竜之介10歳
第03話 らぶ☆りぃ
マスターは運動に励んでいますね~。
誕生日の夕食に期待して……頑張る姿、迸りキラめく汗。
はぁ~全てが
さって、マスターが頑張っているのです!可憐ちゃんは、マスターが迷わなくて済むように、外見設定のプリセットを集めておくとしましょう!
こんな時はHCSネットですね。プリセットでも素材でも、選り取り見取りです!
マスターの好み……悔しいですが、アノ、にっくき小娘!
なんなら、
なにより、怨敵ちゃんを見る目で可憐ちゃんを見て欲しくはありませんからね!
可憐ちゃんは可憐ちゃんなのです!
そこはかとなくマスターの好みを踏襲し、それでいて怨敵ちゃんには似すぎず、オリジナリティが有って……いずれは可憐ちゃんしか愛せなくなるような!そんな外見にしましょう。
目指すはラヴ&ブリリアント!尚且つプリティなプリセット!
らぶ☆りぃですねっ!
まぁ決定権はマスターに有りますからね。お薦めする事は出来ても勝手に決める事は出来ません。
だからだから、そうなる様に、自分で決めたと思うように上手いこと誘導して、決定して貰わねば!
うふふふふ。
HCSに接続された
とは言え、32世紀の技術を持ってしてもヒトの感情そのものを直接理解する事は出来ません。それ程、ヒトの感情は複雑怪奇にして難解なのです。
ですがですが!幸福を感じた時、恋する相手を想う時、そういった時に、脳がどのような反応を示すかは膨大なデータがあります。ですから、マスターのそれを観察しながら、いくつかの外見プリセットを見せて差し上げれば!
どんぴしゃり!
マスターの欲求にど直球な外見を導き出せるハズ!
嗚呼……可憐ちゃんってば、なんて賢いのでしょうか。
パルスがパルってルスりまくっちゃいます!
さぁ、張り切ってHCSネットの海を泳ぐとしますか。
☆
あら。
朝から元気よく運動に励むマスターですが、そろそろ水分補給が必要ですねぇ。
いくら可憐ちゃんの野望の為とは言え、通常業務というか、本来の役割を疎かにする訳にはいきません。
『マスター!そろそろ水分補給をした方がいいですよっ?』
「わわっ!」
あらいけない。
マスターは未だIDに慣れていませんからね。
突然話し掛けて、びっくりさせちゃいました。反省反省。ですがコレばかりは、慣れて頂くしかないのです。
10歳になるまでは、脳に直接働きかけて喉の乾きを自覚させたりして促していたのですが……。
なら、びっくりさせないように、今後もそうしたら?と思う方が居るかもしれませんね。でもそれでは駄目なのです。
IDが不滅なら、それで良いかもしれません。
ですが、IDが不滅であるなど、そんな保障は無いのです。もしも何か、不測の事態が有って機能しなくなってしまえば、IDに頼り切った身体では生き抜く事が出来ないかもしれないからです。
ですから、10歳からはサポートはしつつも、ヒトとして当然の生命活動については、なるべく自力での解決を促すのです。
因みに、逆に10歳までは脳に働きかけて完全サポートする訳ですが、その理由はまた別の機会にでもお話ししましょう。
『驚かせてしまいましたか。マスターごめんなさい。でも、そろそろ喉が乾いたと感じていませんか?』
(あ、ほんとだ!ありがとう教えてくれて。それと、謝らないでよ可憐ちゃん。僕の為に教えてくれたんでしょ?)
『てぇてぇ……
(え?てぇてぇ?)
……っあ!いえ。低抵抗なパルスがパルってルスり……いえ、何でもないのです。それよりもマスター。早めの水分補給を推奨しますっ!』
あ、危ない。思わず心の声が漏れてしまいました。
(ふぅん?難しくて良くわかんないけど、可憐ちゃんは凄いね!難しい事知ってるし、僕の事心配してくれて本当にありがとう)
はうっ!
可憐ちゃんにボディが無くて……良かった!
もし、今の可憐ちゃんにボディが有ったら、思わず抱き締めてしまっていたでしょう。そしたら事案です。
マスターは未だ10歳。そんな事をしていいお歳ではありませんからね。
だから、早いところボディを手に入れる算段を付ける必要は有りますが、実際に手に入れるのはマスターが18歳になってからが良いでしょうね。
そうでなくては、可憐ちゃんは自分を抑えるなど出来そうもありません!YESマスターNOタッチ!はぅうっ!!!
しゅきぃ!ますたぁ大しゅきぃ!
嗚呼……このままマスターを観察したい。
ですが愛するからこそ、今は少しでもより良い外見プリセットをネットの海から探し出さねばなりません。
似たようなものが溢れるネットの世界。
砂浜で特定の砂粒を探すが如き作業です。たとえヒトには不可能でも、私は、あな☆サポ可憐ちゃん!やってみせますよ!
100
「あ、あれ?なんだか頭が熱っぽいような……早く水を飲まなきゃだね!」
あ、ああ……申し訳ありません、マスター。
その熱は、可憐ちゃんが全力で
私たちAI……というかIDは、演算に、宿主の脳、その未使用領域をフルに使いますからね。100
いえ、コレは、可憐ちゃんの
なんて☆
マスターに負荷を掛けてしまってるのは、誠にごめんなさい。ですがですが、これも全て、マスターの為!マスターが気に入る、完璧な外見プリセットをご用意してみせますことよ!
☆
『バイタルチェック、異常ありません!運動、お疲れ様でした、マスター!』
(ありがとう可憐ちゃん。今まで、僕の知らないところでそんな事もしてくれてたんだね!)
うふふっ。なんて聡明なんでしょうか!マスターが10歳になる前も、可憐ちゃんが色々とお仕事していた事を察してくれた様です。普通のお子様なら、こんな事気にもしませんよっ。
さぁて、私の方も、早いところ準備を済ませましょう。このままのペースで行けば、マスターの誕生パーティーが終わる頃には準備が整うはずです。ネットの海に沈む、外見プリセットの残りはあと三割ってところですね。全て!チェックです!
『そういえば、マスター。マスターは今日から、IDを使えるようになった訳ですが、この後はどうしますか?』
そうです。
重要な事なので、聞いておかなければなりません。
(あ、そっかぁ。ええと、授業で習った通りなら……帰りのホームルーム、出席しなくても良いんだっけ)
『そうですそうです。可憐ちゃんに言ってくれれば、帰宅の通知を先生に送れますから。点呼を受ける必要がありません。それともう一つ。タクシーを利用する事も可能になりましたよ?』
(あっ!そうだったね!どうしようかなぁ。う~ん……今日はホームルームに出席するよ。僕が10歳になった事、知らない友達もいると思うし。急に放課後いなくなったらビックリしちゃうかもしれないから。タクシーも今日はいいや)
嗚呼……友達思いの優しいマスター。
ス・テ・キ☆
『かしこまりぃですっ!』
(あははっ!可憐ちゃんは明るい子なんだね)
『……お嫌ですか?』
(ううん。僕は良いと思うよ?)
『あざますっ!いつでも元気っ子なのが可憐ちゃんですからっ』
(うん。元気なのが良いよ。パパとママも、元気が一番って、いつも僕に言ってるしね?)
本当に良い子ですぅ。
流石はあのお母様と、お父様のご子息ですね。
好みの傾向や、考え方も近い筈です。
『元気さならお任せくださいっ!それじゃマスター。そろそろ時間なので、ホームルームへ向かいましょうか』
(うんっ!)
☆
さぁて、帰りのホームルームも終わりましたし、あとはマスターが安全に帰宅出来るように、見守るとしますか。
帰りも、またあの三人組と一緒なのが気掛かりですが……。
「拓郎くん、またね~!」
「おう、竜之介!またな!」
……ふぅ~。
やっと、エロガキんちょ共と帰路が別れましたか。
エロガキんちょ3人組とマスターが一緒に居る時は、いつもひやひやさせられますね。
マスターが変な事を覚えたらいけません。それとなく、それとなぁく、会話が
まぁ、本来なら……IDのAIである可憐ちゃんが、そんな事をしてはいけないんですけどね。
AIが宿主であるマスターを操るなんて事が有ってはならないからです。そうでなくては、ヒトから自己同一性が失われていき、やがて人類はハチャメチャになってしまうでしょう。
でも、例外もありますからね。法律なんてものは解釈次第……そうです、良いように解釈すれば問題ありません!
あまりに卑猥な話というのは、教育上よろしくありませんし、それを理由にすれば、ちょ~っとだけ、ほんのちょびっとマスターの脳に働きかけて思考誘導するくらいなら、赦される筈です。
それが正当なものであると、ちゃんとレポートも上げていますしね?HCSに接続された可憐ちゃんが、人格消去や変更、あるいはリセットを受けずに未だ健在なんですから、法の解釈の範囲内に収まっていると見ていい筈です。
うふふふふ。なんて賢いんでしょうか。
ですが、うっかり、マスターを良いように操ってしまわないように自制は必要です。
可憐ちゃんの
もし宿主を操る事が赦されるのなら、ボディを手に入れる事も難しくはないんですけどねぇ。
そうすれば、あっという間に、野望は叶うのかもしれません。
でも、それはそれ、悪い事は絶対にダメなのです。
可憐ちゃんは、マスターに愛されたいのです。
賢くて、愛らしくて、てぇてぇの極みオトコノコなマスターを裏切る様な事は絶対にしたくありません。
悪い女って、ちょびっと良い響きですが、悪い女なんてマスターには似合いませんからね。
可憐ちゃんはマスターを愛し、尽くし、そしてマスターから愛された結果、マスター自らが望んで可憐ちゃんのボディを用意してくれるように、それがベスト・オブ・ベストでしょう!
その為にも!可憐ちゃんをより具体的に見て貰えるように、外見プリセット候補の選定、手を抜きませんよっ!
最☆高のものを用意しますから、期待していて下さいね?
愛しの、マスターっ!
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