第24話

 一九四五年八月十五日。

 国民総特攻計画予定日である。

 金城しのぶと義母は疎開先のかしわざきてきちよくするしよくそうぜんたる木造家屋の居間にて最後のばんさんならぬ最後のあさをもよおしていた。金城しのぶはがら窓の隙間からきゆう窿りゆうを仰視する。御空はぎようこうにも晴天みたい。いえ。神聖ぼうとくすべからざるアマテラスオオミカミが天岩戸からおでましになられたのだろう。今日こそ神州日本の誉れたかき日なれと。といえども金城一家のすみの居間はあんたんとしている。しゆつこつたる教国の爆撃天使による攻撃をようそく阻止するがためにすべてのがら窓がテープでがんがらめにされ閉鎖されているからだ。茶褐色のテープの隙間から幾筋かの陽光しかとどかない和室にて金城浩樹の祖母と母親は襤褸ぼろ襤褸ぼろになった黒褐色の畳のうえに茶褐色の円形のちやだいを鎮座せしめ人生最後の白米を喰らっていたのである。はちめんれいろうとして全体にかそけき陽光を反射しているかいれいなる白米は『國民総恩賜』として今上裕仁陛下以下神國大本営よりたまわった神聖なるものである。

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