第54話

 ハンナばあさんは憤怒のがんぼうをしていた。

『神様。生きたい』と金城はおもう。造次てんぱいもなく冷静沈着なる表情をよそおったハンナばあさんはいった。いわく「まあいいでしょう。あなたに『天罰』をくだすのは『せき』のあとでいいわ。御覧なさい神は何度でも『せき』をおこしたもうわ」と。ハンナばあさんが右手をかかげると『組織』部隊員たちが左右にれつした。ハンナばあさんは三十三階のフロアの窓外へとむかってはいし『いのり』をささげはじめた。「ヤハウェ神さま。またこのふたつの塔をもとにおもどしください。わたくしたちはあなたをしんじています」と。ごうぜんたる静寂がながれた。一秒。十秒。三十秒。――。ツインタワーには神も天使もあらわれなかった。焦燥感うつぼつたるこえでハンナばあさんは絶叫する。「神様なんで。なんであらわれないの。わたしはこんなに神様をしんじているのに」と。ようやくとうくつの『組織』部隊員たちもてつ急を把握しはじめた。あんこう武者たる部隊員たちはあしもとにすがりつくハンナばあさんをじゆうりんして三十三階フロアからくりげだした。いちいちじゆうを目撃していた金城ひろはつぶやく。いわく「神様は人間の玩おもちやじゃなかったんだ。神様はなにかしらをわたしたちにかんがえさせるためにわたしたち人間をつくりたもうたんだ。その宿題が永遠にとかれなくてもだ」と。

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