第55話 Added friends

 ベアトリクスを何とか説得しないと…我が死ぬのも困るが、ベアトリクスも怪我させたくない!



 突然ベアトリクスが突進して来て、握った双剣で突きと斬りを同時に繰り出した!

 刀で双方を止めるが…

「貴様…貴様っ!!昨日の食事代、滅茶苦茶高かったんだからな!!!」

「よし、われが勝ったら今日は式部の分も奢ってもらうか!」

「奢らぬ!絶対に奢らぬぞ!もう二度とこの悲劇を繰り返さない!」


 命を狙う理由が変わっている!?



流星触メテオ・エクリプス!!」

 接触した対象をえぐり取る技!

「召喚カーバンクル!」

 何か可愛らしいウサギの様なデザインの生き物が流星触メテオ・エクリプスをそのまま跳ね返してきた!


 流星触メテオ・エクリプスを慌てて躱すが、カーバンクルの額の赤い宝石からレーザーらしきものが出ていて咄嗟とっさかわす!

 効果は分からないが当たるとまずい気がする!!


 カーバンクルのレーザーの間隙かんげきって近づきベアトリクスに刀で斬り込むが、双剣で受け止められる!

 そのまま刀を引いて切り上げに変え、双剣を上に跳ね上げると、がら空きになったボディに蹴りを入れる!



「貴様!この期に及んで手加減する気か!」

「正義の為に戦っている奴を殺すわけには行かぬだろ?」


「ならば!手加減出来無い様にするまで!」

 ノーモーションで足元に魔法陣を呼びイフリートを召喚すると、イフリートがベアトリクスを包む様な姿になり、弾ける!


 すると、ベアトリクスはイフリートの鎧を纏った様な姿に変わる!

「これが召装しょうそう…我が一族に伝わる秘儀!耐えきれるか!?」

 爆炎を纏いながら高速で爪を振るってくるのを刀で止めると、リーチが長くなった足で蹴り上げる!



 真上にはいつ生み出したのか巨大な火球が出現していて、火球に突っ込まれた!


 刀の封印解除でまとった闘気があるから耐えられるが…

 あの召装とやら、かなり厄介だ。

 他の召喚獣も纏えるのなら万能に近いのでは?



 突然、炎の中にベアトリクスが突っ込んできて私に蹴りを入れるが、刀の身幅で受ける!

「余裕じゃないか!そろそろいい具合に焦げたと思ったら!」

「すまんな、我には温すぎる」


 爪を振りかざし突進してくるベアトリクスの攻撃を受け止める!

 次いで左手の突きを刀の鞘で跳ね上げる!


 返しにベアトリクスの回し蹴りが我にヒットする!

 召装を纏った分、リーチが長すぎる!!!


 火球から蹴り出されて、少し距離を取ると唐突に火球が収束していく…

 召装が変わっている!

 火球が消えた時には青い召装を纏い、空気すら凍てつく様な圧を周囲に掛けていた…


 回し蹴りのダメージを庇いながら様子を伺う…

「次はこのシヴァで相手をする」

「いいねぇ、丁度暑いと思ってたんだ!」


「アイスニードル!!」

 細かい氷柱を飛ばしてくるのを結晶障壁で止め切るが!

 氷が砕け視界が悪いとこを背後に素早く回り、氷の槍で脇腹を貫いてきた!


「脇腹が空いてたよ?」

「ご飯の恨みは恐ろしいねぇ!」


 槍を刀で斬り、相手と距離を取る。

 気品溢れる美しい鎧だ。

 だがその美しさとは裏腹に強い!


 一瞬で修復した槍を振りかざし、突きと薙のラッシュで攻めてくるが、こちらは脇腹に折れた槍が刺さったままで動きが取りづらい!

 不意に突進してきた時に首を掴まれた!

 が、その腕を掴み返す!

「永久凍土!」

絶対零度アブソリュート・ゼロ!」


 首に回された腕から技が発する前に、腕を凍結させた!

 無理矢理引き剥がして、間合いを取る!



「っつ!冷気でこちらを上回るだとっ!?」

「少しヒヤッとしたがな!」

「ほざけっ!」

 氷柱が空を滑らかに回り、我々の周囲を囲んだ!

 上下にも巨大な氷柱が配置されている!


「私は冷気は平気だが貴様はどうかな?凍てつく時空!」

 ざっと範囲一キロ、我々を中心に球状に氷結する!

 空気中に浮いていた微細なほこりすら凍りつき、周囲の氷とどんどん繋がって行く。


 凍てつく前に、下方に下げていた掌から小さな火を出す。

絶対温度アブソリュート・インフィニティ


 クレーターの中心に撃ち込まれたそれは、たちまち摂氏5.5兆度の熱量に変わり、周囲を煮えたぎるマグマと化す!

 マグマからの放射熱と、急激な温度上昇で凍てつく時空は瞬時に融解ゆうかいした!


 逆属性の熱量に焦り、その場を遠ざかろうとするベアトリクスの腹を蹴り、ノックバックした距離で、周囲の環境に合わせたのか再びイフリートを召装する。


 周囲の温度が上がりすぎたので絶対零度アブソリュート・ゼロで少し温度を下げておく。




「次は外さない。最後の一撃だ!」


 再び召装で何かを呼び出す!

 神話に出て来そうな黒く覇気のある馬の上に禍々しい鎧を装着したベアトリクスが居た。

「この一太刀は次元すら斬る!唸れ刀よ!」

 馬の突進ですれ違いざまに真っ二つにする気だ!


 どんどん距離を詰めて、抜身の刀を我に振り下ろす!


「千切れ飛べ!斬鉄!!」


 激しい剣戟音と共に刀が火花を上げ、しのぎを削り続ける!


「くっ!何故だ…この技は今まで全てが一撃必殺だった筈だ…」


「―――美しいな…紛い物は本物を超えようとする気概がある」 

 ベアトリクスの刀を粉々に粉砕し、一応の決着を付けるためにベアトリクスの脇腹を少し斬り、痛みで気を失わせると、召装と言われる召喚獣と一体となる技はゆっくり解けていった…




「終わったぞ。ルクレツィア、式部の方はどうだ?」

『やっぱり針が原因だったみたいで、今そっちに行ったよ!』

 聞き終わるや否や式部が抱きついてきた!


「……腹に槍刺さってるけど怪我はない?」

「唐突に矛盾を突き付けられたが大丈夫だ、これまでもそうだっただろう?これからもそうだ」

「御免ね…不覚だった…本当に御免…」

 月光の相愛で腹の傷を全快させてくれる式部。


「謝る必要等無い。それよりもこの女の誤解を説かねばな」

「うん、月花が破壊者とか誤解もいいとこ…」









   ……負けたのか…

    あの破壊者に…

  勿論奥の手はまだあるし、

   勝ちなんて与えない。

 だが…本当に害も感じない…


 今、無害の者をあやめていいのか?






「ん…んん…」

「お、ベアトリクスが起きたぞ!」


「ママ…今日のご飯は何………え」

「今日は二日連続最高級お肉料理のコースと最高級ドリンクだぞー!♡」


「な!貴様ら!」

『あっははははは!』

 横のベッドで横並びになって笑う我々。


「傷、全回復しておいたぞ」

「洗脳も解けたにゃー♪」

「見ごたえのある闘いだったわー!」


「そうか、負けたか…」

「あー、引き分けでいいじゃん!それより、物は相談なんだが…」


「何だ?懐柔なぞされぬぞ!」

「お前は、世界を滅ぼすという私を殺して世界を護りたい。私は自覚のないまま殺されるのは困る」

「…そうだな」


「そこでだ。式部、ルクレツィア、指環を貰えないか?」

 二人から指環を預かり、一つをベアトリクスに渡す。


「これは…」

「付けている相手をイメージして指環に集中すれば光が相手の位置を示す」

「勿論私も付ける。これでお互い何処にいても見つけられる。味方とは言わない。仲間にならないか?」


「仲間…」

「勿論、私に破壊者の可能性を感じたら殺せばいいし、逆に私達がどういう旅をしているのか知ってほしい。理解してもらえず無駄に死にたくはないしな」



「とりあえず奢りの最高級肉料理コース食べにいこ!」

 無理矢理手を取って下の食堂に四人で座る。


 美味しい食事は人を笑顔にする。

 昨日と同じコースとドリンクを四人分取って、今まで皆無だった談笑に花が咲く!



 ……と、さっきまで思ってたが、式部は私とベアトリクスが指環を嵌めたのにジト目ご立腹だし、ベアトリクスは突然の仲間宣告+負けたから奢りと言うのに不平だったり不満だったりしていて、私とルクレツィアだけが機嫌よくご飯を食べていた。


 まぁまぁ、二、三日一緒に旅したら馴染むだろう…多分。




「おい、寝食も共にするつもりか!」

「高級な食事六食分とか痛かったでしょ?」

「私達、基本三人パーティーだから四人部屋を取るからベッド余るし、気にしたら駄目にゃ!♪」

「月花にセクハラしない限り安全だから大丈夫だってー!」

 遠回しな示唆にサムズアップを送る式部と、サムズアップを返すルクレツィア!


「ま、食事代泣く程痛かったし有り難いけどね。あんたの人格をを見極めるのにはいい距離だし」


「ところで何でそんなエロい服着てるの?」

 ルクレツィアの質問に大笑いする私と式部!


「……エr…いや、もっと伝統的なのもあるんだが、イフリート召装だけは暑くて駄目だから…」

「シヴァは大丈夫なのー?」

「いや、寒いけどな…けど流れとして暑くて堪らない状態でシヴァに繋ぐから、内側に多少温かい空気が封じ込められてな」


「イフリートからシヴァ…丁度いい、と」

「メモんな小娘!」


「さっきママって言ってたけどママっ娘なの?私もママっ娘ー♡」

「ああ、ママは大好きだ…もう会えないが…」


「亡くなられたのか?」

「いや、健在だよ。私はあの滅びた世界から来てしまった。つまりこの世界には二人私が居るという事。こんな異常事態を話す訳にも行かないし、違う次元の私が居る事でどの様な弊害へいがいがあるか分からないから…」


「もう一族の元へ帰れない…か。辛いな…」

「あんな事が無ければ…いや、今は早く原因を突き止めないと」


「原因が私じゃなくて、その事態が解決したら…どうするんだ?」

「さぁ…私も消えてしまうかも知れないし、そうじゃないかも知れない。未来は杳として不確定なのだから」



「よし、五人目はベアトリクスだ!」

「最近の戦隊だと何色なんだにゃ?♪」

「シルバーとかゴールドもいるよねー!」


「戦た………何??」

「平たく言うなら、本格的に仲間入りさせようという魂胆だにゃ♪」

「私の世界では変身する正義の味方が人気なんだ!まるでベアトリクスみたいだよ!」


「褒めても、失った路銀の恨みは忘れないからなっ」

「今、怒ってる事が世界より路銀の事だった――――――!!!」



 ――――――後に、彼女が戦隊ではなく、ライダーにドハマりしてしまう事をこの時の我々は知る由も無かった……







 ―――その夜


 この街は城下町みたいな規模では無いのと、クレーターの形状故か周囲に沿う様にしか建物が無かった。

 故に静まるのが早い。

 遠吠えするわんこや喧嘩しているにゃんこの声位しか聞こえない。


 こういう時に限って眠りが浅い。

 仕方ないので、少し散歩にでも行こう。

 そういえばパバもよく夜中に外に居たなー

 反射的に小銭を探そうとポケットを探るが、小銭があっても自動販売機がない。


 口寂しいので、食堂のマグを一つ借りてきて、外の木の周りに設置されているベンチに座る。


「清浄なる湧水」

 唱えると回復効果がある水がマグの底から湧き出す。

 亡くなった友達・フィルが最後に送ってくれたスキルだ。

 このスキルさえあれば過酷な状況でも水に困ることは無い。


 一口飲んで、夜風に当たっていると、まばらな人通りの中、タトゥーがびっしり入った三人の男が通り掛かり、すれ違いの男にわざとぶつかって脅しまくっている。


 滅茶苦茶うるさい上に、男性が可哀想だったので、割って入った。

「まーまーまー、夜中だし大声響いてますしこっちの人涙目になってますからやめしょ?ね?」


「あ、クソガキが割り込んで来るんじゃねぇ!」

「こいつは金持ちの家のボンボンだから、使い切れない位の金をいつも恵んでくれるんだよなー?……なぁっ!?」


「ヒィッ!」

「お兄さん、私に任せて逃げていいよ」

「ア、アリガトウゴザイマスッ!」

 消えそうなか細い小声で滅茶苦茶怯えてたな…聞くに常習犯か…



「邪魔すんなやゴルァ!」

「パジャマ一枚で喧嘩売ってくるからにはそれなりの覚悟はあるんだろぉなぁ!あ?」


ひざまずけ!」

 竜の威圧ドラゴンアイを掛け続け、男三人を跪かせる。

「がっ!!!」

「何だ…これ…」

「動けねぇ!」

「何でその年でいじめっ子みたいな事するの?貴方達も働いてるんでしょ?」



「生まれで差が付くのも納得いかない!何でこんなに差が付くんだ!」


「だーからスキルがあるでしょ?不公平はスキルで何とかすればいいじゃん!」

「助けになるスキルは生まれたよ…けど、生まれが金持ちと生まれが貧乏ではスタートからの差が埋まらねぇんだよ!」


「だからってお金を脅し取って、不公平を埋めようってのは間違いだよ?」


「他にもあるんだよ…」

 三人の身体が大きくなり、狼の姿になる!

「そうか、ウェアウルフか…」


「……怖くないのか?」

「でも、同じ人間でしょ?大丈夫!」

 にこっと笑って、竜の威圧を解いて、再びベンチに座る。

「ちょっと座りなよ、全世界から注目されてるこの圧倒的美少女が話を聞いてあげよう!」





 ―――朝になったじゃん…

 同情してお話聞いてたら、泣きだして、慰めるの繰り返し…

 朝方泣きながらスッキリした顔で帰って行ったし、もう脅し行為はしないで、スキルで幸せを模索するっ言ってくれたから良かった…


 寝よ…流石に眠い…

 こっそり部屋に帰ったら、案の定式部が私のベッドで寝ていたので、そのまま一緒に寝た。






 ―――少し外の光景を見ていたが、普通の女子だ。

 良識も優しい部分もあった。

 一方的に襲っておいてなんだが、破壊者と決め付けるのは尚早かもな…

 側でもう少し様子を見るか。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る