第62話 キラーアントの住処 ※一部桃乃視点
俺達はドリアードに教えてもらった、キラーアントの住処を地図を見ながら移動している。俺しか見えない地図に桃乃は不安そうにしていたが強引に連れてきた。
強引な男って世間では人気だから別に良いだろう。
森を抜けると目の前には大きな湖があった。
感覚的に言うと海に近いが、反対側にまた森が見えている。
「琵琶湖みたいですね」
「これが湖だと思えないよな」
俺達は大きな湖に呆気に取られていたが、その隣には馴染み深いものが存在していた。
「先輩、あれって
「ああ、
湖の隣には俺達がよく知っている穴が存在していた。どこから見ても家の庭に出来ている穴にそっくりだ。
「ひょっとしてあそこに入るんですか?」
桃乃が言う通り、俺は再度確認すると地図上でも穴を指していた。
「いやー、俺達も穴から来てるけど、いきなり入ると良い思い出がないんだよな……」
俺の言葉に桃乃も頷いていた。俺も桃乃も初めて異世界に来た時は大変な思いをしている。その穴が今目の前にあるのだ。
「ここに入りますか?」
「いやー、とりあえずキラーアントが出てくるまで待ってみようか?」
キラーアントの住処であればきっと出て来るはず。そう願いを込めながら俺達は穴の前で待機していた。
――10分後
「中々出ませんね……」
――30分後
「キラーアントって夜行性なのか?」
――1時間後
「あー、もう行くぞ!」
俺はイライラして、穴の中に入ろうとしていた。
「ちょっと先輩待ってください」
「行く前に食料の確保とこの辺の状況だけは確認しませんか?」
そんな俺を桃乃は止めた。やはり彼女は慎重派なんだろう。
「穴の中に入ったらいつ出れるか分からないですし、他の穴を探すのも良いと思います」
確かに桃乃の意見には賛成だ。穴が一つではなければそこからも出てくる可能性がある。
「じゃあ、とりあえずこの辺を散策して、何もなければここに戻ってくる方針でいいか?」
「そうしましょうか」
まず、1時間を目安にお互いに食料や他に何かないか散策することにした。
「じゃあ俺は池を中心に右へ」
「私は左へ行きます」
お互いに左右に分かれて移動することにした。
♢
私は池を中心に左側を散策している。特に景色は変わらないが、池の中心に来る方が木々は少なく、少し外れると森に囲まれている。
特に池の周囲は何もないため、私は森と池の間を歩くことにした。
「思ったより果物もないな」
どうやら穴も食料も無いが、何やらゴソゴソとしている生物がいた。
私はすぐに身を隠し音が鳴っている方を見ていると、犬ぐらいのサイズになった蟻がいた。
体は黒くなっており、少し硬そうな外観をしている。
「ウィンドカッター」
隠れて風属性魔法を唱えるが、キラーアントは周りを確認するが特に気にしていないようだ。
傷ができないことから、体自体が硬い何かに覆われているのは間違いない。
「ウォーターカッター」
次は水属性魔法のウォーターカッターを唱えた。
この魔法はウォータージェット切断のように高出力の水を噴射させることで、切断させる方法だ。
キラーアントの体に向けて唱えると、どうやら効いているのかキラーアントが甲高い叫び声を上げた。
「キィー!」
どこかその声に危険性を感じた。こういう時に叫ぶ動物は危険信号を仲間に共有する習性を持っている。
しかし、水属性魔法が優秀なのか高出力のウォーターカッターには耐えられず、身体には大きな穴が空いている。ただ、問題なのはウォーターカッターはMPの消費量が多い。そのためあまり連発はできない。
しばらく影から見張っていると、キラーアントの鳴き声にかけつけたのか、数匹仲間のキラーアントが現れた。
「ファイヤーボール」
私は集団で巻き込むように火属性魔法で攻撃した。
今度は単体よりは周囲を巻き込みやすい火属性魔法が効くのか確認すると、今までで一番良い反応を示している。
やはり昆虫だからか火は苦手なんだろう。逃げ惑うと仲間にぶつかり、今度は仲間が巻き添いになって燃えていた。
その後キラーアントが燃え尽き、死ぬまで待つことにした。
「そろそろ大丈夫かな?」
しばらくすると、キラーアントは動かなくなっていた。まだ少し燃えているが、どうやら倒せたようだ。
「ウォーターボール」
水属性魔法でキラーアントについている火を消し、改めて死んでいるか確認すると無事に倒せていた。
体は硬く甲羅のような外観をしており、イメージとしてフライパンを体にくっつけている印象だ。
鉄やアルミではないが、使えそうな素材なのは間違いない。
その後、仲間が現れた方へ歩いていくとそこにも穴があった。
やはり、キラーアントの巣自体はたくさん存在していた。全て繋がっているのかは、中に入ってみなければわからない。
これ以上キラーアントが出てこないように私は土属性魔法で入り口を封じた。
他に巣はありそうだが集合時間に近づいているため、私は先輩と待ち合わせしている最初の穴に戻ることにした。
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