第56話 Four-person party
昨夜は深夜の人生相談をしてたから、朝方に寝て、目を覚ましたら昼だった。
起きたら全員寝巻のまま、トークを楽しんでいた。
式部とルクレツィアの朗らかさもあるのか、ベアトリクスが少し笑顔を見せていた。
「…ベアトリクスって何歳?バスト幾つ?」
「起きて秒で乳の話かっ!幾つかは知らんが年は十五だ」
『なっ!!!…そのデカさで十五だと…?』
ハモる私と式部とルクレツィア!
「年齢は一個しか変わらないのにここまで差があるとは…」
「待って月花!ベアトリクスの故郷に、胸が大きくなる実とかがあるのかも!」
「式部、天才か!?」
「さぁ、エルフでも胸が大きくなるドラッグを!カモ―――ン!」
「三人とも私と戦ってた時より顏が必死なんだが…」
「貧乳はステータスだが、巨乳はもっとステータスなんだよ!」
「長きを生きるエルフならそういう薬もあるんじゃないのか?だいたいルクレツィアは幾つなんだ?」
「ニンゲンデイウト十四ダヨ」
「…実年齢は?」
「ヒューマンニアワセルト十四ダヨ」
「見た目より深い闇を抱えてそうだな…」
「ああ、人間が少し年齢を言うのが億劫になってくると『いくつに見えるー?♡』っていうあれと同じ感覚じゃないかな?」
「長寿は長寿で苦労があるのだな…」
お昼を四人で食べて、さぁ、どうしよう…となった時にふと気付いた。
「ベアトリクス、外でフードを被ってるのは知ってる人に会わないようにか?」
「ああ、故郷もそこまで遠くない距離だから、うっかり出掛けてる誰かと会わないとも限らないからな…」
「ベアトリクス苦労してるんだな…」
「ベアトリクス、隠密行動スキルを持ってるなら、久々に里帰りしてみたら?」
「気持ちが多少疲れていてもさ、ママの顔を遠くから見るだけでも落ち着くよ?」
「言ってる事は分かる。だが、見つかった時のリスクは大きい…不用意に近付く訳には…でもそうだな、全てが片付いて消えてしまうのなら最後に一回だけ家族に会いたいかな」
「湿っぽい話になりつつあるから御飯食べに行こう!」
宿屋一階に降り、食堂のいつもの席に四人で座る。
そういえば何だかんだで一番高いものしか食べてなかったから、普通の料理も味わおう。
今日は自腹だしっ!
と、のんびりと雑談をしながら「これからどこに行こう?」と会話していると、急に表の騒がしさに気づき、「続き食べるから片付けないでっ」と言い残して外に出る!
ご飯は残さず食べる派だしね!
表に出るとコボルド族が各々手にこん棒や折れた剣を携え、街の人に襲い掛かっている!
怪我人も気になるが、以前のルクレツィアが悪魔化した件が脳裏をちらつく!
そして、狭い街に対して逃げ惑う人々とコボルドの数が多すぎる!
「二人共!全員倒れたら、特殊な武器を持つコボルドを探すにゃ!」
「え、どゆこと?」
「鎮まれ、者共よ!!!!」
広範囲で
巻き添えで気絶している街の人ゴメン!!
「……っ!無力化か!凄い圧だ!!」
「レッドドラゴンからドロップしたスキルだからにゃー!♪」
「それより武器を確認しよ!また悪魔になりたくない!!!」
「まぁ、まて。召喚イフリート!コボルドのみ焼き滅ぼせ!!」
街の上空をイフリートが一周すると、突然コボルド達に炎が灯され、秒で焼き尽くされる!
『怖っわ!!!』
「あ、今のは褒めて欲しかったなー」
「兎に角、怪しい道具を探して!下手するとまた大惨事になる!!」
四人で手分けして街中を探し、見つけた呪具が二つ。
グリモワールと
コボルドの死体はイフリートの熱で炭化して乾燥した空気と共に塵になっていったので、前回の大惨事の話をベアトリクスに説明した。
「ふーん、知性の低いコボルドが何故か悪魔召喚のグリモワールを持っていた、と…」
「折角の機会だし、その呪具の出処を潰しておきたいんだ」
「そうだね、悪魔は一体ポップするだけでも脅威だし、原因究明に
『お―――!』
気絶した街の人たちを介抱し、ご飯も完食してから目測をつけていた場所へ向かう。
前回はマーメイドの国ウォータリアの北の河を泳いで、ウォータリアの西で悪さをしていた。
現在はウォータリアの遥か北にいるので、川沿いに上空から捜索していく。
「そういえば、月花よ」
「なになにーベアトリクス?」
「あのチョロチョロしてる子猫は危なくないのか?」
「大丈夫だよー!多分冒険者ギルドに登録しているどの冒険者より強いにゃ!」
「……子猫でしょ?」
「コロちゃん、ブレイズスタイルからライトニングスタイル!」
「ににん!」
空中を炎を纏いながら縦横無尽に動いたかと思うと突然雷を纏い、雷の尾を引きながらデカい雷撃を前方に落とすコロちゃんを見て、何とも言えない表情で呆然とするベアトリクス。
「コロちゃん凄いでしょ?」
「ににん!」
「ここ数日で私の中の常識が音を立てて崩れまくってるわ…」
「あ!あれ見て!」
ルクレツィアが指差した森と岩場が混じった場所の広場になっている部分にコボルドらしき集団が蠢いている。
コボルドにも勿論生活がある。
焚き火で何かを焼いて食べている様だが…
「変な動きはないみたいだねー」
「お宝を隠し持ってて、ああいうアイテムも一緒に隠してるとか?♪」
「無くはないが…
「少し上から様子を見よう。出処をはっきりさせて元から断たないと繰り返すぞ」
「うん,暫く偵察!」
夕方が過ぎ、夜になる。
夜飯時になり、盛大な焚火と共に再び肉を焼いて騒ぐコボルド達。
そんな中、上空から見えない森の蔭から荷馬車が二台程広場に運び込まれた。
前の馬車に人が十人位怯えながら固まっているのが分かる。
後ろの荷物はコボルド達が雑に漁って喜んでいる。
「予定が変わるが、殲滅しにいくか?」
「いや、捕虜救出を優先しよう。私かアクションを起こしたら荷馬車が逃げたのを確認後コボルド達を殲滅する。ベアトリクス、さっきのカッコよかったから期待してるぞ!」
「…褒めるならさっき褒めなさいよ…」
「あはは、悪かった!
姿を消し、上から見つからない様に捕虜の元に近寄る。
『皆、助けに来たから声を出さないでね。今から馬の前方のコボルドを一気にぶっ飛ばすから御者さんはそのタイミングで馬車を出して!荷物は残念だけど諦めて!命大事に!ね?』
皆が小さく頷いたので、行動に移す。
「
馬の前方から少し扇状にコボルドを一層し、それを合図に馬車が前方に勢いよく走り始めた!
馬車より注目を浴びる為に名も無き刀の封印を解除し、赤い闘気を纏う!
「グギャギャギャギャッ!!!」
「グギャギャギャッ!!!」
戦闘合図なのかコボルドが叫びだし、馬車が逃げた方に背を向けると、洞窟の中から杖を持ったコボルドが現れる!
まずい!そう思って切りかかるが、杖を地面に打ち付けた瞬間、そのワンモーションで広場の周囲に巨大なサイクロプスが四体現れた!
コボルドと杖が真っ二つになったが、サイクロプスは消えない!
この周囲にサイズがデカいモンスターが沢山いたのはこれの
「皆!これを何度も使わせるとまずいから先にコボルドを倒す!三人は荷馬車の安全優先でサイクロプスを!」
『了解!』
「…
壁を背に周囲を一度に薙ぐと、刀の広範囲軌道上の全てが命を失っていく。
「
魔狼フレキ、ゲリと金髪の戦神が顕現する!
「フレキ、ゲリは周囲にコボルドが残っていたら仕留めて!デッ君は…久々に派手にやりたいでしょ?」
「流石、我が主。色々小さいが心は広いな」
言葉が終わった瞬間ダッシュでサイクロプスに向かうデッくん!
アンニャロ!、言い逃げするとは…後で問い詰める!!!
デッくんならサイクロプス一体位余裕だから、ルクレツィアのサポートからかな?
「南瓜造りのランタン!」
ルクレツィアがオキニのスキルを詠唱する!
出てきたジャック・オー・ランタンは野球のユニフォームを着ている!
サイクロプスに向き、帽子を整えて天高く足を挙げ、ボールを投げる!
……いや、あれはボールじゃなくて
豪速球の南瓜はサイクロプスの腹部に大きな穴を穿ちサイクロプスは
相変わらず謎すぎる技だ…でも生の南瓜硬いしなぁ…当たれば確かに痛そう…
「ニーベルングの指環!」
「召喚!メデューサ!」
「私の前で強さを誇るのは無駄な行為なのだよ!」
式部とベアトリクスと機械仕掛けの神にボロ雑巾の様にされる、大型サイクロプス!
うちのパーティーめっちゃ強いなぁ…
周囲もフレキ、ゲリが見てくれたのでコボルドはもう居ない筈だ。
デッくんとフレキ、ゲリをスキルに戻して皆を呼び戻す。
「どうしたにゃ?♪」
「さっき、コボルドが道具を持ち出したこの洞窟…土で埋まってるけど、よく見ると整備された通路が伸びている…」
「ダンジョンか…?コボルドが巣穴にした所がフォースアイテムの眠る場所だったのか…?」
「うん、多分そう。ギルドに任せてもいいけど、デストラップがあると洒落にならないから一通りみたいんだけどどう?」
「ダンジョンは入った事ないから攻略してみたいな」
「式部とルクレツィアは?」
『やるー!』
目が輝いている!
「まずはコボルドの足跡を辿ろう。何度も出入りしている場所は比較的安全な筈だ」
中は湿っぽい匂いと獣の匂いが混じった様な悪臭が漂っている…
内部の作りは石作りでしっかりしていて、崩落の危険性は無さそうだ。
真っ直ぐ進むと左に通路が伸びていて程なくして部屋が見える。
多くの足跡がそちらに伸びていた。
扉のない部屋だが…念の為名も無き刀をそっと差し込んで見る…
トラップはなさそうだが…
「ストップ!」
足跡が部屋の中に続いているが、床石の中に微かに膨らんだ場所がある。
徐にそこを踏むとギャリィン!と嫌な金属音を立てて部屋の入口を刃物が通過した…
『ひぃ―――!』
「なる程、コボルドの体重では反応しないトラップか!」
「うむ、何かコボルドに体重で負けてるのが腹立たしいがな」
その石をもう一度起動させて、トラップを刀で斬り裂き安全を確保する。
中に入ると、通路同様に自動で壁のランタンが点く様で、中には部屋の壁沿いに沢山の財宝やフォースアイテムが眠っていた。
「どうするにゃ?♪」
「お宝を貰って、先で足手まといになるのも困るし後回しにしよう。冒険者ギルドに渡せば、コボルド達が出した被害の補填にもなるかもしれないしね」
「あとはこのダンジョンがどこまで続いているかだねー」
宝物庫を出て足跡を道なりに辿る。
入口から直線で続く先は螺旋階段の様になっていた。地底にぐるぐると降り、目の前が開けたと思うと、通路が人工物から天然の岩になり、周囲の岩がほんのり光り開けていく。
抜けた先は、とても大きな開けた洞窟で見渡す限りあちらこちらの壁に階段が見え、部屋も沢山ありそうだ。
下を見ると、巨大な地底湖になっている様だが、湖底も岩同様に青白く光り、大きな魚位ならこの位置からでも確認出来る。
「…映えるにゃ♪」
「写真取るよ!」
「写し……何?」
「まーまーまーベアトリクスこっちに固まって!」
四人固まってスマホで何枚か写真を撮り、ベアトリクスに見せると滅茶苦茶吃驚していた!
「空間の切り取り…これは生命力や魂を奪われたりしないのか…?」
「戦前の方々みたいなセリフを!」
「これは私達の世界では普通に普及しているもので、素子を光反応で電荷に変えてRGBで…って、まぁ要するに安全に思い出が残せますってものにゃ♪」
「ほ…ほぉ、高度な文明に住んで居るのだな…」
「ベアトリクス、笑ったらもっと美人だから!下でもう一枚取るからそれまでに笑顔の練習ね!」
って私が言うと滅茶苦茶引きつっていた。
調査だから、飛行で一気に降りずに階段で地道に降りる。
下まで付くと、思った通り湖底の方が光り方が強く、生物もはっきり視認出来る。
何の用途かは分からないが石で出来た小屋、石で出来たキッチン、作業場等もある。
まぁ、まずは写真が先だっ!!
湖を背に自撮りを何枚か撮って確認する。
ベアトリクスはさっきより笑顔だったけど、挙動不審な笑顔だ。
「ねぇ、一人多くない?」
「1,2,3,4,5…5?」
何か背後に映ってる。
振り返ると竜の様な首の長い奴がこちらを捕食しようと口を大きく開けていた!!
『何か出た――――――!』
結晶障壁で一旦凌ぐ歯が鋭いのが金属音みたいな音が周囲に響き渡る!
「皆、崩落の危険性があるし、派手な技は禁止で!!」
皆というより特大のブーメランを一人で投げた気しかしない!!
洞窟探索の前にまずはコイツからだ!
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