第55話

 金城はかんがえた。

 どうすれば世界をすくえるのか。どうすれば『隣人』を愛せるのか。どうすれば人類はあやまちに気付くのか。――。金城ひろそうそうろうろうきつりつしてまんさんとあるきはじめた。ハンナばあさんは自分が『死ぬ』ことをさとったらしくそうぼうを充血させこうこうをひらきこくそくとうずくまっていた。金城ひろかんじよとしてハンナばあさんに肉薄してゆく。そんきよした金城はハンナばあさんの上半身を抱擁した。金城はハンナばあさんにしようじゆする。いわく「この塔はくずれるためにつくられたんだ。バベルの塔とおなじなんだ。この塔は『人類への宿題』として最後にはくずれるんだ」と。ツインタワー南棟がごうおんめかせて崩壊していった。北棟の崩壊もまぢかだろう。金城は結論をだした。いまこそ『いのる』しかないと。金城ひろはつぶやいた。「神様あなたは実在するのでしょう。ですが神様よわれわれ人類は神様のかげでみなでころしあっています。神様どうかわれわれのためにいまこそ『永遠に死んでください』」と。ツインタワーの窓外に七色のこうぼうがさしこんで巨大なる人かげが降臨なされた。きようりようなる肉体にせいぼくなる白布をまとわれかんたるがんぼうのヤハウェ神だった。慈悲深くとくあいにみちたヤハウェ神のこえがめく。『なんじのねがいはかなえられた』と。

 ツインタワーの北棟はほうはいと崩壊した。

 金城とハンナは瓦礫にまきこまれていった。

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