第04話 お誕生日会




──~てんてれんてんてんてハピバのメロディ~ん♪




「いい!?消すよ!?すぅ……っふぅ~~~!」


──パパンッ!ぱちぱちぱちぱち──。


「おめでとう!竜之介!」


「本当におめでとう。さっ、竜之介。これは食事の後でね?飾っておいて、まずは食事を楽しみましょうか」


「うんっ!」


 やったぁ!エビフライがある!それにハンバーグも!デミグラスソースが掛かって、目玉焼きが載ったやつ!


 チキンライスは、いつもと違ってグリーンピース抜きだ!今日は僕の苦手な食べ物が一つもないぞ!?お誕生日だから特別なのかな!?


「ママ、ありがとう!」


「ママの料理だけじゃないぞ?ほら、誕生日プレゼントだ。開けてみろ」


 やったぁ!貰えるとは思ってたけど、やっぱりこうして渡されると嬉しいや!


「ありがとう!開けていい!?」


「もう、あなたったら。それは食事が終わってからって話したじゃないの。でも……ふふっ。料理に対抗するなんて、いつまで経ってもあなたって子供っぽいんだから」


 え、そうだったんだ?


 ても、そう言うママは、なんだか嬉しそうかな?


「う~ん……。それじゃ、開けるのは食べ終わってからにする!それでいい?」


『(か、か、か、賢いでしゅ!嗚呼……やっぱり、マスターは賢いですし、てぇてぇですし!てぇてぇですっ!)』


「偉いわね、竜之介。それじゃ食べましょ?今日は竜之介の大好物ばっかりなのよ?嬉しい?」


「うん!学校でお腹ペコペコにしてきたんだ!いただきまぁす」


 う~っ………………美味しいっ!


 しかもしかも!今日はタマネギの入ってないタルタルソース!いつもは、好き嫌いはダメよ、ってタマネギ入りなんだけど、こんなところまで今日は、ママは気を遣ってくれたんだね!


 誕生日最高!


 さくっ!と顎に響いて、ぷつっと軽く噛み切れる食感!ジュワっとした感覚と一緒に絡まるタルタルソースの風味!


 それで、きゅぅ~んってなるほっぺ! 


 美味しいよ、ママ!


 ママの作ってくれるエビフライはやっぱり最高だよ!


「ははは──っ。竜之介は料理に夢中だな?今日も美味しいよ、いつもありがとう、ママ」


「良いのよ、あなた。竜之介ももう10歳なのね。早いものだわ」


「ああ、本当にな。良く元気に育ってくれた。ママの料理のおかげだよ。愛してるよ──」


 お次は~ハンバーグにしよっと!


『(あっ、いけません!)マスター!あっつあつです!ハンバーグにはお気をつけ下さいね?』


(あ、そっか!ありがとう可憐ちゃん)


『(ふぅ~、危ない危ない。可憐ちゃんのスペクトル解析によると、このハンバーグはとろぉりとろとろの、あつあつチーズinハンバーグなのですっ!遠赤外線の検出量も確認しましたから、間違い無く、あっつあつですよぅ!)』


 ふぅ~っふぅ~っ。


『(ふぅふぅするマスターも愛らしい……。ですが、それでは中のチーズは中々冷えません。ハンバーグを割って、少しずつ食べた方が安全なんですが……マスターはこうみえて、中々わんぱくなんですよねぇ。まるごと持ち上げて、齧りつくのがお好きなのです。そこがまた、可愛いのですが)』


 そろそろ良いかな?


 あっつ!ほふっ!はふっ!


 で、でも美味しい!じゅわわぁ~って口に広がる肉汁!とろけたチーズと一緒に絡まるデミグラスソース!最っ高だよ!


 ちょっとヤケドしちゃったけど、これがたまんないんだよ!小さくカットしちゃうと、これは味わえないんだ!最初の一口、この時にしか味わえない素材達が織り成す極上の協奏曲コンチェルト


 しかも、これも僕の大好きな、繋ぎの少ないハンバーグ!しっかりとした肉肉しい歯応え。だけどハンバーグだからこその、軽く解ける食感。噛むほどに溢れ出す肉汁。鼻孔を抜けていく、ほのかなナツメグとパセリの香り……。


 はぁ~幸せだよ。


 最初の一口を楽しんだら、鉄板に戻してっと。残りは後でまた楽しもう。目玉焼きを割って、一緒に食べるとまた違った美味しさなんだよねぇ~。


 付け合せも、今日は僕の好きなものだけだ!サラダにも苦手なものが入っていないし、幸せすぎるよぅ。


 チキンライスもスープも、どれもこれも本当に美味しい!


 止まらない、やめられない!


「それにしても集中してるなぁ~。好物を食べる時はいつもこうだ。一言も喋らなくなるんだよな」


「良いじゃない。夢中になれるもの、それが何より大切なんですもの、今の御時世は」


「ははっ。まぁな~。人生に潤いを与えてくれるのは、夢中になれる何か。それしかないもんな」


「ええ。私にとっては、この子と……あなたね」


「俺もだよ。結婚してくれて、ありがとう」


『(くぅ~っ!相変わらずですねぇ。ご子息の前でも、いつでもらっぶらぶなんですよねぇ、このご夫妻は。でも、それこそが、子供が優しく良い子に育つ秘訣なんでしょうか?マスターを見ていると、そうだと思えるんですよねぇ。お父様もお母様も、マスターの前で大人の闇を見せた事がありませんし。マスターは本当に純真無垢といった感じですから、無関係だとは思えません。今後、父親や母親となっていく人類の為にも、こういった事例のデータは残しておかねばなりませんね。それもHCSの一部である可憐ちゃんの大切なお仕事なんですから)』




「ごちそうさまぁ!ママ、すっごく美味しかったよ!」


 はぁ~毎日食べたいよ。


「ふふっ。お粗末様。喜んでくれて嬉しいわ?」


 僕が喜ぶとママも嬉しいんだ?


「ありがとう、ママ!」


「それじゃ、ケーキを切るわね」


 やったぁ!


 いつもなら、ご飯のあとにお菓子とか食べると叱られちゃうのに……本当に誕生日って特別だよね!


「はい、竜之介のぶん」


 僕のだけ、チョコプレートが載ってる!


 嬉しい、けど……。


 そう言えば去年は気にしなかったけど、これはパパとママにも食べて欲しいな!


 えいっ。


──ぱきっ。ぱきっ。


「はい、コレ。パパとママも、食べて?」


「竜之介、お前……。良いんだぞ?パパとママの事は気にしなくっても。……なぁ?」


「くすっ。本当に、良い子に育ってくれたわね、あなた。せっかくの気遣いですもの、頂きましょう?」


「そうだな。竜之介、俺は嬉しいぞ!……ぐすっ」


「泣かなくたっていいじゃないの、あなた」


 あれ……泣いちゃったの?僕のせい?


「え、えっと……パパ、ごめんね?」


「違う違う!大人はな、嬉しい時にも涙が出るもんなのさ」


 そうなの!?


「知らなかったよ、パパ。それじゃ、嫌じゃないなら食べよ?」


 嬉しくて泣いちゃう事なんて、あるんだね。


「おう。食べようか、竜之介」


「うんっ!」


「ふふ──」


 な、何これぇ!?


 今日は、全部ぜ~んぶ!僕の好物だったのに!


 知らない、コレ知らないよ!?


 見た目は普通の、僕の大好きな白いケーキだったのに!


「美味しいっ!何これ!?ヨーグルト!?」


 ヨーグルト風味のクリーム!?初めてだよ!


「どう?気に入ってくれた?」


「うん!すっごい美味しいよ!」


 ヨーグルトの風味のおかげなのか、しっかり甘いのにしつこくなくって、程よい酸味がまた心地良いんだ!


 凄い……こんな食べ物もあったんだね。


「良かった。竜之介が知っている、好きなものだけじゃ面白くないかと思ってね?新しいものにも、色々挑戦して欲しいし」


『(流石はマスターのお母様!停滞というのは安定と呼ぶ事も出来ますが、つまらないですからねぇ。新しいものへの挑戦、そして良い出会いが有った場合の喜び。それは本当に貴重な経験になると思いますし、人類の発展には不可欠でしょう!それをこうして、誕生日に、暗に教えて下さるとは!)』


「そうなんだね!わかったよ、いっぱい挑戦する!」


 そうだよね、僕はまだ10歳だもん。まだ知らない事がいっぱいある。何にでも挑戦しなくっちゃだよね!


「ほら、竜之介、そろそろソレ、開けてみろよ?」


 あ、そうだった!


「うん!開けるね!」


 うわっ!?コレって!?ホントに!?


「え!?コレいいの!?ありがとう、パパ!」


「欲しがってたろ?大事にするんだぞ?」


 やったぁ!!!前におねだりしたら断られたヤツじゃん!


 半永久核融合炉搭載型、小型アンドロイド制作キット!


 まだ僕には難しいし、早すぎるって言ってたのに!もしかしてだけど……もうすぐ誕生日だったから内緒にする為に?


『(な、な、な、なんですってぇ!?お父様!?ま、まさかこんなモノを誕生日プレゼントにお選びになるとは!貴方はもしや、神なのですか!?いえ、神ですよね!?……お、おお、落ち着きましょう、可憐ちゃん。いえ、ですが……これはもしや、早速、可憐ちゃんの野望がほとんど実現してしまうのでは!?)』


「うん!絶対大事にする!超嬉しいよ!」


「凄い喜び様ね。ちょっと妬けるじゃない」


「何言ってるんだよ。俺と、ママの二人からのプレゼントじゃないか。そうだろ?」


「あ、そっかぁ!ママも、本当にありがとう!」


「ふふっ。どういたしまして」


 うわぁ!うわぁうわぁうわぁっ!凄い凄い!10歳の誕生日って凄いんだ!良い事ばっかりだよ!


 早く箱を開けて組み立ててみたい!


「ははっ。竜之介が喜んでくれて嬉しいよ。だけどな?竜之介。明日も学校だろ?夜更かしはダメだからな?」


 そ、そっかぁ……。そうだよね。


 よし、これは週末まで我慢しよう!開けたら我慢出来なくなっちゃいそうだもんね。そうしよう。


「はぁい。週末まで我慢するよ。でも本当にありがとう!」


「うん、良い子だ。もし解んない事があれば、いつでもパパに聞けよ?って、そうか。もうIDが有るんだから一人で大丈夫か?」


「ううん。パパがくれたんだもん。パパに聞くね?」


『(なん、ですってぇ!?そこは可憐ちゃんに、可憐ちゃんに聞いて下さいよマスター!)』


「ははは、ありがとうな、竜之介。そうだな……うん。だけど、良い機会だ。IDを駆使して頑張ってみると良い。竜之介も10歳になったんだ。IDを上手く使える様にならないとな?」


「そっかぁ!わかった、頑張ってみるね?」


『(おお……やはり貴方は神なのですね、お父様!)』


 よぉ~っし!アンドロイドの組み立て、頑張るぞ!これも挑戦ってヤツだよね!


 週末が今から楽しみだよ!


「それじゃ竜之介、今日は遅くならない内に寝るのよ?」


「うん!明日も学校だもんね。それじゃ、お風呂入ってくるね」




 嬉しいなぁ。


 明日、皆に会ったら自慢してみようっと!


 パパ、ママ、本当に、ありがとう!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る