第45話

 金城は疾駆した。

 まんこうの筋肉を緊張させた金城ひろは全身全霊で疾走し量産型『システム』の団塊のいんえいからハンナばあさんの目前へとあらわれた。0.04秒ほどちゆうした金城はけいれんする両腕でベレッタ92を掌握してトリガーをひいた。たのむ。弾丸よあたってくれ。世界を破滅からすくってくれ。一発。二発。三発。四発――十五発。金城はありったけの銃弾をハンナばあさんに発砲した。ほうはくたるオフィスに十五回のこうそうたる破裂音がめき十五発の弾丸がこうしようしてゆく。同時に十五発分のやつきようさんらんと明滅しながら虚空を乱舞してゆく。十五発の黄金色のパラベラム弾はかいわいの世界を逆転して反射させる。せんじようしようしてゆくパラベラム弾の側面にはないに崩壊しそうなツインタワー北棟の内部とすでに崩壊をはじめてじんとなりつつある南棟をうつしていた。世界のおわりをうつしだし世界をすくうかもしれない十五発のパラベラム弾は心臓をつらぬいた。ひとつの心臓。ふたつの心臓。みっつの心臓。――十五個の心臓をつらぬく。純白の『肉体』が十五体連続して乱舞した。金城ひろの銃撃したさきに存在していたのはハンナばあさんではなかった。ハンナばあさんをぼうぎよする『十五柱の天使』たちだった。十五柱のエンジェルたちはみな心臓を銃撃され巨億のかいれいなる羽根をまいちらせ胸郭からぼうたる鮮血をながして墜落していった。ハンナばあさんのまえには十五柱の天使の死骸がるいるいとなる。ハンナばあさんの背後には十五人の『組織』部隊員が『端末』を装着してれつしていた。

 ハンナばあさんはいう。

「『愛』なんて『神』には勝てないじゃないの」と。

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