第2話

『神様おねげえだ。おれを地獄におとしてくれてもいい』

 ニューヨーク市はマンハッタンでハンナばあさんはおもった。

 二〇〇一年某月火曜日。せいぼくなるそうきゆうのもとしよくそうぜんたる雰囲気の茶褐色と灰褐色の摩天楼がしつするニューヨーク市マンハッタンの湾岸のがいを腰痛でびようになった老婆ハンナ・イグレシアスは極彩色の無人の乳母車をおしながら散歩をしていた。まんさんとあるくハンナばあさんの背後から隣人の人妻が肉体をあせで明滅させながらランニングしてきた。人妻が「ハンナばあちゃん。ゴッド・ブレス・ユー」といいハンナばあさんをおいこすとハンナばあさんは「ありがとうね」とかんとしたのちにふんこうがいがんぼうになって「神様なんてとっくに死んだよ」とひとりごちた。午前八時四六分四〇秒のことだった。重度の難聴にかんしていながらハンナばあさんは爆音に気付いた。神様みたいにでかいとハンナばあさんがおもっていたツインタワーにむかってくだんの人妻がびくびくしたがんぼうで「神よ」と絶叫していた。

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