第114話 久しぶりに遊びました
「これだけで10分に短縮されるんかよ!」
握り潰したリップルの実を入れたことで自動アイテム生成の時間が短縮されていた。
さっきは2時間で完成する予定だったのが、今は10分間となっている。俺はそのまま自動生成ボタンを押すと、いつものように電子音が流れてきた。
あとはできるまでの10分間をコボルト達が傷つかないように逃げるしか無い。
「おい、お前らそんなところで固まってないで俺と遊ぶぞ!」
言葉に反応したのか、コボルト同士で固まっていたやつらは目を光らせて走ってきた。やはり遊びたかったのか、尻尾を全力で振りすぎて、ゾンビの肉が飛び散り骨が見えてきている。
今からコボルトとの鬼ごっこの始まりだ。
「おい、コボ――」
「グアァァー!」
コボルト達は俺に向かっておもいっきり噛み付いてきた。
俺が咄嗟に避けると、コボルトは顎から地面にそのままぶつかっていく。
「ガガガガ……」
顎の骨が砕けてコボルトは鳴けなくなってしまった。
「これって避けたらダメなのか」
自我を無くしているからなのか基本的に全力でぶつかってくる。そのため、避けるとその勢いは止めることもできず身を滅ぼすまで攻撃している。
そうなると鬼ごっこではコボルト達を傷つけてしまうだろう。
「おーい、俺とたかいたかいやろうぜ!」
「ガウ!」
上を見上げると天井が見えないほど高かった。そのため、高めに上げてはキャッチすることで永遠と時間を稼ぎながらコボルト達を傷つけずに遊ぶことができると思った。俺はコボルトを空中に持ち上げることで時間を稼ぐことにした。
噛まれても俺の
「よっし、こっちに来い!」
「ガガウゥ!」
俺を攻撃してこようと突撃してきたコボルトの体を持ち、大きく上に飛ばした。
「たかいたかーいー!」
「ガァ……ガウーーー!」
もはや上に投げている時点でたかいたかいを超えて別のものになっている。ミイラの姿をしたコボルトを軽く投げたつもりが、全く見えなくなってしまった。
「よし、次はお前だな!」
「ガゥ!?」
俺は近くにいた骨だけのコボルトを掴んだ。せっかく遊ぶことにしたのに、顎をガクガクと鳴らしている。
「ほらいくぞ!」
「ガガガガゥ……ガウゥーーー!」
「あっ、やらかした……」
俺はミイラのコボルトと同じ力でたかいたかいをしたのが間違いだった。ミイラと比べて骨のみのコボルトは重さがとにかく軽かった。
それでも高く飛んでもらえば、後々キャッチするだけだから問題はない。
「じゃあ、次はお前……」
「ガガガガガウウウゥー!!」
コボルト達はお互いに抱き合いながら震えていた。そんなに震えるほど嬉しいのだろうか。
「そんなに喜ばなくてもいいじゃないか! まぁ、遊ぶのって久しぶりだもんな!」
久しぶりにコボルトと遊び、俺のテンションは高くなっていく。一方コボルト達は仲間同士で目を合わせて話し合っていた。
「よし、お前もいけー!」
「ガウァァァー!」
次から次へと俺は近くにいたコボルト達を投げ続けた。
「ガァーウーー!」
だが、一体が逃げると一斉にコボルト達は逃げ出した。
「おっ、次は鬼ごっこもやりたいのか!」
俺はコボルト達を追いかけては投げてを繰り返す。
「ガァ……ウー!」
コボルト達の声は天井に向かって響いている。
――ピコン♪
どうやら自動アイテム生成でアイテムが完成したようだ。
全てのコボルトを投げ終えると、その後も落ちてくるコボルトをキャッチしては投げ続けた。
「ガガガガゥ……」
どうやらミイラのコボルト達は嬉しいのか眼球の窪みのところが濡れている。
「よっし! もっと行くぞー!」
俺は体力が続く限り投げ続けた。いつのまにか目的を忘れて、コボルトと遊び尽くした。
その時間は軽く30分は過ぎていた。
【お主、我の奴隷になにをやっているんだ!】
「えっ? 遊んでるだけだよ?」
異世界ダンジョンの声に驚いたが正直に答えた。この声の主は話がしっかり通じるため、説明すれば理解はしてくれる。
【我の奴隷が怯えているではないか!】
「えっ、喜んで震えてるじゃないか」
俺は落ちてきたコボルトを掴むとやはり震えていた。どうやら説明しても通じないようだ。
「ほら、もう一回――」
【やめてくれー!】
もう一度投げようとすると声の主に止められた。俺はまだまだ遊びたりない。
【なんでやつだ……我の奴隷をこんな姿にしておって……】
コボルト達は遊び疲れたのか、落ちてくるコボルト達は地面に下ろすと大の字に伸びていた。
「こんな姿ってお前がやったんじゃねーか!」
アンデットコボルトにしたのはこの声の主のせいだ。だから俺は間違ってないはずだ。
【いやいや、我はコボルトをアンデットにしただけで何もやっておらんわ】
どうやらアンデットにしたのは間違いないらしい。あの可愛いコボルトをアンデットにしたのは許さない。
「そういえば、俺ってなんでコボルト達と遊んでたんだ?」
つい、楽しくて目的のことを忘れていた。
何か大事なことだったはずだが、思い出せないということは大事じゃないはずだ。
「お前ら楽しかったか?」
俺は近くにいたコボルトに声をかけると、すぐに頭を縦に振っていた。振り過ぎて頭が飛んでいく勢い……あっ、本当に飛んでいった。
【こいつのどこが天使なんだよ……】
「んっ? なんか言ったか?」
【いえ、我は何も言ってません】
「あっ、思い出した!」
俺は忘れてたことをやっと思い出した。そういえば、この声の主にイラついていたのだ。
「おい、お前! すぐにそっちに行くから待っとけよ!」
【ヒィ!? 我に会いに来ると……ケッケケ、それは出来ないからな】
どこか声の主は焦っているようだった。
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