第7話


無理矢理作っていた笑顔を戻し、ひかるの仕事は今日も終わった。


重い足取りで自分の部屋にたどり着く。


スナックの仕事で、酒を飲むが、部屋に戻っても、ひかるはまた、グラスに酒を注ぐ。


ケンへの想いは辛いから、それを忘れて眠れるように、酒を飲み続ける。


酔いつぶれて眠りたいから、ひかるは、かなりの量の酒が必要となっていた。


少しでも気分を変えたくて、観もしない、くだらない、深夜のお笑い番組にチャンネルを合わせ、濃い目の水割りが、早いピッチで喉を流れる。


辛いから、楽しい時間を思い出す為、ケンの香りを身につける。


GUCCIの香水…。


つけると、ケンへの想いが強くなり、また、ひかるは涙を流す。


声を殺して嗚咽する。



なんで?


なんでや?


なんでホストなんかになったんや…。


あたしが、仕事なんかやるように、勧めんかったらよかったんや…。



灯りもテレビもつけたまま、ひかるは、テーブルの脇で、酔い潰れ堕ちていく。


それでも、手には携帯を離さない。



ケンからの連絡を待っているから…。



午前4時…。


寒さに凍え、目を覚ます。


携帯は、無着信…。


携帯を握りしめたまま、布団へ潜り込む。


そしてまた、浅い眠り入ろうとした時、携帯が震え、音だけでも、誰からのメールかわかる着信音に飛び起きた。


ケンからのメールだ。



“もう寝てるよな?仕事、頑張っているよ。この前はごめんな。仕事、忙しいから、まだまだ逢えないよ。でも、もし逢いたかったら、店に来てよ。ひかるは特別だからね…”



メールを読んだひかるは、布団に顔を押し付けて、声をあげて泣いた。



あたしはもう、ケンちゃんのお客の人達と同じやの?


店に行かんと逢えないの?


そんなん、彼女やないやん…。


店に行ったら、彼女じゃなくなるやん…。


みんなと一緒の優しさはいらんよ。


わたしだけの優しさを待っているんやから…。



泣くだけ泣いて、涙を自分で拭うと、ケンに返事を打つ。


苦しい気持ちで、やっと打てた一言だった。


“店には、行かんよ…”


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