第13話

『天罰』に気付いた金城大尉ははしった。

 さつそうと疾走しながら金城大尉は興奮する。いまは家族をまもるんだ。おれはおれの家族をまもるんだ。自分の家族をまもれない軍人が日本列島の国民などまもれるわけがない。だからはしるんだと。ゆえに超人的な力をもってほんそうできた。とくあいを注いでくれた母親と祖母の手のひらを掌握しながらかくやくたる『天罰』の光明に片手でそうぼうぼうぎよした金城大尉は巨大化する球体から反対側へと疾駆しはじめる。金城大尉はもうろくした祖母を背負い戦時中の食糧難でした実母を右腕に抱擁して疾風迅雷の勢力でにげていった。金城大尉みずからが喫驚するほどの超人的なる体力である。刹那背後をべつけんすると虹色の球体は加速度をもってちらばくしんしてきていた。油断した金城大尉はぼうほうてきされたたけやりにつまずいててんとうした。背後からは虹色の球体がせいひつとしてせまってくる。金城大尉の肉体は融解してゆき背後の祖母および右腕に抱擁する実母の肉体と融合しはじめる。はやこれまでか。金城大尉が諦念するとひやくがいきゆうきようと脳髄の緊張がかんして意識がはくになっていった。

 長い沈黙と暗闇があった。

 金城大尉は死を覚悟した。

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