第115話 みぃーつけた!

 コボルト達は自動アイテム生成でできたアイテムで落ち着きを取り戻していた。


「じゃあ、行きますか!」


 俺は声の主の居場所を探すことにした。周囲を走り回って気づいたが、出口は一つしかなかった。


 出口に向かって歩き始める。


「ガウ!」


「ん?」


 振り返るとさっきまで伸びていたはずのコボルト達は座ってこちらを見ていた。


 この展開は某ゲームにある"仲間になりたがっている"の状態なんだろうか。


「ひょっとして付いてきたいのか?」


「ガウ!」


 俺の言葉に反応して泣いているようだ。俺は嬉しくなり、頭を撫でやると喜んでるのか震えていた。


 そう、震えていた……。


「お前達あいつがいるところはわかるか?」


「ガゥ?」


「ガウ!」


「ガーゥ?」


 コボルト達はお互いに顔を見合わせ、話すのを迷っているようだ。きっと居場所はわかっていても、口封じされているのだろう。


「ガッ……!」


「お前あの時の――」


 その中で前に出てきたのは、俺に突撃してきて顎の骨が砕けたコボルトだった。


 やはりうまく鳴けないのだろう。尻尾の骨もボロボロで形もままならないようだ。


 俺について来いと言わんばかりに、前を歩くコボルトはなんと出口とは違う方向に向かっていく。


「お前どこに行くんだ?」


 何度も振り返るコボルトに、俺はついていくことにした。


「ここに何かあるのか?」


 壁の前に立ち止まったコボルトは、大きく尻尾を振っている。地面に尻尾が当たるたびに、骨にひびが入るため、俺は尻尾を急いで掴んだ。


「ガッ……ガ!?」


 伝わらないと思ったのか、無理に話そうとしてさらに顎の骨が砕けていた。桃乃と違い俺には回復魔法がない。


 崩れていく体をどうすることもできないでいた。


 せめてのお礼にコボルトを優しく撫でると気持ち良さそうに笑っていた。


「もう、笑わないでくれ! もっと骨が砕け――」


 俺がコボルトを止めようとした瞬間、その場でコボルトは崩れ落ち、ただの骨となった。コボルトの骨を大事に拾うと、アイテムとして回収された。


――――――――――――――――――――


《奇跡の骨》

効果 愛された者だけが得る特別な骨。

   ただ単体の効果はない。


――――――――――――――――――――


 無力な自分に無性に腹が立ち、俺は壁を強く殴った。大きな音とともに落ちてくる瓦礫に俺は目線を上げる。


「ついに人間をやめたのか?」


 昔は家の壁に穴が空いただけの力だったはずが、今は無意識で叩いても、奥の壁まで破壊されている。


「わわ、我の……」


「お前がこいつらをアンデットに変えたやつか」


 遠くに見える謎のやつに、あいつが親玉だと直感で感じた。


 俺は勢いよく脚に力を入れると、気づいたらやつの目の前にいた。脚の筋肉に意識を向けると、瞬発的に速く走れることがわかった。


「ひぃ!?」


 俺はおもいっきり殴ろうとしたができなかった。


 穴が空いた壁の先には台座があり、そこには大きなコボルトが座っていた。


「お前もコボルトだったのか!?」


 俺は短毛だがわずかにある顔の毛をくしゃくしゃにもふもふとする。コボルトとサイズ感はかなり異なるが、大きなコボルトだと思えば可愛いものだ。


「やあっ……やめんか……」 


「あー、久々だな! 元気だったか?」


「我と会うのは初めて――」


「あっ、そうなのか?」


 どうやらこの大きなコボルトは俺と会うのが初めてらしい。たしかにこの大きさのコボルトとは会ったことはないし、すでに頭が俺の体の半分ぐらいある。


「おい、手を――」


「ああ、触られるのが嫌なのか?」


 俺が手を離すとコボルトは寂しそうに見つめていた。このコボルトはツンデレなのだろうか。


「誰が嫌だと言っ──」


「やっぱりモフモフされたいんじゃないか。コボルトは可愛いな!」


「いやー、だから我はコボルトではない!」


 言葉と体が全く噛み合っていないコボルトについ笑ってしまう。どうやらもふもふされることに関しての文句はなく、コボルトと呼ばれるのが嫌らしい。むしろ撫でること自体は喜んでいた。


「じゃあ、お前はなんなんだよ!」


「ケッケケ! 我の名前を聞いて驚け!」


「あー、はいはい」


「我はアヌ――」


「ガウ……」


 後ろでは遅れてやってきたコボルト達が羨ましそうにこちらを見ていた。たしかに毛がなくなったから、簡単にはもふもふできない。


 仕方なく台座から降りると、悲しそうな顔をしていたコボルト達の方へ向かった。


「おい、ちゃんと我の話を聞くんだ!」


 どうやらもふもふされるよりも会話をしたいらしい。


「置いてきて悪かったな」


 毛はないがこいつらもコボルトだ。撫でられるのが好きなんだろう。


「おい、我の話を……」


「お前らって案外手触りいいんだな」


 意外に骨もツルツルしてるし、ミイラのコボルトも少し硬いような柔らかいような、なんとも言えない手触りをしている。


 なんと言うのか肉よりは硬いけどわずかに弾力が残った……笹寺の雄っぱいに近い。あいつは馬鹿のように筋トレをしているから、胸は大きく発達していたな。


「だから……」


 その後もコボルト達を撫でまくる。コボルトでも種類が違えば楽しみ方は色々あると気づいた。


「だから我の話を聞けって言ってるんだよー! そんなに無視すると泣いちゃうぞ!」


「すまん、俺が――」


 振り返るとその姿に俺は驚き固まってしまう。


「やっとこっちを向いたか……?」


「おま……コボルトじゃねーじゃん!」


 目の前にいたのは顔は犬の姿だが、体はそのまま人間の姿をしたコボルトだった。

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