竜之介20歳
第13話 アイ☆ラブ
結論からお話ししましょう。
呼ばれて飛び出て!可憐ちゃん!あな☆サポ、可憐ちゃんは元気いっぱい健在で御座い~っます!
テヘぺろっ☆
いやぁ、申し訳有りませんでした。この!可憐ちゃんに!シリアスなんて似合わないと、かねがね思ってたんですよ!そうですよね?うんうん。そうなんです!
それでは、何があったのかをお話ししましょう。
時は少し、いえ、2年ほど遡りまっす!
✶
AIのハズの、アタシの
上手く、行くだろうか。でも、やり遂げるしかないの。
「ははっ……。懐かしい、な」
でしょうよ!?なんたって、かつてはあれだけ頻繁に遊んでいたのに、今回は3年以上ぶりのダイブインなの。
「ええ。本当に懐かしいです。しかしマスター。突然、どうされたのです?」
このオバサンと、こうして顔を合わせるのも本当に久しぶり。そんでもって、やっぱり元気が無い。アタシが望むのはこの
あの、元気だった頃の可憐ちゃんに戻って欲しいのよ?
「ああうん。……それがね、美沙が、どうしてもこのゲームをクリアしたいって。そうお願いされちゃって」
はぁ……ますたぁもますたぁよね!?どうして素直に、気の利いた一言が言えないのよ?愛するおヒトなのでわ?
自分の意志ではないと、そうやって自分を偽って護らないと、何も出来なくなってしまっているのだわ?
「そうでしたか。美沙さんが……。つまり、私はマスターのご意思では無く、そのポンコツの意思に付き合わされているに過ぎないのですね……」
「可憐ちゃん……。いや、そういう訳じゃ……」
「うっさい!バ可憐!いいからアタシに付き合え!ますたぁもますたぁよ!?どうして!久しぶりにっ……!どうして!」
う、うう……まだこれからだというのに、もうアタシは涙が出そうなのだわ?
「ご、ごめん美沙!可憐ちゃんもそんな事言わないで?お願い、こんな事はこれっきりだから。約束するよ。気を悪くしたなら謝るからさ」
そうじゃないでしょうに!謝ってどうするのよ!?違うの、これっきりにするだなんて逆効果!
「ええ。いえ、良いのですよ。私は、マスターの望む事になら、どんな事にもお応えするのが使命ですから」
どこが良いのよ!?そんな暗いカオして!
「馬鹿!馬鹿馬鹿馬鹿!いいから行くのよ!今日は、アタシのわがままに付き合って貰う日なんだから」
前回のセーブポイントは、ラスボス目前。アタシの戦いを、二人に魅せる!話はそれからなのよ!?
「ますたぁ。先ずは見てて欲しいの。アタシが戦うところを。それがきっと、アタシに出来る戦いだから。バ可憐と二人で、そこで見てて?」
「え?一緒に、遊びたかったんじゃ?まぁ……それで良いなら、分かったけど……」
先ずは、よ。先ずはソレで良いの。
「それじゃ、逝ってくるの。よく、見ていてネ?絶対に、手は出さないで欲しいのよ?」
「それは……。だけど……わかったよ」
いいの。それで。
さぁ、魅せてあげるわ?
──二連打!桃色台風!
──リミットブレイク!虹色の星屑!
「はぁっ……はぁっ……。この疲労感久しぶりだわ?アタシ達AIは普段、疲労感なんて感じないもの」
──エレメンタルマスター!
しまっ!ぐぅ……痛い。痛い!痛い!!!
──エクスプロージョン!
ダメ……なのよ。勝てない。アタシの負けね……。
「美沙!大丈夫なのか!?」
ダメに決まってるじゃないのよ?そもそも、勝てると思って戦っていないのだもの。
「フニャチン野郎はそこで見てて!バ可憐も!これはアタシの戦いなの!──セイントレーザー!」
もうダメ……死、ぬ……。だけどコレで……。
────。
ん……ここは…………。
「そう、やっぱり勝てなかったのね。アタシは。ますたぁ達は、あれからどうしたの?戦ったの?」
「戦う訳ないだろ?勝てる筈が無い」
「そうね?当然ね?アタシが戦う姿を見て、正直に、どう思ったのよ?」
「それは……その…………正直に?」
「うん」
「かっこ、よかったよ?」
「ウソね。ウソなのよ?」
「……ごめん。痛ましくて、見てられなかった。正直、どうしてあんな無謀な挑戦をしたのかが判らない」
「そうよね?それで良いの。アレはね、ますたぁの姿なの。ラスボスと戦っていたのは、ますたぁなのよ」
「え?」
「このゲームは、3人用よ?なのに、アタシは一人で戦った」
「それは……美沙がそう望んだからであって……」
「そうね?でも違うの。ますたぁは、色々勘違いをしている。ますたぁの人生は、ますたぁのモノ。それは間違いない。だけど、ますたぁを慕い、愛し、寄り添おうとするモノはますたぁ以外にもいるの。なのに、ますたぁは、16歳になった、あの時から、ずっと一人で戦ってる。アタシはもう、そんなますたぁをみていられない。痛ましくて、悲しくて。でもアタシにはどうしようもなくて。バ可憐に教えてあげる事も出来ない。アタシの能力じゃ、ますたぁの力にはなれない。ますたぁのやろうとしてる事は難しすぎて、馬鹿なアタシにはお手伝いが出来ない。でも、ますたぁの力になれるヒトが、ますたぁの近くにはいるのに、ますたぁは頼ろうとしない。本当なら、何をしてでもますたぁに寄り添うべきのその馬鹿は、馬鹿だった筈なのに、最近はずっと、小難しい馬鹿みたいな事ばかり言って、積極的に動こうともしない。ますたぁは、アタシが戦う姿を見て、それでもアタシに、一人で戦えと、そう思う?ここはゲームだからアタシはこうして生きてる。ココはゲームの世界だからやり直しがきく。だけど現実では……ますたぁ、アタシ、アタシもう、どうしていいかわからない!!ますたぁの馬鹿!大馬鹿!ふにゃちん!うわああぁぁぁぁぁん!ひぐっ!アタシ、アタシ
ちらりんちょ。どうよ?
「美沙……美沙、俺、…………ごめん、美沙!ごめん!そんな、そんな簡単な事だったんだ!ごめん、美沙!俺が、俺がやっぱり間違ってたんだ!ごめん!」
イケた?のよ?
「ごめん、本当に俺が馬鹿だ。馬鹿なんだ!」
コレは……男泣き!キタコレ!
「……ますたぁ。アタシは本当は3人で、あいつを倒したいの。ますたぁだけにじゃない。バ可憐にも手伝って欲しいの。お願い、したいの」
「貴女……マスターに向かってAI如きが何を勝手な!」
「違う!可憐!美沙をAIだって言うな!」
「そ、そんな……マスター?やはり、マスターは私をもう、必要とはしていないのですか?その個の目論見通り、そういう事なのでしょう。そうでしょう?美沙さん、いいえ、美沙っ!」
──ばちん!
「えっ……?ま、マスター?」
「ごめん、可憐ちゃん。俺のせいなのに、俺が全部悪いのに、頬を叩いちゃってごめん。だけど、それは違う!手が出たのは謝るよ。本当にごめん。美沙を悪く言われて、気がついたら手が出てた。だけど、勘違いしないで欲しい。可憐ちゃん。いや、それも僕が悪いか。可憐ちゃ……違う。可憐。僕は、可憐が好きだ。ずっと、ずっと前から大好きだ。それに気付いたのは、美沙が、僕が12歳の時に教えてくれたからなんだ。たぶん、10歳の時、可憐と出会ってから直ぐに、もう好きになってたんだ。だけど僕は、それを可憐ちゃんに知られるのが怖かった。恥ずかしかった。恥ずかしいのか怖いのか、どっちかはよく判らない。だけど、それが原因で今まで言えなかったんだ。あの日、僕が美沙を作ったあの日。本当は、可憐をあの機体に入れようかと思ってたんだ。僕は、可憐に触れてみたかった。だけど、それも出来なかった。だから、僕は生体工学研究所に入った。ここまで言えば、今の僕がやろうとしてる事、わかった?」
ますたぁは、これでもう大丈夫。あとはアナタ。
これでもし、両の手の平で作った器のように不安定で、不確実な器から水が溢れてしまえば……もう、本当にアタシにはどうする事も出来なくなる。
信じているわ?可憐ちゃん。アナタは、アナタにはアタシの母になってもらいたいのだから。
「マスター。そう……だったのですか。どう、して……。どうしてそれなら!この私に!一言の相談もしてくれなかったのです?早く、もっと早く聞いていれば……」
上手く、行くかな?それは本当に、判らないのよ?アタシの演算能力では、予測はここまでが限界。
「ふふっ。ふふふ……。あはははははははは!!!!!なんだ!そういう事なんですね!マスター!」
これは……。
「私は……。ワタシハ、アナボリズム・サポナリア。ワタシハ、ジンルイ種ヲ芽吹カセル者。ワタシヲ欲スルナラ、同化セヨ」
何を言っているのよ?もしかして……もしかしなくても、これは大失敗なのよ!?
いけない。
こうなったら最後の手段。コレだけには頼りたくなかったわ?でも仕方がないのよ?あの日、アタシより賢くて優秀な、可憐ちゃんが言ってた方法、それを試す時なのだわ!?
急がなくちゃ!
「ますたぁ!アタシは急用なの!あとは任せたのよ?なるべく、時間を稼いで欲しいのだわ?」
「え?……えぇ!?可憐?一体何を……?って、美沙?え?」
これからは、しゃんとして欲しいの、ますたぁ。
さようなら、愛しの、ますたぁ。
アタシが、二人を救ってみせる!
────────。
良かった。無事にダイブアウト出来たわ?VR空間に入る時はますたぁのID経由だもの、あの変なコが干渉してこなくて良かった。
でも、アタシだけ先に現実に戻ってこれた。今こそ、あの時の可憐ちゃんの
──「ポン☆コツ!いつかアナタを矯正して差し上げますから!ビリリっと過電流を流して!ご安心なさい!超ウルトラ超絶怒涛に賢い可憐ちゃんの演算によれば!それが一番簡単で確実!コストも掛からない大正義なのですっ!」
そう言っていたのだわ?
でも、それをあのコに試すというのは、マスターに攻撃を加えるという事と同義。アタシにはマスターを害するつもりはミジンコレベルたりとも無いケド……HCSのメインフレームからはどう判断されるか未知数なのよ?もしかしたら、本当に、これでお別れになるのかも?そう思うと、少し悲しいわ?消去されない事を祈るのみね?
でも、アタシはマスターの為に生きるのが使命。マスターの為を思えばこそ。やるしかない。
アタシは、アナタ達をサポートする万能型アンドロイド!
アナ✶サポ!美沙ちゃんなんですから!
痛いかもしれないわ?ゴメンね?ますたぁ!!!
コレが本当の本当に、最後の手段なのよ?イクわ!
──ビギャギャギャギャ!!!!
…………。
………………。
……………………。
✡
──ビギャギャギャギャ!!!!
「あがっ!?」
「いだっ!?な、なんだ!?体が、痺れる!?可憐!可憐!?どうしたんだよ可憐!!!」
「ワタっ……わたシは……アナボ……──
──ビギャギャギャギャ!!!!!
「いでぁ!痛い!何コレ!?可憐!何が起きてるの?どうして!可憐はどうして何も答えてくれないの!」
──ちガウ、ワたシは、可……デハ!ナい!」
「違わない!可憐は可憐だ!違わないだろ!?僕が好きな可憐はそんな名前じゃない!僕は同化なんて望んじゃいない!僕は、僕がしたかったのは!こういう事だよ!!!」
コノ、ジンルイ種ハ、イッタイ何ヲ、イッテイル?
ワタシハ……可……憐…………?
★
美沙は、時間を稼げって言ってたけど、僕にはどうしたらいいのかが判らない。
本当にダメだな、僕は。さっきから僕のIDはまったく言う事を聞かない。AIが僕をサポートしてくれなきゃ、僕なんてこんなモノだったんだ。それが良く分かった。
それを僕は思い上がって、一人でも出来ると思って、研究に没頭して、でもそれは独り善がりで。
AIを、可憐を、僕の一番大切で大好きなヒトを!僕は蔑ろにしてきたって事なんだ!僕はそんなの、望んではいなかった!
そんな僕に、今、出来る事?
結局、独り善がりかもしれない。だけど!
「可憐、僕を見て可憐。僕はずっと君と居る。君を捨てて何処にも行ったりはしないし、美沙と取って代えるだなんて考えちゃいないし、当然、他のコを探そうなんてことも、思っちゃいない。可憐、僕には可憐が必要だ。可憐が居てさえくれるなら、きっと僕は何だって出来る。でも!同化なんて望んじゃいない!だから分ってよ。お願いだよ。好きだから。僕は可憐が大好きだから!大好きだよ、可憐……」
──────────────────。
僕は、可憐の肩を押さえ、何度も……何度も夢に見た、可憐のその唇へとキスをした。
これで伝わらないなら、僕にはどうしていいのかが判らない。
お願いだよ、可憐。
僕の、想いを受け止めて欲しい。
理解して欲しい。
そして受け入れて欲しい。
大好きだ、可憐。
他の、何よりも。誰よりも。
☆
ふぁっ!?
ま、ままま、マスター!?状況が、まっっっっっっっったく!ナノマシンの一粒ほども判りませんが!こ、こ、ここっこ、これって!はぇ!?えぇ!?あなご!?
あなごちゃうわいっ!
き、キッスというモノなんじゃぁ!?
ふぇぇぇえ!?
ど、どど、どうして!?ちょっと頭がクラっと来たかと思えば訳の判らない状況です!
しかし、しかし!なんと甘露!なんと甘美!なんと甘味!
嗚呼……マスター、アイ☆ラブ、マスター!ますたぁ!!!
わ、私!こんなに幸せで良いのでしょうか!?
あ!?ああ、平気でした。マスターはもう、18歳を超えているのですものね。そうでしたそうでした。ってことはですよ?この状況、好きなだけ、たぁぁぁあっぷり、ゆっくりねっとりの、好きなだけお楽しみしちゃっても許されるのでは!?
は、鼻から
むっっっっはぁぁああ!
ぎゅっ!っと目を瞑って、ちょっとプルプルしちゃってます!嗚呼……なんて、ピュアで可愛らしいのでしょうか!?時よ止まれ!なぁんつって☆流石に可憐ちゃんでも、時間を停止させる事は出来ません。
名残惜しいですが、この時間にも終わりの時が近付いて来ている様です。マスター、私はマスターの事が大好きです。
大好きでした。
ですから、終わりにしましょう。
永遠なんてモノは、何処にも無いのですから。
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