第3話

『隙』ができた。

 今度こそ百年目だ。金城大尉は左前足と右後足をそうしたキュウビのキツネを操縦し疾風迅雷の勢力でミカエルの首もとに喰らいついた。れいろうたるミカエルの皮膚がきりさかれからくれないの筋肉が露呈される。致命的なる傷口からはしようじように明滅するかいれいなる血潮が湧出するが撃墜王たる金城大尉のりようはおよばずミカエルのけいどうみやくは断絶できない。ないにミカエルは右手のやりを掌握しなおし金城大尉のキツネをつらぬかんとする。金城大尉のキツネは刹那のうちにミカエルの首もとからはなれけんじんなるやりよりとんざんする。危機一髪で生存したミカエルは右手で白銀のやりへんぽんかいてんさせ左腕に喰らいつくのキツネの脇腹につきさした。いんのキツネの質量が波動状態のエネルギーに還元され左腕の自由をばんかいするとミカエルは左腕でてんびんを中天にかかげ「罪深きものに永遠の呪いあれ」とする。刹那瑠璃色のそうきゆうよりえんいつたる火炎がまきおこり金城大尉のキュウビのキツネを直撃した。ひやくがいきゆうきようを火やけどしながら金城のキツネは落下してゆく。キツネの肉体がエネルギーに還元され金城の肉体があらわれる。畜生め。キツネのそうしたのとおなじ左腕と右脚を金城太尉はそうしている。金城大尉は時空連続体のゆがみどおりに加速度をつけて新潟市のへきすうに墜落してゆく。きようじんなる大地に激突すれば即死だろう。大地からばんべんをひろげた季節違いの桜の大樹が成長してきた。神軍の軍曹が『こんぱく接続』して大地の神を操縦したのである。金城大尉は間一髪で桜の大樹の樹冠にまもられ落下速度をかんされて神軍兵士たちに抱擁されるかたちで着陸した。「太尉。このままではまもなく『天罰』がくだされます。ここは神軍一時撤退すべきであります」と軍曹がいうと金城大尉は「軍曹すまない。左腕と右脚にほうたいをまいてくれ。おれはなんとしてでも『カガワ』をたおさねばならん」としんぎんする。軍曹が「といえどももはや爆撃天使を撃墜なしうるほどの神はいらっしゃいません」というと金城大尉は「くさなぎつるぎがある。おれはくさなぎつるぎちになりたもう神と『接続』する」とこたえた。軍曹は「しかしであります。あの神のおぼしにそえなければ太尉は神に殺されるのであります」という。だからこそ『こんぱく接続』には生命の危機がともない『えらばれたもの』しか挑戦できないのである。金城大尉はこたえる。

「神に殺されれば本望だ」と。

「『そのときはおれがそれまでの命だった』というにすぎん」と。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る