第50話 receive life
「手加減はせぬ、本気で来い!」
「はああああぁぁあっ!」
両手の爪を伸ばし、高速で襲い掛かってくる!
魔槍グングニルで振り上げた右手を打ち払うと、すかさず振り上がってくる左手!
魔槍を回し両手を打つと、爪が砕けてサキュバスが一旦下がる!
「くっ…馬鹿にするなぁぁぁぁぁ!!!」
両手の爪を再度伸ばし襲い掛かってくる!
魔槍の先を勢い良く振り、両手の爪を一気に折ると、魔槍を気にせず突進して胸を穿いたまま、我の身体を掴み、生気を吸い取る!
「ああ、お前は強かった」
「ただ、生気を吸い繁殖する我が種族…その生に意味はあるのだろうか…」
「テリトリーが被ると衝突してしまうが…皆生きていていいんだ」
「ああ…そう…なのかも…な…」
サキュバスは魔槍が致命傷となり地理になって消えた……
「最近はモンスターの食や命が
後ろでスキルガンで待機してくれていた式部がやりきれない表情を浮かべる。
「ああ、だが、立ち止まる訳にも行かないんだ。それよりここにいると生気が奪われる。飛行結晶で担架を作って乗せるから全員あの医者の処に連れて行ってはくれぬか?蜘蛛の銀糸で繋げて動かし易くする」
「え、月花はどうするの?」
「……まだいるんだ…サキュバスが二体共死んだのに武器がまだ壁に張り付いている。生気の吸収も止まっていない」
「……ルクレツィア、デッドエンドを手伝ってくれ!この数の手当は人手がいるし、このままいると二人も危ない!」
「わ、わかった!レクス気をつけて!」
出来たてのウインナーの様に浮いて繋がっている担架を、式部とルクレツィアが飛んで運んで行く!
「……ふーん、感がいいのか、殺気を感じ取ってるのか…面倒臭い子ね」
翼を背中に生やし、王冠の様な飾りを冠し肌の露出の多い服を着た女が、崩れた天井から降りてきた。
「歓迎してやるぞ?すぐに追い返してやるがな」
「いい武器じゃないかぁ!主武器を持たずやってくる奴は初めて見たぞ?」
「良い武器であろう?どうした、主武器かどうかを確認するとか慎重ではないか」
「力無き正義は無力なり」
魔槍グングニルさえ、スキルの影響を受けて壁に吸い寄せられ張り付いてしまった!
「さぁ、後は体術やスキルかしらぁ?このアプサラス様に勝てる見込みがあるかしらぁ?」
アプサラス…サキュバスよりも上位の存在だな…伝承では水の精、人を堕落させる神…
更にスキル
「
光は避けられまい!
そう思って右手で放ったのだが、右手の右側に予め避ける予定だったのか、
右手は構造的に外に反射的に動かすのが苦手に出来ている!
そして何故その方向なのか?
まだ負傷者が繋がれて運ばれている最中だった。
つまり人質だ。
「負傷者を更に負傷させる…追いチーズとか追いイクラみたいに追い負傷って言うんだって?」
「だから、最近の魔物はどこでそんな情報を仕入れてくるんだ…」
「まーまーまー、そんなこと言わず!負傷者運搬中にスキルに巻き込まれるリスクを負ってまでやれるかな?武器もない、スキルはどうせ派手目のぶっばなすタイプが多いんだろう?」
「ふむ、何もかも巻き込んで潰してやるのが得意なんだがな。だが、
「なら、武器で来るか?スキルの呪縛を溶けずに無手、槍も先程壁の飾りとなったな?」
…人差し指と中指をアプサラスに向ける。
「行け」
張り付いていた名も無き刀がアプサラスの腹を貫通する!
「かっ……何故だ!!!」
「この刀は特別なのだ。そこらの岩に刺さってる伝説の剣風情と同等に語るな」
アプサラスの腹を貫通して帰ってきた名も無き刀を右手で受け止める。
魔槍グングニルも戻ってきたので次元の狭間に収納した。
「さて、腹に風穴が空いた処で、まだやるか?」
その言葉が終わった瞬間、天井を突き破り外へ逃げる!
負傷者が丁度搬出された処だったので安心して外に出る!
森の上まで出ると、アプサラスが待っていた。
治癒能力があるのか腹の傷は塞がっていた。
外はいつの間にか雷雨になっていたが、戦闘中に気にしていられぬ。
「よく着いてきた、だが今宵この時この空に散るがいい!我らも負けてられぬのだ!」
「こちらも同じだ。食料になってやる訳にはいかぬ!」
アプサラスが爪を長く硬質化して襲ってくる!
「
名も無き刀の突きを爪で受ける!
爪は折れるがすぐ再生する様だ!
空いた手で向こうも突きを放ってくるが…
「
空いた手で空間に激震を発生させアプサラスの左手をボロボロにする!
だが、左手を犠牲にして蹴り脚の爪を伸ばし我の腹に何本か貫通した!
すぐに再生させて、スキルで肌を硬質化させたのか?肌の色が変わり猛襲してきた!
名も無き刀で肌を斬りつけてみると、矢張り容易には斬れない強度になっている!
ここぞとばかりに猛ラッシュをかけてくるアプサラス!
避けれない事はないが、過擦り傷が蓄積していくが、相手は決定打を与えられていない!
次の瞬間、二人とも戦闘を忘れて北の空を向く!!
雷雨の中、何かが空を迫ってきている…
「一旦休戦だ、アプサラス…」
「ああ、この圧…ヤバいのが来てるな」
暫く様子を見ると、遥か遠くから黒に近い黄色の龍がこちらに向かってくる…
優雅な羽撃きとは裏腹に雷を纏い凶悪な表情でこちらを
『貴様達…心地良い雷音の中、無粋な音を鳴らしおって…我に対する敵対心故の所業か…?』
「あー、すまぬ雷竜よ。今こっちの露出狂と
「誰が露出狂かっ!成長期真っ只中にも関わらず、モノリスみたいな平坦なスタイルしている貴様に言われたくないわっ!」
「にゃんだとー!そのデカい乳も年食ったら地面まで垂れるんだろうが!晩年はそれを両手で回して主武器にするがよい!」
「何だとー!貴様なぞは永久に育たんまま、まな板やらプレパラートやら平べったい物の代名詞を欲しいままにして余生を過ごしていくがいい!」
「やるかーくそビッチ!」
「やったらぁクソチビ!」
『もういいから二人とも滅せよ!』
キレた雷竜の東部の長い角の間から強烈な雷が発生し、雷撃をこちらに撃ってきたがノールックで壁を作りシャットアウトする!!
「デカ乳、喧嘩は後だ!」
「うむ、先に老いぼれ竜を潰すぞ!」
雷撃を出し終えた雷竜にスキルを放つ!
「
同時に雷竜が
「
雷竜の身体から光の珠となり生命が次々と吸収される!
「精魂残らず全て…吸い尽くしてあげる!」
「貴様程度に吸いきれる生命ではない!」
落雷が直撃し、アプサラスが落下していく!
真上に障壁を張り、突進でアプサラスをキャッチし、
一瞬で目を覚ましたアプサラスが飛行で体制を整えた!
「……甘い子ね、敵に回復なんて」
「この後、本気の殴り合いが控えてるのだ、先にくたばるな」
「そうだったね!」
同じ雷撃の直撃を食らわない様にアプサラスの頭上に障壁を固定すると、加速し背後に回る!
なる程、挟む気か!
「
空中を某エナジードリンクのマーク顔負けの三本の爪が疾走し、顔に命中した!
「
その程度で折れる刀ではないが、
『私に傷を付けるとは、
「違うな、強者が弱者に勝つ等、赤子でも分かる道理であろう?」
『よく回る舌だ』
刀から手を離し、後方に飛びつつ
雷竜は名も無き刀を口から捨て、長い首をうねらせて
後方で尻尾を避けながら生命の吸収を続けているアプサラスの攻撃が聞いてるのかも知れぬ!
『遊び飽きた、潰えるよ』
雷竜が翼を大きく広げ、構える!
『業雷』
「刀よ」
見渡す限り全ての空から降り注ぐ雷が我らに落ち……ず、捨てられ落下した名も無き刀が雷竜の腹を下から貫通し、真上で避雷針の如く雷を全て受け止める!!
『むう…ぐっ…』
「私の刀が貴様の雷を全て吸収したが……偉大なる雷竜様なら纏めて喰らっても涼しい顔で受けるのであろう?」
『待て!』
極限まで帯電した名も無き刀が雷竜の背中に突き刺さる!
その瞬間溜め込んだ雷が雷竜の全身に流れ、強烈な旋光が周囲を包む!
過剰な雷を全身に受け、雷竜は黒焦げになり、焦げ臭い匂いが周囲を漂う!
「よし、やったぞ!意外とやるじゃな…」
アプサラスが前に飛んできた瞬間、雷竜が最後の力でアプサラスをその顎で砕き、そのまま落下していく!
「アプサラス!!!」
地響きと共に森の中に墜落した雷竜を追い降下する!
念の為、雷竜の首を介錯し、アプサラスを口から引き出す。
「おい!しっかりしろ!アプサラス!」
「……くそ…竜の生命力を舐めてた」
「今、回復してやる!踏ん張れ!」
「無駄だ…致命傷だ…それより殴り合う相手を
「命がなきゃ殴り合い出来ぬだろうが!生きる事を諦めるな!」
「サキュバスらも言っておったが…生気を奪うだけの存在…何故そんな種族に生まれてしまった…」
「生命は全てそうだ!命を頂き、悩みにぶつかる度に悩んで、疲れて寝て…それの繰り返しだ!」
「次、何かに生まれたら…今度こそ殴り合うから…覚えてなさい…」
力なく差し向けられた指を思わず握る!
「死ぬな――――――!!!!!!」
その時、以前貰った何も書いてないバグスキルが、目に表示される!
【 】
対象をスキル化する
「……我のエゴかも知れぬ、だが貴様は生きてくれ!」
―――雷雲が通り過ぎ、晴れ間が見えた。
急いでガルワルディアへ飛んで戻り、空から医者の元へ戻ると、大量に人が往来に横たわり、あの医者とルクレツィアが忙しく薬を作っている。
式部はスキルで回復し回っている!
「式部!」
「月花、無事で良かった!」
「具合は?」
「生命の安定と回復スキルでは生気を補うのは無理らしくて…今、自らの生気を体内で生産し高める薬を作ってもらってるの!」
「もう夕暮れだ、長期戦になるなら毛布もいるな!自警団に借りてくる!」
「それなら大丈夫ですよ!もう手配しています!足りない分は近所の方からお借りしています!」
昼に献花をお願いした自警団の方だ!
「有難う御座います!」
辺りを見回すと、既に亡くなったのか顔を布で覆われている人もいた。
グレースはどこだ!?
いた!
民家の壁に座ってもたれて何かを飲んでいる!
「グレース、良かった…」
「
「まずはしっかり休め!体力戻ったら美味しい物でも食べに行くぞ!」
「分かったわ!」
「おい、そこのチビ!出来た薬をスプーン1杯ずつ生存者に飲ませていけ!」
「はい!」
一人でも多く!助ける!!
道端だが焚火も炊いて、一人一人様子を見ていく。
底冷えが酷く感じたので式部と手分けして
幸い雨は降っていないが、念の為上空に結界を張り、雨が当たらない様にしておいた。
皆の介護の甲斐が合って、明け方頃には大半の人が目を覚ましてくれた。
それでも、治療の甲斐も空しく何人かの人は…帰らぬ人となった。
夜が明け、日の出が見えてきた。
自警団の方々が、容体が回復した方をこの近くにある大きな宿に移し、亡くなった方は順次身元の照合をし家族の元へ引き渡されるそうだ。
「はい、月花。ルクレツィア、お疲れ様!」
式部がカップに具が沢山入ったスープを入れて持って来てくれた
「有難う、式部!」
「すまぬな」
「月花が封印解除したままだっ!」
「ああ、屋敷の罠に相当持っていかれてたからな」
「薬…飲んだよね?」
「いや、まだだが?負傷者を優先した痛い痛い痛い!」
式部に頬の引っ張られたので渋々医者の元へ薬を貰いに行く。
「医者よ、薬は残っておるか?」
「まだ沢山あるぞ、一握り位水無しで飲んでおけ」
「
「そんな事は考えても切りがない。切りは無いが抗えとは言わん。命は等しく大切にせよ、抗うのはその次だ」
「そうだな…民を助けてくれて有難う」
「…不本意だがなっ」
「本意だろうが!医者止めてしまえ!」
薬を貰ってくると、式部がミネラルウォーターを持っていたので貰って薬と飲んだ。
カップスープを食べ終えると、後は自警団に任せて三人とも宿へ仮眠を取りに帰った。
一晩中動き回ったので、三人とも疲労で泥の様に眠った。
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