第39話

 金城は三十三階をめざした。

 南北の急行エレベーターにはさまれた普通エレベーターで三十三階までのぼると各階同様にオフィス用スペースにじようされた中央区画にでた。普通エレベーターの出入口はいんもうの中央区画の東側となっていて中央区画の東西にオフィス用スペースへの出入口がある。金城ひろせきの東側のオフィス用出入口を確認する。『空きスペース』と表示されているががら張りのドアのなかにはなにがしかの施設が設置されているのがせんめいされる。金城ひろはスマートフォン用に独自に開発したアプリで出入口の暗号入力機器に辞書攻撃をかける。000000から999999まですべての数字のれつを三分間で入力するのだ。金城ひろは焦燥感うつぼつとしてくる。556375。649537。――二分をけみしても辞書攻撃はおわらない。だれかに気付かれないだろうか。『組織』のやつらに見付からないだろうか。まさか『やつらはすでに気付いているのでは』ないか。辞書攻撃がおわった。金城は慎重にドアをあけてオフィス用スペースにちんにゆうする。やはりだ。『口』の字型のオフィスの内部には数百個数千個の量産型『システム』と『端末』がならんでいる。おそらく世界各国への輸出用にこんぽうされたものもある。だれあろう『システム』の開発者である金城のべつけんしたところこれら量産型『システム』は各地でくみたてるかたちに改造されているのでこのままでは起動しないようだ。金城は万一の事態ためにひとつの『システム』をここでくみたてて起動させんとする。なにものかのこえがひびいた。

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