第56話 配当報酬
俺は桃乃と異世界に続く穴の中にいる。歩きながらお互いに配当金について話し合っていた。
あれから1ヶ月が経ち、桃乃の体力作りにも変化があり異世界へ行くことになった。今ではココアと一緒にジョギングをして体力をつけているらしい。
「そういえば、この前買ったETFの配当金はもらえたんだよな?」
「少ない配当金だけど、お金が勝手にお金を運んでくるって幸せですね」
桃乃も少しずつ投資の良さを感じてきているのだろう。働かなくてもお金が増えて行くって、普通に考えたらあり得ないことだ。
入金額が少ないと配当金も少ないが、今後も額が増えると、より感謝することになるだろう。俺も早くその立場になりたい。
すでにニートになる準備は出来ている。だが、最近ではニートになるために働いているのに、仕事が減らなくてびっくりしているぐらいだ。
気づいたら休日も副業して毎日働いている。会社の中では
「そうそう、配当金が貰えると同時に異世界に行くと配当報酬も貰えるぞ」
「えっ!?」
俺の一言に桃乃は驚いていた。そういえば、そんなに必要だと思ってなかったから言ってなかった。
【投資信託"全世界株式インデックス・ファンド"を所持しているため、一部ステータスが上昇します】
今回は今まで買っていたETFの値段が下がることがなかったため、基本ステータスを上げるために前回得た分は投資信託を買い増ししている。
【ETF配当報酬、
名前からして凄そうな武器を手に入れた。それにしても、俺の武器はなぜ農作業に関わる物ばかりなんだろうか。
今回はあのノコギリになるとは思いもしなかった。
【今回の討伐対象はトレントです。制限時間は6時間です。それでは本日も頑張って家畜のように働きましょう】
アナウンスが終わると同時に眩い光に俺は目を閉じた。まだ、異世界に移動する時の光には慣れていないようだ。
ただ手に入れた新しい武器にワクワクしていた。
「先輩! 武器を持ってください」
目が慣れてくると同時に桃乃から物騒な言葉が聞こえてきた。
目を開けるとそこにはゴブリンの大群がこっちに向かって走って来ている。その距離20mあればいいぐらいだ。
「えっ、これどういう状況なんだ」
俺は咄嗟にいつもスコップがある場所に手を伸ばし掴むと、普段と握る感触が違った。
「うぉ!? 本当にノコギリなんか?」
手に持ってたのは刃渡り60cm程度あるノコギリだった。予想していたノコギリより倍の長さで一種の刃が薄い剣のようだ。
今までスコップを持っていたため、しっかりグリップがあるだけでも握りやすく、戦いやすいような気がした。
隣を見るとそこにはいかにもRPGゲームにいる魔法使いの格好をした桃乃が立っていた。
「桃乃……お前の杖かっこいいじゃんか! 羨ましいぞ!」
「私も配当報酬で手に入れました。先輩は……次は林業家か土木関係の人ですか?」
桃乃は1m以上はあるだろうと思われる長杖を持っていた。
俺の武器はダサいノコギリなのに、桃乃は魔法使いのようなかっこいい杖だ。俺はその姿に嫉妬している。
「くそ、腹いせに殺してやる」
俺は魔刀の鋸を握り、向かってくるゴブリン達に向かって斬りつけようと振りかぶると、目の前にいるゴブリン達が一瞬にして切り刻まれていた。
「えっ……」
自身の武器から魔法が出たかと思うぐらいその強さに驚いた。一振りしたはずなのに切り刻まれているのだ。
名前が
もしくは急にステータスが上がったことが関係しているのかもしれない。
「あっ、先輩すみませんー!
「……」
俺は桃乃の声を聞いてさらに嫉妬する。今度は火に続いて風属性魔法を使いたいと言い出したのだ。
なぜ俺には魔法が使えないのだ。
「どうせ、俺の武器なんてただの鋸さ!」
俺は桃乃の攻撃に比べて派手さが全くない。
この前はあんなにおどおどしていたのに、今ではゴブリンをバッサバッサ倒していく。
「先輩も戦ってくださいよー!」
桃乃が試したいって言うから戦わなかったのに、どうやら俺の力が必要のようだ。
俺は渋々魔刀の鋸を軽く振った。特に何も考えずに振っただけだ。
「あれ……」
振ると同時に遠くにいたゴブリン達も真っ二つになっていた。知らぬ間に遠距離攻撃を手に入れたようだ。
「ちょ、絶対私がいる方にそのノコギリ振らないでくださいね。私が死んじゃいますからね!」
あれだけ大量にいたゴブリンは数分もしないうちに殲滅されていた。それにしても思ったよりも強いノコギリに俺達は驚き一時動けなくなるのだった。
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《ステータス》
[名前]
[能力値] 投資信託4,850,000口
[固有スキル] 新人投資家
[パッシブスキル]
[称号] 犬に好かれる者
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