第120話 異世界の疑問

 俺は異世界で気になっていたことをスマホで調べることにした。まず1つ目は"アヌビス"についてだ。


 確かに桃乃が知っているアヌビスなら、リョウタと戦うことがないように配慮は必要になってくる。


「アヌ……ビ……ス」


 俺はスマホで文字を打って検索ボタンを押す。画面に映し出されたのは、俺が間近でみたリョウタの姿だった。


「まじかよ」


 スマホに打ち出されていたのは古代エジプトの神で、犬の頭で体は人間という変わった姿の男が描かれていた。


「ミイラを作ったのもアヌビスなのか」


 確かにアンデットコボルトはリョウタが作ったと言っていた。そこまで合っていればリョウタはアヌビスで間違いはない。


 リョウタが一瞬我を忘れかけて圧を放った時は、落ち着かせるのに精一杯だった。


 あの状態で敵として向かってきたら、今の俺でも一瞬で死んでいただろう。そう思うとこれからもお金を貯めてなるべく早めに買い増しする必要が出てきた。


「次はハイエナについてだな」


 気になっていた2つ目のことはスカベンナーについてだ。スカベンナーに会うときはいつも1体で遭遇する。だが、俺の中でハイエナは犬に似た存在で群で行動しているイメージがあった。


 実際にあるジャングルの物語でも脇役トリオとして集団で出てくることもあるぐらいだ。


 魔物の中でもコボルトのように動物がそのまま魔物化した存在であれば、習性もほとんど元の動物とそこまで変わらないだろう。


 コボルトなんて自動鑑定でほぼ犬って説明があるぐらいだ。


「んー、そこは種類によって違うって感じなのか」


 ネット上ではハイエナの種類によって異なっていた。代表的な種類ではオスよりメスの方が強く、育つとオスがグループから抜け出すらしい。


 そう考えるとベンはオスのハイエナなんだろう。男に必要な物もついていた。


 異様に震える時があったが、ハイエナの習性ではないらしい。むしろ動物とかでも強い種類に存在しているためベンも何かあるのだろう。


「あとは一番謎の薄馬鹿野郎だよな」


 スマホで入力しても悪口にしか見えない。なぜそんな魔物が存在しているのかも謎だ。


 そもそも異世界自体が謎のため、多少名前がバグみたいな存在がいてもいいだろうが、流石に名前がおかしすぎる。


 検索しても"薄馬鹿"でヒットするが何も検索に引っかからないのだ。


 その中で面白い掲示板を発見した。


――薄馬鹿下郎の誤変換について


 ある作品の薄翅蜉蝣ウスバカゲロウが誤変換で薄馬鹿下郎となったことを話し合うスレだった。


――――――――――――――――――――


1.ナナシさん

2018/5/10(木) 04:51:17 ID: 19rTPa9rG+


今日のマッシュお前ら見たか?

薄馬鹿下郎が登場したぞ!

あれって、ウスバカゲロウであってるよな?



2.薄馬鹿野郎

2018/5/10(木) 04:53:50 ID: vS1stSxPjV


ははは、やっと俺の出番がきたか!


3.ナナシさん

2018/5/10(木) 04:54:50 ID: 19rTPa9rG+


いやいや、お前誰だよw

薄馬鹿野郎ってただの悪口だろ!


4.薄馬鹿野郎

2018/5/10(木) 04:55:23 ID: vS1stSxPjV


おいおい、俺の扱いひでーなww


5.薄馬鹿下郎

2018/5/10(木) 04:56:43 ID: VKVI6IYcXf


チラッ!チラッ!


6.薄馬鹿野郎

2018/5/10(木) 04:57:04 ID: vS1stSxPjV


はよ、出てこいよ


――――――――――――――――――――


「うん、あいつらは何がしたかったんだ?」


 その掲示板を見てみたが、ただの暇つぶしのスレだった。


 そんな中で出てきたウスバカゲロウが気になり調べる。


「あー、蟻地獄の虫か!」


 幼虫の姿形と見た目があの謎の魔物にそっくりだったのだ。


 ウスバカゲロウは成虫の姿がトンボに似ている。


 幼虫が蟻地獄を作り、穴を掘った砂土中に待機し、獲物に砂をかけて引きずり込んで捕食する昆虫だ。


「ということは俺が被捕食者だったのか!」


 考えみたらめちゃくちゃ攻撃的だった気がする。


 あの時は悪口を言われていると思ったが、出てきたのは自動鑑定による名前の鑑定だ。


「とりあえずスッキリしたから今日は寝るか」


 異世界の悩みがなくなり、スマホを閉じて寝ることにした。


 この時なぜ知らない魔物に自動鑑定が反応していたのか。


 知らない魔物が何種類も初めから存在していたのか。


 なぜ第一区画と時間軸が違うのか。


 しっかり考えておけばよかったと俺は後々後悔することになった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る