第13話

 りゆうかなえはおもう。

 松島湾から津波がきたらたすからない。『武藤山以外では』と。りゆうかなえは息子一鬼を背負ってじんかいめつした実家の一階窓からとんざんした。かいわいの道路は破砕されたがら窓の破片でかいれいに明滅している。こえがきこえる。武藤さんだ。武藤氏は武藤山の階段下から絶叫していた。「みなさん大丈夫です。シェルターに避難してください。どんな津波がきても大丈夫です――」と。こくそくうつぼつたる隣人たちが一所懸命に武藤山へととんそうするなかりゆうかなえも一鬼を背負いながら武藤山までくりげていった。まんしんそうとなっているりゆうかなえはさすがにけつけつたる体力を喪失し一鬼を背中からおろしてかんと微笑した。いわく「かあさんについてきな。大丈夫だからね」と。ようにしてりゆうかなえが緊急避難階段をのぼりきって「ほら。大丈夫」といいへんぽんとかえりみると『一鬼はいなかった』。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る