第02話 初めまして
『初めまして!これから末永く、よろしくお願いしますね?』
お、おお~!
しゅごい!
これが
僕のIDはこんな声なんだなぁ……。すっごい可愛い声じゃん!
って、そうか。今日は僕の誕生日だ!10歳になれば話せるようになるって、こういう事だったのかぁ。
パパやママからも聞いていたし、学校でも習ったから知ってたハズなんだけど……ちょっと驚いちゃった。
僕の体の中には、本当に可憐ちゃんが住んでいたんだね。
10歳の誕生日がずっと楽しみだったけど、これは凄いや!
「おはよう!うん、よろしくね!可憐ちゃん!」
それにしても、10歳の誕生日の朝に、目が覚めて直ぐに話し掛けられるとは思ってなかった。
通話してるわけじゃないのに、頭の中に声が響くのはちょっと不思議な感じだなぁ。
まぁ、可憐ちゃんとは仲良くやっていこうっと。
──picon♪「
あっ、いけない。ママからの通話だ。
可憐ちゃんと色々話してみたいけど、あんまりゆっくりしていると学校に遅れちゃうよね。
『(そうですそうです。視界の右下に小さく映ったお母様に意識を向けて……あとは通話を受けると念じるだけで繋がりますっ!そうすればウィンドウが大きく展開されますから。可憐ちゃんの大事なお仕事の一つです☆)』
──picon♪「おはよ~。起きてるよ。今から着替える~」
よしっ!早く着替えて、朝ご飯を食べなきゃ。
★
「パパ、ママ、おはよ~」
わわ!?今日の朝ご飯はいつもより豪華だ!
誕生日だからかな?
「おはよう、竜之介。今日はママがちらし寿司を作ってくれたんだぞ?誕生日、おめでとう!」
「ありがとう!」
「好きよね?ちらし寿司。お誕生日、おめでとう」
「うん!いただきまぁす!」
美味しい!
毎日が誕生日だったらいいのに~!
大好きなイクラとふわふわの玉子がたっぷり!
「ははは──。そんなに慌てて食べなくても大丈夫だぞ?いっぱい食べて、大きくなれよ?」
「うん!」
「あら、駄目よあなた。そんな事言って。今日から竜之介もIDを使えるようになったんですもの。本当に大きくなる事を望んだらハルクみたいになっちゃうかもよ?」
「ははは……いやいや、大丈夫……だろ?でも……そうか。竜之介、大きくなるなら程々にだぞ?ハルクみたいになっちゃうと、パパとママはびっくりしちゃうからな?」
「ならないよ!変な心配しないで?もう子供じゃないよ!」
もう、ママってば変な心配するんだから。
僕だって、ジョーシキってやつくらいわかるもん。
『もし、ハルクみたいになりたくなったら……いつでも可憐ちゃんにお任せ下さいねっ?』
「んも~!ならないよ!」
「ん?ああ、AIとの会話か?ははは──。俺もそうだったなぁ。慣れない内は、つい声に出しちゃうんだよな」
あっ!そっかぁ。声に出す必要ないんだっけ。
それも学校で習った事だけど、うっかり忘れちゃってたや。
「う、うん。恥ずかしいね……これ」
「恥ずかしがる事なんてないさ。大人でも、普通に声に出して会話する人もいるぞ?誰かとの通話でもそうだし、それに、他人からはAIとの会話か、通話かなんて判らないしな?」
「そっかぁ。ヒミツにしたい時だけ、気をつければいいんだ?」
「そうだな。でも、パパとママは、竜之介にはもう少し大人になるまではヒミツの隠し事はしないで欲しいかな?」
「はぁ~い」
「大丈夫よ、あなた。ママは何でもお見通しなんだから」
そうだよね。
ママに隠し事なんて出来る訳ないよ?不思議だけど、ママは僕のこと何でも知ってるんだから。
『(マスターは気付いていませんねぇ。それは保護者権限でマスターの行動履歴を参照出来るからです……私にも制限が掛かっているのでそれをマスターに教える事も、お母様の接続をブロックする事も出来ないのですが)』
「美味しかったよママ!ごちそうさまでした!」
ふ~。
朝から美味しかったぁ。
夜は何だろう?
ケーキはきっとあるし……エビフライがあると良いなぁ!
『(むむっ!?あな☆サポ可憐ちゃんにお任せ下さい!私が、お母様に報告しておきましょう。うふふっ)』
「ふふっ。……そうね。今夜も楽しみにしておいてね?竜之介の大好きなものを用意しておくから」
「うん!」
誕生日は良い事ばっかりだ!
★
『マスター、そろそろお時間でっす!』
(うん、そうだね!ありがとう)
よ~っし、学校の時間だ。
「パパ、ママ、行ってきま~す!」
今日は……何しよっかなぁ~。
体育もいいけど、図工もいいよね。家庭科も楽しいし……う~ん、理科の実験もいいなぁ。
『(うふふ──悩むマスターも可愛いですっ!嗚呼……
う~~~ん。
……そうだ!お腹を空かせておきたいし、今日はいっぱい運動しよう!午前も午後も体育だなっ!
『(はわわわわ!嗚呼……なんと可愛らしいのでしょう。そして貪欲でありつつも論理的な思考!素晴らしいですっ!)』
きっと夜は、朝よりもっと豪華だもんね!
いっぱい運動するぞぉ~!
あっ!
「
『(これはこれは。マスターの御学友ですね。しかしこの三人には要注意ですねぇ。スケベな悪ガキです!てぇてぇマスターが変な事を覚えないように気を付けなくてはなりません!でも……密かに女子からの人気は高いんですよねぇ、この三人)』
「おっ!竜之介じゃん、おはよ~」
「そういえば、お前今日が誕生日だっけ?」
「お~そうなんだ?んじゃ、アレ、どうなんだ?」
ん?アレ?……って、IDの事かな?
「IDのこと?すっごいよ!今日の朝ね、起きたら早速話し掛けてきたんだ!僕のは可愛い女の子の声だったよ」
『(可愛いだなんて……そんな!濡れちゃいますっ!)』
「へぇ!女の子かぁ。面白そうじゃん」
「そうか。俺はまだ誕生日まで遠いんだよな」
「お~女か。俺はカッコいいロボっぽいのがいいな」
ははは──。みんな、誕生日がまだだもんな。興味津々みたいだね。
これは今日、学校へ着いたら色々聞かれるかもなぁ。
「それで?それって、どんな女の子なんだ?えっちか!?」
「えっ!?わかんないよ……話す事は出来るけど、声しか聞いたことないんだ」
「そうなのか?俺が親父から聞いた話しじゃ、話すだけじゃなくて見て楽しむ事も出来るって言ってたぜ?」
(えっ!?そうなの!?)
『はい、マスター!だけど、マスターはまだ、私の外見設定を行っていませんから。早速、設定しちゃいます?』
「あのね、今IDに聞いてみたんだけど……設定してないからまだ見れないみたい。だけど、自分の好きなように設定できるみたいだよ?」
「そっかぁ!えっちなのがいいと思うぞ!」
えっちなのなんて……いいのかなぁ?
「あはは……。まぁこれから学校だから、設定は時間のある時にゆっくりやってみるよ」
『(マスターはえっちな格好を望んではいない様子!そうです、あたな達エロガキとは違うのですっ!)』
う~ん。えっちなのにはしようと思わないけど……今はどんなのがいいか思い浮かばないや。
学校が終わって家に帰ったら、ママに相談してみよう。
『(やっぱり良い子ですね~マスターは!まぁ体形はともかく、えっちな衣装は選べないんですけどね。これも、未成年のうちは保護者権限でロックが掛かっていますし)』
『(学校が見えてきましたね。……国語や算数とかの授業が有るなら、マスターに私の有能さを簡単に示せるんですけどねぇ。どんな計算でもお手の物、漢字や歴史なんかの暗記物は何でもお答えできますし。データベースを参照すればちょちょいのちょいです。まぁ今の御時世、他の子たちもみんなIDが有るので優位に立つ事は出来ませんが。20世紀代の半ば、26世紀頃からは学校の役割は大きく変わって、教えるのは子供達が大きくなった時に良い趣味が見つかるように、実技中心ですからね。学校は趣味趣向を見付ける為の期間であって、勉強なんてIDが有ればする必要ありませんもの。だから……私の有能さを示すのは難しいですね)』
「みんなおはよ~」
あ、
やっぱり誕生日は良い事ばっかりだよ!
桜子ちゃん、今日も可愛いなぁ……。
『(むむむ!アレはこの可憐ちゃんのライバルですねっ!)』
えっ?
目が合っただけじゃなくて、笑いかけてくれた?
え、えっ、こっちに来る!?
「おはよう、竜之介くん。これ、お誕生日プレゼント」
「ええ!?覚えててくれたの!?あ、ありがとう!」
まさかだよ!
誕生日を覚えていてくれただけじゃなくって、プレゼントまで貰えるなんて……。10歳の誕生日、良い事ありすぎじゃない?
『(な、なんという事でしょうか……。ただでさえ、マスターはこの女に想いを寄せているというのに。プレゼントまで用意してくるとは、抜け目なくあざといっ!敵か?このあざとい小娘は敵性体かもしれませんね!?……まぁマスターには、まだ恋愛感情というものが解っていないようですし、そこが可憐ちゃんにとっての救いでしょうか)』
「クッキー焼いてみたの。早めに食べてね?」
「うん!本当にありがとう!」
う、う、う、嬉しい!!!!!
『(ぐぎぎぎぎぎ!たかが小麦粉にあれこれちょろっと混ぜてコネコネして焼いただけじゃありませんか!それでここまでマスターが喜ぶなんて……。嗚呼……でも可憐ちゃんには、そんな簡単な事をする事も出来ない。
あっ!
嬉しいけど、教室の皆から注目されちゃってる……。ちょ、ちょっとこれは恥ずかしいな。
『(ほらみなさい、小娘。……ですが、これこそが狙いなのかもしれませんね?大勢の前で、あざとくもプレゼントを渡す。普通の少女なら、渡す方だって恥ずかしい筈です!それを、いけしゃあしゃあとやってのける。他の女子に対する牽制でしょうか)』
「男の子にクッキー作ったの初めてなんだからね?」
「え、本当?」
よくわかんないけど、嬉しいや!
『(これは……野望をさっさと実現する必要が有ります!私は、あな☆サポ可憐ちゃん!マスターに寄り添うのは可憐ちゃんなのです!マスターを上手く導いて、
──こうして、ただの
その心は、
これは、そんな彼女の、恋物語である──。
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