7人目 『一緒に寝る、なんて……』
どうしてこんなことになってしまったのだろう。
そんなことを何度も考える。
その問いにも既に答えは出ているというのに、何度も振り返りでもしなければ平静を保っていられない。
つまり、すごく簡単な話だ。
私は今現実逃避をしている。
でもさ、それも当然だよね!?
だってさ、急にクラスメイトの!しかも男の子の家に泊まることになっちゃったんだよ!?
事の発端はほんの数時間前。
用事があったから、普段は行かない場所まで遠出をしてその目的を達成したところまではよかった。
でもそれで少し気が抜けちゃったところもあったと今更ながら思う。
地面をよく見てなかったからそれに躓いて足首をくじいてしまった。
それで、たまたまそこに通りかかったのが彼だった。
私の状況を見て痛みがマシになるまで彼の家で休んでいけばいいと言ってくれた。
そのまま自分の家まで帰るのは実際辛かったし、せっかくの好意だから甘えさせてもらったんだけどそこからが運がなかった。
突然天気が悪くなったと思ったら雨が降って強い風が吹き始めてそのまますっかり雷雨にまでなってしまった。
所謂ゲリラ豪雨のちょっとひどいのが直撃しただけだと思ってたんだけど全然マシになんてならないし。
それどころか、しばらくそのまま続くし下手をしたらもっと悪化するなんて予報も出ちゃって。
それを踏まえた結果、交通機関も運休や本数を減らすことを色々と決めてしまい私の今の状態ではちゃんと家に帰るのはかなり難しい、という結論が出てしまった。
ただ帰れないだけならカラオケかどこかで一日泊まればいいだけだったんだけど、今の私は怪我人。
それに加えてちょっと遠出をしてるせいで土地勘もあまりないからそういう場所もほとんど知らない。
そういった事情が重なった結果、彼が今休んでいるついでに泊まっていくことを提案してくれた。
私としては申し訳ないし断りたかったんだけど、さっきの理由を使って説得されたら反論の余地なんて残ってなかった。
で、了承した後冷静になって自分の状況を理解した結果慌てに慌ててしまっているというわけだ。
「顔、赤いけど大丈夫?」
「わ、わっ!だ、だ、大丈夫だから!気にしなくていいよ!」
「そう……? 僕ご飯の準備してくるから、何かあったら言ってね」
「う、うん。ありがとう」
少し不思議がられたものの、内心めちゃくちゃ慌てていることは誤魔化せたみたい。
とりあえずこのまま何事もなく明日を迎えれば、それで大丈夫だから、うん。
「申し訳ないけど夜ご飯はご馳走してもらってあとは寝て……え、寝て……?」
このあとどうするのかを確認していてとある事実に気がつく。
私は夜には眠る。それは確定だ。
しかし、その状況が問題なのだ。
彼のことだから私を変なところで寝かせられないと言い出すのは目に見えている。
ケガのことも考えれば説得されてしまう気がするが、そうなると私はどこで眠るのか。
彼の性格を考えるときっと一番寝やすいところを譲ってくる。
そして、今お世話になっている彼の住むマンションの部屋には客間のようなものはない。
そうなると一番私が眠る可能性が高い場所は……彼の普段眠っている場所、ということにならないだろうか。
「ご飯の準備終わったから今日の寝るところ……あ」
「え、何!?怖いんだけど……?」
「その……お客さん用の布団とかないなって……」
「じゃあ私がどこかで寝るから!!」
「そんなのだめだよ!!」
想定よりも大変な理由から始まった口論の結果は……一緒に寝ることだった。
……なんで?
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