第5話
雅史以上のケンの俺様的な性格。
そこに、ぞっこん惚れた、ひかるは今では、雅史の来ない日は、ケンの事ばかり考えている。
雅史は自分からは離れて行かないと言う安心感からか?
危機感を持つ、ケンを手放さないように、必死でケンに触れていた。
ケンは定職を失って、少し、荒れ気味になっていたからだ。
時間の有り余るケンは、ひかるの休日以外にも、ひかるを連れ歩いた。
ひかるの出勤時間、ぎりぎりまで一緒に過ごし、たまに、無理矢理、ひかるにスナックを休ませようとする事もあった。
そんな時は、ケンに従わないと、荒れて、街で暴れて喧嘩をするのだ。
ひかるは、適当な理由でスナックを休んだ。
しかし、2人だけで一緒にいると、ケンはひかるに優しい。
共にベッドの中では、まずは自分へひかるに奉仕させる。
ひかるは、一生懸命にケンの身体をまさぐり、キスをして、舐めてしゃぶり、ケンを悦ばす。
ひかるは嫌ではなかった。
ケンが悦び、呻きを漏らすのが好きだった。
ケンは昂ると、ひかるを横に寝かせ、今度はケンが愛撫する。
ひかるとケンの舌と舌が絡み合い、ひかるは頭の芯まで痺れてくる。
指と舌を使い、優しく触れるケンに、思わず声をあげるひかる。
一番感じる、そこにケンが舌を這わす時には、すでに溢れんばかりに濡れている。
執拗に這わすケンの舌の動きに、頭の中が白くなる。
イッた…。
イカされた…。
しかし、休むことなく、ケンは、そっと優しく、ひかるに入っていく。
焦らすように、ゆっくりと…。
2人の身体に隙間がなくなった瞬間に、ケンは強く激しく動く。
少し、静まりかけたひかるの肉体は、また一気に昂りを見せる。
「一緒に…一緒にイキたい…」
喘ぐひかるの呼吸に合わせ、ひかるの悲鳴にも似た、歓喜の声に、同時に昇りつめる。
心だけでなく、身体も満たされた…。
しばしの休息の後、必ず、ケンは、こう、ひかるに言う。
「お前は最高だ…」
ひかるは、恥ずかしくなり俯く。
「シャワー行こう。洗ってやるよ」
ケンは、ひかるの手を引き、バスルームへ行くと、丁寧にひかるを洗ってくれた。
ひかるは、嬉しくて出てきた涙を、シャワーで顔を濡らして誤魔化した。
今日もケンに抱かれていた。
仕事をしなくなったケンには、時間はたっぷりとある。
夜になり、ひかるが仕事に出掛けるまで、ケンはひかるを求めている。
ひかるもケンと一緒の時間は、この上無く楽しい。
だから、ケンの誘いを断れないし、自分からも、強く会うこと求めていた。
午前10時から、午後の5時までの、ラブホテルのサービスタイム。
コンビニで、食べ物と飲み物を買い込み、ずっと部屋に隠る。
ケンは、ひかるがトイレに入ると、いきなり扉を開けたり、セックスに関しては、どこで知識を仕入れてきたのか、いろいろなプレーを提案して、2人で挑戦し、プレーの良し悪しを確かめて、楽しんだ。
「今日は、コスプレやろうぜ。女子高の服着ろよ」
「あたしは、ナースがいいな」
「ダメだよ、ルーズソックス、履いたままやりたいんだ」
「ロリコンか!」
しかし、ひかるは、ケンの言うことには従った。
ケンが不機嫌になるのが怖かったから…。
ケンがひかるに飽きて、ひかるから離れていくことだけが、ひかるは怖かった。
なぜなら、ケンは、気だるそうに、ひかるに話したことがあったからだ。
「なぁ、ケンちゃん、あたしのどこが良かったの?ケンちゃんみたいにカッコよろしけりゃ、彼女、いくらでも、できるんとちがうん?」
何気に訊いたひかるの言葉に、ケンは答えた。
「退屈な女ばかりだったから…退屈なやつはダメだ」
「あたしは退屈やあらへんの?」
「お前は、ノリがいいし、何やってもヒカないじゃん」
ひかるは、その時の、ケンの話がいつまでも、心に残っていたのだ。
フロントに電話して、セーラー服にスーパールーズを届けさす。
「今日は、痴漢に襲われて、抵抗できずに、最後はやられちゃう女子高生って感じな…早く、これ着ろよ」
「うん」
ひかるは、ケンに従い、一生懸命に、女子高生を演じた。
「あぁ…ひかる、最高だよ」
コスプレに夢中になり、超ミニのスカートを捲り上げ。ひかるを何度もイカせる。
最後はひかるの口で果てたケンは、ひかるを抱き寄せ、優しく頭を撫でた。
「良かったよ。やっぱひかるは最高だ!」
ひかるは、そんなケンの無邪気な笑顔を見ると、愛しさが更に募るのであった。
楽しい。
やっぱり、ケンちゃんといると楽しいなぁ…。
ひかるは、心からそう思った。
しかし、こんなことがいつまでも続くはずはなかった。
仕事を止めたケンの蓄えも底をつき、最近はひかるが、ふたりの費用を全部出している。
「ケンちゃん…働かんでええの?」
ひかるは、恐る恐る訊いてみた。
ひかるは、自分が支払うの嫌がっていた訳ではない。
お金なんて、持っている方が払えばいいと思っていた。
しかし、職につかないでいるのは、ケンの為にもならず、ひかるのお金が無くなれば、もう、会えなくなる。
それが、ひかるには嫌なことだったからだ。
ただ、ケンに、金銭的なことで、嫌われたくなかったから、いままで言えずにいたのだ。
「仕事かぁ…そろそろやらないとなぁ…」
嫌われたくなくて、恐る恐るケンに、仕事を始めないかと訊ねたひかるに、ケンは優しい目でみつめ、そう言った。
「頑張ろうよ…ケンちゃんの休みに合わせてあたしも休むよってに…なぁ…」
「そうだな…知り合いにあたってみるよ」
少しも嫌な顔を見せずに、それどころか、ひかるを抱き締めて、キスをした。
長いキスの後、ひかるの背中を擦りながら、ケンは言う。
「ありがとうな…俺を心配してくれてたんだな」
「うん…あたしらは大人だから、ちゃんとした生活を元にせぇへんとな…でも、ケチ言われて、ケンちゃんに、嫌われると思って…」
優しいケンを見上げて、ほっとしたのか、ケンの胸で涙を流すひかるの頭を優しく叩いて、ケンは囁く。
「バカだなぁ…ひかるの気持ちは嬉しいぞ。俺は調子に乗ると、先のことは考えないからな」
「大丈夫や…ケンちゃんは、ちゃんと判ってくれたやん」
「あはは…そう言えば、たまには、俺の香水つけてんのか?」
「毎日つけとるよ。今日だってつけてきた」
「俺と同じ匂いだからな。判らなかった」
「ひとりの時はいつもつけてるよ」
「そっか…嬉しいよ…そのくらいじゃないと、俺を最後に選んでもらえないからな。ハンデだな」
ケンの言葉に、雅史のことを思い出した。
そうだった…。
あたしには、雅史がいたんだった。
ケンと一緒の時は、雅史を忘れて、ケンとの世界に浸っていたのに、急に、ケンの言葉で現実の自分に引き戻されたひかるだった。
ひかるは、ケンに抱かれながらも、ケンと雅史の2人に挟まれて、いまだに、気持ちの整理がつかず、ふらふらしている自分を責めた。
どうしたらえぇんやろ?
ケンに抱かれていると、ケンは唯一の恋人に思えてくる。
しかし、雅史の声を聞き、その手に触れられると、限りない安心感が生まれる。
どうしたらえぇねん?
どちらか1人を決めかねるひかるは、胸が苦しくなり、涙がたくさん溢れて来る。
「どうした?また泣いてんのか?」
「ごめんな…ケンちゃんが優しく抱き締めてくれるよって、また、泣けてきた」
ひかるは、とっさにうそをついた。
ケンは優しく笑いながら、ひかるの頭をくしゃくしゃと撫でる。
どうしたらえぇん…?
2人とも、ずっと、そばにいて欲しい。
2人を愛しちゃ駄目ですか?
2人を愛するは罪ですか?
ひかるは、心の中で、繰り返し、繰り返し叫んでいた…。
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