女が静かに話し合っていた。その姿はまるでマフィア・ギャング映画のワンシーンの様だ。
「それでどうだったんだ?」
「ミスター服部が関わっていると思ったけどやっぱり違ったわ」
「そうか」
女は足を見せつけるように組み直していたが、すらっと伸びた脚に男は気にもせずに紙を見ている。
「やっぱり社長には効かないわね」
「ん? なにがだ?」
男が顔をあげると女は不貞腐れたような表情をしていた。密室で男女二人であれば、普通であれば男はその気になってしまうだろう。
ただでさえ彼女は魅力的な女性だ。
「ミスター服部は私に興味津々だったわ」
女は男に近づき胸に手を置く。少しずつボタンを外していく。
男は笑って女にされるがままボタンを外されていた。
「本当に社長は女性が好きなんですか?」
「何を言っているんだ?」
女は男の上に乗り頬に手を触れ見つめあっていた。どこから見ても今から激しく愛し合う二人に見えるだろう。
「だって、ミスター服部の話をすると楽しそうだよ?」
「彼は面白いからね。私の物にしたいぐらいだよ」
男はそのまま女を抱きかかえると、デスクの上に女を乗せた。男は紙を取り出すと、女に渡す。
「次は誰がいいか?」
「んー、次は生命力が低い人がいいかもね」
「ああ、調べてみたらあの男は有名な武道家だったらしいからな」
「それなら仕方ないわ。じゃあ、次はこの人にしようかしらね」
女はどこか楽しそうに指を差している。
「じゃあ、次はこの人で決定だな」
そんな話をしていると、扉をノックする音が聞こえてきた。
「今からが楽しい時間だったのに!」
女はデスクから降りると身なりを整えて扉を開けた。
「お時間となりました」
「わかりました」
さっきまでの淫らな姿はなく、仕事をする姿に切り替わっている。
「社長お時間です」
「ははは、君の変わり様は凄まじいな」
男は笑いながらデスクに紙を置くと、ジャケットのボタンを閉めて部屋から出て行く。
デスクに残された紙にはたくさんの名前が書かれていた。
その一番上には"日本奴隷名簿"と……。
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