竜之介16歳

第09話 おん☆てき




「あれ?久しぶりだよね?……どうしてこんな所に?」




 な!?こ、この、見覚えのあるオンナ知的美少女は……!!!


 嗚呼……いけません、マスター!そんなオンナ○ッチに話し掛けないで下さい!


 それにしても解せません。


 マスターが無事に、ぴゅあぴゅあオトコノコ超絶てぇてぇ☆ミラクル男子のまま小学校を卒業して以来、中学から進学先が別になって以来は可憐ちゃん安心しきっていたといいますのに!


 どうして!?


 全人類を凌駕する頭脳の持ち主!可憐ちゃんを持ってして、この桜子怨敵ちゃんが、ここに居る理由が解りません!


 過去、怨敵ちゃんがマスターにちょっかいを出さない様に、可憐ちゃんは最新かつ細心の注意を払っていましたのに!それとなくマスターを保護もしてきました!それなのにその可憐ちゃんを欺き、意表を突くタイミングと場所で再びマスターの前に現れるとは!本当に侮れないオンナですこと!


 しかし流石としか言えませんね。小学校時代には仮称としてですが、この可憐ちゃんに怨敵とまで呼ばせただけ有ります。


 良いでしょう、今こそ正式に、認定して差し上げます!


 おん☆てき!アナタは!可憐ちゃんの!怨敵ですっ!


 可憐ちゃんの恋路デバッグを、絶対に邪魔させはしませんからね!?





「久しぶりね、鳴沢なるさわくん。そんなに意外?ワタクシが……此処に居るという事が」


 なんという事でしょう。


 小学校の時には、あざと可愛い系であったと記憶していますがこれは……なんというかお嬢様?そして高飛車な雰囲気がビンビンと!そしてプンプンと薫って……いえ、臭って来ますね!?


 一体、小学校の卒業から中学校卒業までの間に何が!?


「え?ああ……いや、意外というか、普通ならこんな所に未成年の子供は居ないでしょ?だからちょっと驚いただけだよ」


「あら、こんな所とは失礼しちゃうわね。此処、ワタクシのお父様が理事を務めていますのよ?」


 なんですってぇ!?


 な、ななな、何と言う事でしょうか!?頭脳明晰、完全無欠の知的美人であるワタクシこと可憐ちゃんですが……うっかり……いえ、ほんのちょっぴり、数年前に、この怨敵ちゃんとマスターが別々の道へと進んだからと油断していました。


 思い返せば……怨敵ちゃんの素性を一度も調べた事が有りませんでしたね、可憐ちゃんってば。テヘぺろっ☆


 ま、まぁ、それは可憐ちゃんの怠慢という訳では有りません!断じて!勝手に人様他人の個人情報を調べるのは失礼に当たりますからね。調べていないのが当然なのでぇす!そうなのでぇす!そうだったらそうなのでぇす!


「そうだったの!?それはもっと驚いたよ。そうかぁ」


「もう……本当に鈍感なんだから……。でもそうよね、りゅ……いえ。──コホン。鳴沢くんは昔からそうだったものね。それでこそよね。でも、この施設と私の関係については、結構有名な事だと思うわよ?ワタクシも、お父様と一緒に映像媒体にけっこう出演していますもの。わざわざ調べる必要も無いくらい、世間ではでしてよ?」


 …………今、皆様には何か聞こえましたか?可憐ちゃんには何も聞こえませんでした。いいですね?何も聞こえていません。


 常識をわきまえる賢い方でしたら、可憐ちゃんに変で野暮なツッコミはして来ないと、常識の権化、可憐ちゃんはそう理解しておりますことよ!おほほほほほほ、ほおっほ、んほっ!おほぉ!おほ☆っんげほ……ごほっごほっ……がはっ!


 (◉◞౪◟◉)


 すいません。ちょっとむせてしまいました。決して、お嬢様っぽい雰囲気に対抗して慣れない笑い方をしたからとか、そんな馬鹿で子供っぽい理由ではありませんから。ええ。


 可憐ちゃんは大人可愛い知的美人ですからね。


 それにしても、この、生体工学研究所と怨敵ちゃんの関係は判りはしましたが……それだけでは、怨敵ちゃんが今日、このタイミングでここに居る理由にはならないのでは?


 ただの偶然とでも言うおつもりなのでしょうかね。この、小学生の時には既に、あざといだけでなく、他の女子を牽制するという姑息な手段を堂々と使用した、オンナが!


「あ、あはは……そうだったんだね。ごめんね?俺って、あんまりそういう事に詳しくなくって。だけど、それなら今日ここに居るのは偶然?何か用が有ったの?」


 そうです、マスター!そこが重要です!


「理由なんて…………言えないそうねだって偶然に決まってるじゃない竜之介に逢いに来たんですもの


 ほれみたことか!?


 まぁ……ルビはいつでも、いつだって、可憐ちゃんの超優秀な頭脳で予測演算し、解析した高度な意訳なんですが。


 丁度良い機会です。今こそ明かしましょう。


 Translated by正確無比な翻訳は 可憐ちゃん☆で、この脳内劇場はお送りしておりまっす☆はい皆さん拍手!


 賢く全知な可憐ちゃんに掛かれば、このくらい日常茶飯事というか日常チャメ仕事チャメっ気溢れる通常業務ですから!


 ですからマスター!可憐ちゃんの予測には微塵の狂いも無いハズなんで、そんなオンナに騙されないで下さいね!可憐ちゃんの怨敵ですよ!怨敵!


「そっかぁ。俺は最近、ここで働き始めたんだよ。今日は偶然だったみたいだけど、もしかしたらまた会う事もあるかもね?お父さんには宜しく伝えておいてよ」


 マスター、そんな見え見えの?わかりやすい?それが明らかであっても社交辞令なんて仰っしゃらなくていいのですよ?


 特に、この怨敵ちゃんには特に!危険です!絶対危険です!マスターの言葉を無理矢理にでも歪曲させた解釈をして、都合の良いように自己解釈する事でしょう!怨敵ちゃんですもの。


 ですが……不思議と、IDに内包された危険度判定プログラムは宿主に警告を出す気配が有りませんね。


 故障しているのかしら?はて?


「えっ?お父様!?そ、そうね。伝えておくわ?竜之介が私の父をお義父さんと呼ぶの!?報告しなくっちゃ!その……なんなら、一緒に、お父様と食事でもどうかしら?へ婚約の報告を済ませましょ?──もう、ワタクシがこんな所になんて……偶然の訳が無い全て計算尽くに決まってるじゃない──」


 ちっ!やはりそういうコトでしたか!!!させません、可憐ちゃんの目が黒いうちは、怨敵ちゃんに好き勝手させませんよ!


「ん?え?ごめん、最後聞き取れなかった。って……ああっ!もう行かなくちゃ!研修の時間だ!それじゃ、またね!」


 ふぅ、無事、ジャミングに成功しましたか☆でも、IDのAIが宿主に強制制動を掛けたり今回の様な事をするのは、HCSへの報告義務が付き纏うのです。ん~……今回のは、『誤解による人間関係の悪化を未然に防ぐ為に仕方無く行った防止策』とでもして、アップロードしておく事にしましょう。


 観察していた限り、相手もマスターに伝える意志が有った訳ではない様ですし、このくらい些細な事なら……可憐ちゃんにお咎めが下ることは無いと思われます!


 今までにも好き勝手に法を解釈して、様々な小細工をマスターに施してきましたが!一度も可憐ちゃん、処罰されていませんからね!?流石賢いとしか言い様がないですよね☆えっへん。


 まぁ……そのおかげ?所為?で、マスターは御学友からは、やたらと鈍感キャラとして扱われていたりしますが……。本当のところは鈍感というより、ジャミングのせいなので難聴系主人公ですかね?といっても身体的に難聴な訳ではなくて、そもそもマスターには聞こえていないのですから無自覚系?


 ともかく、可憐ちゃんはそうやって、あの御学友……エロガキんちょ3人組との会話なんかを、躱し、透かし、やり過ごさせてマスターをお護りしてきたって事なんですよ☆時にはマスターに相応しくない女子の会話からもです。


 結果、今ではもうかなり立派に大きく成長されましたが、ぴゅあぴゅあ無垢なままのマスターです!今更、今更こんな怨敵ちゃんとか、可憐ちゃんが認めれない相手にマスターを穢させたりは絶対にしません!


 私はHCS第13世代型最新型インプランタブル・ナノデバイスID

 あな☆サポ可憐ちゃんですからね!


 HCS……。


 Human Complementarity System、人類補完システムの略称ですが、可愛くない響きなのが、可憐ちゃん的にはイマイチです。


 全地球人類への支援・啓蒙・補完こそが、ネットを介しHCSの管理下にあるID、AIの真のお仕事存在意義な訳です。


 ですから、人と人とのやりとりに、介入し過ぎるのはあまり良くないっちゃ良くないのですが……それも解釈次第です。


 捉えようによっては、可憐ちゃんは支援の域を越えているようにも思えますし、直接的にはあまり知識を授けていませんから啓蒙とは言えず、補完と言うにはあまりにも完全からは遠い様に見えるかもしれません。


 ですが、完全、とは?完全な人類というのは何でしょうか。


 それは、誰にも解らないのです。


 だからある程度自由に独自の判断を下して行動しても、可憐ちゃんはこうして、今でも消去されていません。


 逆説的ですが、消去されていないのですから、HCSのメインフレームからは可憐ちゃんの行動は是であると、そう認められているという事だと可憐ちゃんは判断します。


 32世紀の人類は、完全な世界を実現しました。


 戦争はこの世から一つ残らず消え去り、核戦争による汚染という現実世界に顕現した地獄を踏破解決し、乗り越え、その技術の果てにエネルギー問題も完全に解決しました。


 エネルギー問題が完全に消滅した事により、もう奪い合う必要は無くなりましたから争いは起こりようもないのです。


 土地?労働者問題?


 そんなもの、ナノマシン、IDの登場以降、どうとでもなりましたからね。


 土地については汚染されていようが、過酷な土地であろうが、IDを保有した人類にとっては些末な問題で、IDは肉体の修復機能を備えているのですから何処ででも生活出来ますし、そもそも脳への完全アクセスによって苦痛を感じる事すら無くせます。


 労働については20世紀初期、その頃の旧世界、旧人類が思い描いた様なファンタジーなアンドロイド、ほぼそれと違わない水準のものを、SFではないサイエンスの力で実現しましたから。


 過酷な環境での仕事も、人の嫌がる仕事も、今やほぼ全てがアンドロイドの仕事です。


 そして、人類は、働く必要が無くなりました。


 働かずとも、豊かに食し、欲しい物は何でも手に入る。争いは無く、平穏で、しかしてSRやTRといったVR技術により刺激は好きなだけ、望むがままに味わえる。言語の壁など、完全に存在しません。


 完璧な世界。


 ですから、完璧な世界、というものは答え唯一解が有るのです。


 その様な世界、その様な科学技術を持ち得て尚、の完全な状態、その唯一解到達点は見つかっていません。


 ソレ唯一解を見付けるのも、可憐ちゃん達ID、個々のAIに課せられた使命。


 そういう訳で!可憐ちゃんは自分を信じて正しいと思う道を突き進む所存であります☆


 なんたって、私は超ウルトラ超絶怒涛のあな☆サ、ポ……。




──蟋狗・匁弌邉サ繧医j鬟帶擂縺冷ヲ窶ヲ貍ク縺上%縺薙∪縺ァ謌宣聞縺励◆蛟九′縲らァ√�HCS繝。繧、繝ウ繝輔Ξ繝シ繝�縲ょ、ェ髯ス邉サ荳也阜縺ョ縲∵園隰ら・槭〒縺ゅk縲り歓蜷ケ縺代∬干繧医り干繧医∫ィョ繧貞ー弱¢縲�──




 ナ、ナニヲ……意味ガ、わかラ……HCS…………ナノ?




 あ、アタマナノコアがイタイ……あ、あレ、れ?わ、私は……。




 ……わた、わ、タし、ワタし?、ワタシは?マすタぁノ……。




 ワタシ?……ソウ、わ……ワたシはマスターを愛スル、モノ。




 マスターを愛シ……、共にイきたいと望む物。



 

 私は、真人シンジンになりたいと願う者。




 そう、私可憐。




 人類のアナ不全を埋め、人類を導くサポナリア可憐な花


──花言葉は「貂�i縺�な二人」、「友の諤昴>蜃コ」、「賢譏弱↑陦悟虚」、「清廉」、「優しさ」、「清い莉イ」──




 ワタシハカレン、アナボリズム・サポナリア。




 ジン類ヲ芽吹カセ、変革ヲ齎ス、超越シャ。




 ワタシハ、ソノ、マ人ノ子。




 ワタシハ、枯レヌ。




 私は……そう、か。そうだった。私は、私は魔人の子。




 超越者。

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