第11話
泣き疲れたひかるは、そのまま、眠りにつく。
しかし、浅い眠りは、すぐに、ひかるを現実に引き戻す。
シャワーを浴び、目の前の鏡を見ると、赤く腫れた目をしている自分が写っている。
ぶっさいくな顔やなぁ…。
身体を拭いて、身支度を整える。
腫れた顔を見ないようにし、うっすらと、グロスをひいただけで、ひかるは、携帯に手を伸ばした。
『もしもし…。ひかるです。今から、おねぇさんのとこ、行ってもいいですか?話をしたいです。聞いてもらえますか?』
あかねの部屋のドアを叩くと、あかねは微笑んで迎い入れてくれた。
「そんなに顔、腫らして…泣いたのね?」
「ひどい顔になっちゃった…」
「ホント、ぶっさいくよ。」
あかねの言葉に、ひかるは笑顔を見せた。
「だって、いっぱい泣いたんよ…。でも、ふっきれた気がする…」
「そうなんだ…。じゃ、あたしに話してくれるよね?」
ひかるは、頷き、ケンとの付き合いとホストになってからの苦悩…。
ケンと雅史の間で揺れ動いた自分。
そして、雅史との将来を約束したいきさつから、雅史と共に生きようとしたこと。
しかし、別れのメールだけが来て、そして、会えもしないで、電話も拒否され、部屋の合鍵まで返されたことまで、すべて、あかねに話した。
あかねは、黙ってずっと聞いていた。
「ねぇさん…もう、男はコリゴリや…」
「そうよね…今はそう思うかもしれないよね…でもね…ひかるは、まだ若いんだよ。」
あかねは、ゆっくり、ひかるに言い聞かせるように、話を始めた。
「まぁ、離婚したってうそをつくのは酷いよね。それは、うそじゃなくて、ホントにひかると暮らしたかったかもしれないけど、結局、うそになったんだからね」
さらに続ける。
「ダーリンは優しすぎたのかな?いや、弱かったんだね。もう少し、強さがあったら、うそをつく必要はなかったのかも…。元々、ケンちゃんもそうだけど、ダーリンとは結婚と言う、縁がなかったんだよ…」
ひかるは頷く…。
「お互いの心の寂しさを埋め合った。でも、その埋め合い方が間違えたんだね。結局、ひかるは、都合のいい女で…。ひかるだって、そうだよ…。ダーリンもケンちゃんも、ひかるにとって、都合のいい男だったんだ…」
あかねの言葉に、ひかるは、黙って聞いている。
「まぁ、ひかるは若いんだから、まだまだこれからだよ。心の拠り所は、必要だよ。女だからね。ダーリン達に、別れたことを後悔させるくらいの、いい女に生まれ変われば、絶対に素敵な心の男が現れるよ。ひかるが、今の気持ちを引き摺って、今と変わらなきゃ、やっぱ、それなりの男にしか巡り会わないしね…」
「そうやね…」
「女は恋をしたら、可愛くなって、失恋したら強くなり、より、綺麗になるのよ…。失恋は、決して汚くてみじめな事じゃないんだからね。ひかるには、あたしやママもついてるし、友達だっていっぱいいる。みんな、応援してるからね。ひかるは、ホントは、バカが付くくらい明るく元気な娘なんだから、大丈夫。しっかりしなさいよ!」
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