第8話

 スサノオノミコトはこうしようしていった。

 全身全霊でそうきゆうを疾駆していった。

 筋骨りゆうりゆうたるミコトのひやくがいきゆうきようきようじんにひきしまりほうはいたる霊威によって虚空をしようしてゆく。ミコトのえんえん長蛇たるほうはつくちひげが虹色の十字架の現前のためかきゆう窿りゆうきようらんとうとなっているひようふうになぶられごうおんをなして渦巻いている。金城大尉は鬱勃たる感慨にひたる。よーろつを起源とする一神教ではあるいはようかんばせたる『善』の神ともうりようたる『悪』の神とのたいがありあるいは全知全能のろうの神と半知半能の美男子の堕天使長との対立があるという。すい日本よりしんぴようされてきたスサノオノミコトなる『神』は連合教国軍からみれば『神』というよりも『鬼』かもしれぬ。ひつきよう日本人はいんもうの『大自然』への『おそれ』と『崇拝』をように具現化してきたのだと。ようなるこくほうじようの森羅万象を鎮護したる『神』は金城大尉の意志にしたがいたもうて西欧の神聖なる存在『てん使』とたいした。びようぼうたるスサノオの精神世界で正座している金城大尉はスサノオの霊威をもちいてかみがみの言語といわれる生成文法によって宿敵ミカエルに物語りかけた。厳密にはミカエルと『こんぱく接続』しているはずの『裏切りもの』にしたのである。いわく「神の民になりさがった日本人『トヨヒコ・カガワ』よ。貴殿はなぜ大日本神國を裏切った」と。カガワはこたえる。「神は唯一でなければならない。神は消失点だ。ビッグバンが一回であったのとおなじだ」と。金城はほうこうする。「貴殿の神でさえ量子論的な窮極集合のなかでは無限に存在するのではないか。それはよろずかみがみとおなじℵ0柱ではないのか」と。カガワはないにこたえる。「よろずかみがみは素粒子にやどったモナドにすぎない。語弊をいとわずに換言すれば神は窮極集合に偏在している。窮極集合が集合として一であるのとおなじく神は偏在として一柱でいらっしゃるのだ」と。金城はする。

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