第23話

 金城ひろは指紋認証で実験室のとびらをあけた。

 金城はがら張りの実験室へとってゆく。

 いぶしぎんの長机がれつされ研究者や関係者がさんそうされたしようしやなるはくの研究室に隣接するがら張りの実験室のなかには漆黒の立方体に無数のでんらんてんじようさせられた複雑怪奇なるアタッシェ・ケース大の『システム』と『システム』に接続された三台のデスクトップ・パソコンが設置されていた。これが真実だ。おれたちは負けたんじゃない。科学によって真実に到達したんだ。金城ひろが電源をいれると『システム』の電源ランプがはくいろに明滅したのちすい色にせんしやくしはじめた。金城は『システム』と無線接続された端末を顳こめかみに装着する。端末にはさいたるいくつものレンズが附属されており三百六十度をへいげいするかたちでなる動作をしている。金城はがら張りの実験室内のマイクをけみしてみなに物語る。いわく「この端末は脳内の神経伝達経路とリンクされておりちらのレンズをとおして『神性素粒子』を観測します。つまりハンナばあさんや無我和尚が自然に――というよりは量子論的なる『偶然』に――なしとげた『せき』を科学的に再現することができるのです。このシステムと端末を掌握すればわたくしのような『けいけんなる』無神論者でも『せき』をおこせるわけです」と。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る