第38話

  第三章


 ツインタワーのまえに金城はてきちよくしていた。

 たる北側塔を仰視してためいきをつく。

 金城はおもう。なにかがおかしい。『あの日』からなにかがおかしくなったんだ。『奇蹟』から一〇年けみした白銀に明滅するワールドトレードセンタービルのかくやくたる光明に片目をつむりながら漆黒のスーツをまとった金城ひろがら張りのツインタワー北棟にってゆくとタワー内部は巨万の観光客でいんしんとしていた。しやくねつの気分を沈静化しようとおもい金城ひろはロビーの群像のなかをすりぬけてゆく。ばんこくの老若男女がまんじともえとなっているロビー内では『せき』の場所の土産品が販売されていた。しつする各販売所の店頭にははんぶんじよくれいの各国語で案内がでている。『せきの場所ワールドトレードセンタービルへようこそ』『神が救いたもうたりすときようの聖地ツインタワー』『あなたもぞんの神の奇跡がおこった場所』――。牧師のふうぼうをしたろうが店頭でする。いわく「かんがえるな。いのれ」と。へきえきした金城はこんとんたる人混みを回避し中央の普通エレベーターへとばくしんする。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る