第10話

 金城大尉は焦燥した。

 疾風迅雷でスサノオノミコトを操縦しばくしんした。

 最優先すべきは『命』にほかならぬ。日本人の『命』の総体こそが日本ではないか。まんしんそうのスサノオノミコトはきゆう窿りゆうよりさつそうと降下してゆきこくそくうつぼつたるがんぼうとうじようを仰視していたれいみんたちにした。いわく「わが神州越後の国民のみなさん。お聞きください。これより教国軍は新潟市に『天罰』をくだします。これは常日頃の爆撃天使による爆撃の威力を遙かにりようするはずです。爆心地は三社神社かいわいとおもわれます。どうか神州国民のみなさん。一刻もはやく市外方面へとお逃げください。みなさんの大切な家族もどうか救出してください」うんぬんと。ぼうぜんしつとしてスサノオノミコトをはるかしていたれいみんたちはやがてそれぞれの行動をとりはじめた。あるものはスサノオノミコトの宣告がしゆうえんするをまたずに市外方面へととんざんしはじめた。あるものはしようがいをもった家族をきゆうじゆつするために襤褸ぼろ襤褸ぼろの家屋へときびすをかえしかけがえのない家族を背負ってくりげはじめた。あるものはるいじやくなるたけやりをもちだして天空にしようりつするミカエルをようげきせんとしはじめた。あるものはみながとんそうしはじめまんじともえの大混乱となっている道端にておおごえではんにやしんぎようどくしようしはじめた。あるものはすでにそうそうろうろうとして歩行もあたわざるろうのためにはちがいの片隅にて家族全員でそんきよし抱擁しはじめた。あるものははいきよ同然の家屋のかわらきの屋根に鎮座し爆撃天使ミカエルを見上げて「日本は死なん。新潟は死なん」と絶叫しはじめた。あるものはかつてこんぱく接続にて亜米利加教国ととうじようし左腕をせつだんされたそう軍人らしく路傍に正座し「天皇陛下万歳」とほうこうし右手で切腹せんとしはじめた。あるものは最後の最後までこんぱく接続により奇奇怪怪なるふうぼうの神木やれんえんたる信濃川などにやどりたまう森羅万象のかみがみを操縦して『天罰』をようそく阻止せんとしはじめた――――。

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