第51話 connecting link
―――その日、起きたのは昼過ぎだった。
式部がまたベッドに潜り込んでいたが、きっと私の体調が心配だったのかもしれない。
二人とも大活躍だったからゆっくり寝かせてやろう。
カロリーバーとミネラルウォーターをこそこそと食べていると、二人とも起きてきた。
「ううう…、おはよー」
「おはよーにゃ…」
「二人とも流石に疲れが抜けてないねー」
「私は薬の調合の手伝いで…腕がパンパン」
「私は…スキル使いすぎたにゃー!」
「その頑張りが多くの人を救ったんだよ!二人が頑張って無かったら、犠牲者が増えていたかも知れない!胸張っていいんだよ!」
「それは月花も…ミイラ取りがミイラになりかけてたのに、しっかりやっつけちゃったね!」
「ミイラになる前にこの事件の親玉が来て、そいつと戦ってたら雷竜が来たから
「まじか!しかも雷雨だったのに…お疲れ様だにゃ♪」
「ちょっと色々あったけど、後で報告するね!その前にグレース…報告を先にした方がいいのか、回復を待って本人を連れて帰る方がいいのか…」
「ダイヴ・アウトしたら恐らく会社に戻ると思うから、向こうで引き続き治療してもらうとかは?」
「グレースが大丈夫そうなら、それで行こうか!」
負傷者が収容されている宿屋へ行き、グレースを探すと、丁度顔を洗っている処だった!
「グレース、体調はどう?」
「
「金髪アメリカキャラ!なんか、キャラで負けそう…」
「何で張り合ってるんだアナタはっ」
「わぉ、エルフのお嬢さんね!可愛いねー!」
「むぐ、ハグが強い!え、ちょま!グレースって何歳?」
「十五よ?それがどうしたの?」
「私、222歳で胸負けてるんだけど…」
「ま、エルフは華奢だからねー…胸は式部がぶっちぎりトップなんだがなっ!」
「やー!そんな事ないよー!もー月花ー!♡」
式部がハグハグしてくれたので、巨乳への怨念は今は忘れよう!
「それでね、グレース!私達グレースのボスからの依頼で助けに来たんだけど、ダイヴ・アウトして直ぐに治療が受けれそうな環境かな?」
「
「うん、無理しないで!武器は纏めてこの宿屋のホールのテーブルに置いてあるから持って帰ってね!」
「本当に有難う!何か借りばかり溜まっていくわ…」
「今度四人で…コロちゃん入れて五人で女子会しよ!それで貸し借りなし!」
「ににーん!♡」
「
グレースがダイヴ・アウトするまで、無事に帰ったかどうかしっかり見届けた。
仕事という事も勿論あるけど、友人の事だから最後まで見届けたかった。
さて、あの医者にもお礼を言っておかないと。
この宿のすぐ近くなので歩いて緑の屋根の建物を訪ねて行く。
コンコン!
・
・
・
コンコンコン!
「なんじゃ、狐か!」
「違うよ!居てるならドア開けて!」
「この地は人が立ち入れぬ禁断の地…」
「昨日めちゃめちゃ居ただろー!てか、このやり取りしないと出てこないのどーにかしてー!」
顔半分だけドアの隙間から出した。
「直射日光はお肌の大敵なんじゃぞ…メラニン色素増えちゃうんじゃぞ」
「思春期の女子か!…それより、昨日は有難う御座いました」
「お前の為にした訳じゃない。頼って来る人が居たら助ける。それだけだ」
「おっかしーなー…確か私も毎回頼って来てるんだけどなー…」
「ここから先は料金が発生します」
「
「…気を付けて帰れ。医者の家に来ないというのは健康の証だ」
そういうと医者のおじいちゃんは顔を引っ込めてドアを閉めて施錠を三個位した。
「あれがお医者さんなりの
「これじゃ、私が厄みたいなんだけど…」
「あ、帰りにアクラドシアに寄ってから帰りたいんだけどいいかな?」
二人共、二つ返事で聞いてくれた。
勿論、あの三匹の魔獣の子に会いたかったからだ!
城と街の周囲に広がる巨大な湖、その湖に所々設置されているステージの端に立ち、手を三回叩くと、首の長い甲羅のある魔獣三匹がピョコッと水面から顔を出して、ステージに上がってくる。
「ピィ!」
「皆元気だったかー!いい子だねー!」
長い首を擦り付けて来るあたりめっちゃ可愛いが、謎にコロちゃんにも懐いてて自称ママとして凹むっ!
「今日は皆にプレゼントがあるんだー!」
カロリーバーを食べさせながら、三人の首に色違いのネクタイを通す。
「蝶ネクタイじゃなくてネクタイなのがお洒落だね!」
「
「おおお!…という事はもう名前も決まってるにゃ!?♪」
「…考えてるんだけどね…理想が高すぎるのか中々決まらなくて…」
「全然まだだったー!♪」
「凝った名前付けるよりシンプルで覚えやすい方がいいよ?」
「おおお、ルクレツィアからの良い助言!」
「シンプルかぁ、ネクタイが赤・青・黄だからレド・ブル・イロにしよっかな!」
「いいじゃん!可愛いと思う!月花はイエローをエロにすると思ってた!」
「そんな18禁ぽい名前付けるかーっ!」
「よし、家族も増えたし、皆で美味しい物タイムだ!」
「家族?♪」
「式部、妖精の鞄の串、式部チョイスで十四本貰っていい?」
「はーい、でも多すぎない?」
「大丈夫!式部もマッくん呼んで!」
「にゃるほど、そういう事ね!
「機械仕掛けの
金髪の機械仕掛けの神、魔狼が二匹、鴉が二匹、そして衣装が変わり、黒髪で身体にピッタリのドレスで戸惑いながら出て来るアプサラス。
数にも
「そのエロそうな女の人誰!?」
「ああ、昨日殴り合ってたんだけど、故あって私のスキル化したのー」
「てっきりエロい酒場に居る、朝帰りする系のお姉さんかと」
「色女みたいに言うなっ!」
ツッコミが強めな辺り親近感湧くなー。
「アプサラス、これが私達の家族だ!今日からお前も家族だよ!スキル化して食は自由に、ステータスは固有技として残してある。このワタリ魔牛のジューシー肉串食ってみろ!」
無理矢理口に突っ込んでやる!
「……美味しい、生まれてからこんな美味ひい物食べたことない…」
「式部の美食発見力はヤバいからな!まだあるぞ!」
レド・ブル・イロを始め皆にも式部厳選食コレクションが配られる。
「レド・ブル・イロは串ごと食べちゃ駄目だよー!」
慌てて串を外そうとするが、コロちゃんが食べながら教えてくれていた!
「ほーらーアプサラス、泣きながら食べても美味しくないから!」
「うん…言っとくけど、私、人間の生気、誰も吸ってないから…サキュバスに頼まれてスキル使っただけだから…」
「…そっか、お腹空いてたんだな、よしよし!アプサラスって名前言い
「サラ…有難う…こんなスク水が似合いそうな体型の主が出来るなんて…」
「泣きながら
「うむ、主は胸も身長も身体的魅力も伸びない悲しい生き物だからな…」
「あら…そうなの…可哀想…」
デッくんとサラがここぞとばかりに
「兎に角、色々小さいが…主としては及第点だ」
「じゃ、当たりかなー?これから色々楽しませてもらうか!」
照れ隠しか、デっくんとサラが次はアクラサーモンの塩焼きを食べ始めた。
「そういえばサラ、私の国の用語をちょいちょい話すけど何処で覚えるの?」
「ああ、あれは貴方達の世界なの?たまにこちらの世界にクラックと言われる時空の裂け目が出来てね、それがそちらの世界に繋がってるのよ」
「え、それはクラックがあれば、こちらからヤバいのが来るって事?」
「いや、クラックは大きい物が出来なくて、せいぜい人間程度、己の形を変形出来る者は通れる。そもそも知性の低い者はクラックを恐れて通ろうとしない」
「それでサラも来た事があるんだ?」
「何回かねー…でもクラックがいつ消えるか分らないから、少し観光して帰る位かな?一回帰れなくて長居したけど、そちらの世界の巫覡と呼ばれる軍隊は強いからな」
「軍隊じゃないっ!うちのママが一応トップ巫覡だったよー」
「その強さ、通りで…」
「向こうでも何か美味しい物食べよ!」
「浮気の波動を感じる…」
「ちゃうわ!式部もルクレツィアもちゃんと誘うじゃん!」
レド・ブル・イロにあったかほっとたこ串を食べさせながら突っ込む!
「我輩達も一度出掛けてもいいか?」
「デっくん、マッくん珍しいにゃ!どうしたの?♪」
「いや、登場時に上半身裸で女性にドン引きされる事が多くてな。そろそろ服を着ようかとな…」
「そこそこ切実な話だった!!!」
「それって戦闘したらまたビリビリになるんじゃない?」
ルクレツィアがワタリ魔牛を食べながら疑問を呈した。
「いや、スキル化してしまえば、破損しようが燃えようが再出現時に元に戻る」
「スキル化…月花、サラを
「あー…やっぱその話になるよねー…」
少し長くなるが入手の話から、捨てようとして置いてたら突然助けてくれる話、種の事件や昨日の事件等関連がないけど、突然スキルが状況に応じて変わる話…
「意思を持つスキル…ギフト…月花の意思を反映するレアスキル…謎だにゃ♪」
「いずれにしても得体がしれないよね…一回月花パパの意見を聞いてみてもいいかもね?今まで助けてくれたものが、突然不具合を発しないとも限らないしね?」
「ルクレツィアの言うとおりだね、一回聞いてみる!」
「ちょっと、あんたのパパってイケメン?」
「サラはパパがいない時にしか出さないからっ!」
皆が各々重い通りに楽しんでいる。
背中にレドが乗って動けないルクレツィア、イロが膝の上に乗って戸惑ってるサラ。
なんか喧嘩を始めるデっくんマッくんとフレキ、ゲリ。
私もブルの甲羅の苔を取っていると式部が歩いてきた。
「家族って、本当にいいにゃ!」
「うちも大家族みたいなもんだし、賑やかなのが好きなのかも?」
「そうだにゃ!あ、婚姻届持ち歩いてるからいつでも言ってね♪」
「早い早い早い!式部はうちのママかっ!」
「六花ちゃんもしてたの?」
「うん、書き損じても大丈夫な様に束で持ってて、超早い時期からジェクシー買ってたって」
「ああ、花嫁すぎるバールのような物が付録で付いてて未だに語り草になるあの雑誌にゃ♪」
「花嫁すぎる拳銃のような物も付いてたって!」
「雑誌の付録の検閲の緩さ!♪」
「ねぇねぇ、あんたの事なんて呼べばいいの?」
サラがご飯に満足したのか、私の所に来た。
「この世界では名前がバレない様にレクスかな?普段は月花だけど…レクスが
「おっけーマイクロ貧乳ね?分かったわぁ!」
「サラ、絶対喧嘩売ってるだろ?こう見えても多少はあるんだよ!」
ジロジロと人のボディを見るサラ。
「……フッ☆」
「はーい、そこの月花!仲良くなったばかりのスキルと取っ組み合いしなーい♪」
「がんばれー背の高いレクスー」
「まけるなー爆乳のレクスー」
「そこの機械神ズ!心が
少しカオスになってきたのでスキルを一旦戻した。
レド、ブル、イロは私達にすりすりして家に帰っていった。
三匹とも見る度に大きくなって嬉しいが、お母さん位のサイズですりすりとか甘噛みされると命が危うそうで今から戦々恐々としているっ!
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