第119話 神様 ※一部第三者視点
俺達は現実世界に戻るゲートに潜っていく。
【遺跡発掘お疲れ様でした。今回の報酬を計算します】
【遺跡発掘報酬70万円です】
遺跡を発掘しただけでかなりの報酬が貰えた。内心……いや、俺の顔から笑いが止まらない。
そんな笑いを吹き飛ばすぐらい大きなデジタル音声と警報音が直接脳内に鳴り響く。必死に耳を閉じても、音の大きさは調整ができないのが難点だ。
【特別報酬が発生しました! 特別報酬が発生しました!】
新たな経験に俺はワクワクしていた。
【異世界ダンジョンの発見報酬30万円です】
期待した俺は馬鹿だった。まさかお金が発生するだけだとは思いもしなかった。
金額的にもゴブリンを倒しまくって、素材を売却するぐらいの値段と変わらない。
【"アヌビス(獣人?)の加護"を手に入れた】
「ヌフフ」
どうやら俺もリョウタの笑い方が移ったようだ。まさか称号の他にも加護が存在していたとは思いもしなかった。
獣人という表記から、きっとリョウタが最後に言っていたプレゼントってやつだろう。
【それでは報酬の発表です。遺跡報酬70万円、特別報酬30万円になります。合計100万円の報酬となりました】
一回の異世界副業で得られる報酬の中では高い方だろう。少し早めに戻ってきたが今回も残り時間による報酬はないらしい。
【マジックバックの中身は売却しますか?】
俺は今回もアイテムを売却しないことにした。今後は自動アイテム生成で素材やアイテムが一定数必要になるため、残しておく必要がある。
それを踏まえると利益としては今まで変化はない。
今後異世界で過ごす時は、同時に採取や討伐するように心掛けることにしよう。
【お疲れ様でした。またのご利用をお待ちしております】
アナウンスを聞き終えると、俺は再び歩き出した。
桃乃は何か考えているのか、その場で立ち止まっていた。
「なにかあった――」
「あっ! 思い出した!」
どうやら桃乃は考え事をしていて、立ち止まっていたらしい。
「何を思い出したんだ?」
「アヌビスってあの神様のことですよね?」
桃乃にも聞こえたのか、アヌビスという存在を知っていた。きっと同じアナウンスが流れていたのだろう。
「そうなのか?」
「先輩が獣人って言ってた人ですよね?」
「あー、そんなことを言っていた気もするが俺が会ったのはリョウタだぞ?」
確かに何となくあいつの口からアヌビスという言葉がでてきた気もする。
それでもリョウタはリョウタだ。
そもそも俺はアヌビスというネジみたいな名前のやつを知らない。ネジ神様と言われれば納得はするが、そんな神様はいないだろう。
「今度一緒に会いに行ってみるか?」
そんなに気になるのなら、次に行くときは桃乃を誘ってみることにした。図体は大きいが、ツンデレの半コボルトにしか見えないため、きっと会ったら桃乃も気にいるだろう。
「急に行くのもご迷惑になると思うので、検討しておきます」
そう言って桃乃は先に歩いて行ってしまった。どうやら
決して俺が振られたわけではない。
確かに人見知りのリョウタのところへ、勝手に連れて行っても、お互いにどうすればいいかわからず戸惑ってしまう。
それでも時期が来た時には桃乃に会ってもらおうと俺は思った。リョウタには桃乃みたいな友達も必要だと俺は感じていた。
その後、俺達は家に戻ると、おばさんから貰ったおかずを食べて解散した。
♢
「本当に頭の回転が遅いわね……」
部屋の中で女はモニターを眺めている。そこには頭が怪物のように変化している男と小さい男が話していた。
「そろそろこの世界の
女は近くにあった本を取り出しペンでチェックを入れていく。その中には日付とその日に何が起こるのか隙間がないほどびっしりと文字が埋められていた。
その中には"火災"という文字も書かれていた。
女は本を戻すとモニターの画面を切り替える。そこには魔物を抱きかかえた女性が歩いていた。
突然苦しみ出す女性を必死に、ハイエナのような魔物が舐めて慰めている。
「相変わらずこの子も絵になるわね。ただ、彼女も耐性が足りないのかしらね。あの時の記憶に支配されているわ」
その後も女はモニターを常に切り替え、人間の動きを観察していた。彼女は別の本を取り出すと、モニターの中で起きたことを全て記載する。
「そもそも私が選んだ人選ミスかもしれないわ。ももちゃんもまだ過去に囚われて現実を直視できないのね。慧くん意外は全てお義父さんと同じように見えているのかしら」
女は本のページをペラペラと捲る。一人一人の名前が書かれた本には、その人の過去と未来が描かれている。
「今後この世界を左右するのは選ばれたあなた達だけよ」
「おーい、飯はまだかー!」
そんな中どこからか女を呼ぶ声が聞こえてきた。
「はぁ、本当に人間って厄介だわ。ここの男達は自分のご飯ぐらい作れないのかしら。すぐ嫁に飯はまだか、風呂はまだかってあいつは何様のつもりなのかしらね」
女は本を閉じるといつものように自然とテーブルに飲み込まれるように消えていく。
「クトニオスの世界じゃなければ今すぐにでも破壊したいわ。人間なんて自分勝手な生き物なのに、自分が一番だと思って惨めな存在ね」
近くにあったエプロンを身につけると、声色を変えて階段を降りて行った。
「お父さんちょっと待ってね」
彼女もまた神でありながらも、ある一家の主婦でもあった。
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