第4話


夢を見た…。


短時間に熟睡して目覚めることの多いひかるは、あまり、夢を見ない。


そのひかるが夢を見た…。



小高い公園から、港を眺めていた。


右を向くと、雅史がいた。


ひかるの右手を握って微笑んでいる。


雅史の肩越しに、小さな子供と向き合った母親が、線香花火をやっている。


長く、いつまでも消えない綺麗な花火に、子供と母親の笑顔が写る。


ふいに、ひかるは、左手を握られる。


驚いたひかるは、左を見る。


ケンがいた。


切ない目をして、ひかるを見つめていた。


右手は、まだ、雅史に手を握られている。


あわてて、雅史に振り返ろうとした。


その時、上がった、一発の打ち上げ花火。


大きく開いて、消えていく。


打ち上げ花火と共に、ケンが消えた。


雅史を見ると、雅史も消えた。


線香花火が、ポトっと落ちて消えた。


でも、ひかるの両手には、ケンと雅史が手を繋いでいる感覚が残っている。


苦しくなって、ひかるは頭を振った。


すると、両手から、2人の感触も消え、後には、薄暗い、港の風景だけが残った…。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る