第45話 Hungry strays
「いらっしゃいませー!ご一緒にポテトやバステトは如何ですかー!」
「んー、当店はポテトも、エジプトの猫の女神様も売ってないぞー♪」
ルクレツィアが超人気カフェ店「オアシカ」でバイトを始めた。
式部ママである小町ちゃんが店長だから無理矢理ねじ込んでもらったが…ここで接客やら言葉遣いを学んで欲しいと思って!
勿論、強制なんかではなくアニメグッズに投資したいルクレツィア本人の希望だ。
物陰から様子を伺ってはいるが、見る限り彼女は覚えが抜群に良いので滞りなくレジ業務を
平日はここでバイトをして、日祝日はアナザーバースで戦闘訓練。
まるで休日を貰えないブラック企業の社畜の様な働きぶりだが、成長が見える様なら十分に
ちなみに今日は祝日なのだが、オアシカスタッフの欠員が出てしまい、目と鼻の先にいて拉致りやすいルクレツィアが緊急で駆り出され、レジを一生懸命に頑張っている。
エルフの御姫様が、働いて得た初任給をどう使うか興味が湧くが結果はまだ先なので、それはさておき私と式部は秘密基地の掃除をしている。
普段は転送装置に一直線で中は使わないけど、ベッドや救急箱、戦利品も置いてあり、駆け出しの頃はアナザーバースから帰る度にお世話になったものだ。
ただ、たまに寝転んでホコリが舞ったり、雨と埃で床が不衛生だと嫌なので布団を干したり薬の消費期限切れを見たり掃除したりと、のんびりと手入れをしている。
「暫く掃除してないと、そこそこ汚れてるよねー」
「入り口が特に…雨の時そのまま入るからにゃー♪」
「…雨に濡れた靴で入っても床が汚れない!みたいなスキルないかなー?」
「スキルじゃなくても玄関マットでいいにゃ♪」
「雨が止むスキルとか?」
「天候操作とか超高額にゃ♪」
「そもそも雨が振らなくなるスキルとかは?」
「日本の農作物に甚大な被害がっ!♪」
「矢張り掃除の手間を省く為に天候を操作する方が難しいか…」
「
塵取りでゴミを取りつつ、
「うぉう!誰?」
「お嬢ちゃん、ここは入ったらダメなとこにゃ♪」
「そうなの?」
「どこから入ってきたか分からないけど…迷子なのかな?お家は近くなの?」
「うんうん近いよー!お腹が空いたから、ついうっかり入って来ちゃったのだよー」
「ここが何の食べ物屋に見えたのかめっちゃ気になるけど、お腹空いてるの?何でもいいなら何か持ってくるよ?♪」
「わーい!有難うだよー!」
式部が下に降りたので、女の子の横に座って髪を撫でてあげると目を閉じて気持ちよさそうな顔をしたので調子に乗って頭を撫でてると、式部が戻ってきた。
「…こんな昼間から堂々と浮気を…」
「ないないない!」
「後で問い詰めるとして、これどうぞだにゃ!」
三人分のストロベリーフラペンとラップサラダを持って来てくれたので休憩にする。
「おおお、これは食べた事ない!有難うだよー!」
「因みにこのレシートをみるにゃ♪」
「お預かりが百万円になってるっ!」
「ルクレツィアのレジミスにゃ♪」
「0ボタン多く押したんだな…」
女の子は初めてのフラペンとラップサラダを美味しそうに食べている。
「そういえば、お名前何ていうの?」
一瞬フリーズする少女。
「……………
「今、思いついた感がめっちゃ強め!」
「まぁまぁ、まだ小さいしそんな事もあるにゃ♪」
「あ、私は月花、こっちが式部で私の嫁ね、嫁ー!」
後で問い詰められない様に口に出して名言しておくっ!
「分かったー!たまにご馳走になりにくるね!」
「常連さん第一号!!」
「全然いいんだけど、どう見えたら食堂と間違えるんだろう♪」
外見はオアシカの屋上に作られた、古都の雰囲気を遜色しない色合いの木材で覆われている何の変哲もない建物だ。
下のオアシカも外見を木で作ってあるので、遠目から見ても違和感はない筈なのよねー。
間違っても家系の美味そうなラーメンの看板や、フランチャイズ系食堂に間違われる様な看板は付けていない。
「美味しかったー!こんなに美味しい物だとは思わなかったのだよー!」
「よかった♪」
「
「うんうん、妹がいるよー!もうめっちゃ可愛いんだよー!」
「へー!いいなぁ!私達はお姉ちゃんばかりだもんね」
「妹がいないから、ちょっと羨ましいにゃ!」
「私も妹を持つとは思わなかったけど、いざ出来ると実に可愛いのだよー!♡」
「パパとママに頑張って仕込みをしてもらって…頑張れば1年後には妹がっ!」
「仕込みって言ったら駄目にゃ♪」
「妹とは本当に尊い存在なのだよ…おんぶしたり、倒れた時にケガしない様に支えたり、ミルクの温度も私は心を鬼にして正確に測ったのだ!」
「育児の鬼だったのか…」
「愛が深いにゃ♪」
その時、周囲に突然多重結界が張られた!
ウォーカーが出たのか?
秘密基地の外に飛び出してみると、T-REXみたいなウォーカーが犬沢池の逆サイドから歩いてきた!
地元に居ながらUSJのアトラクションを見ている様だ!
なんかリアル・ワールドもウォーカーが増えてきたのかなぁ?
飛行で犬沢池の
「あら、月花!もうお掃除終わったの?」
「うん、迷子の子供が来たからお話してたの!」
「あら、その子?可愛いわね!」
「六花ちゃん、私達がウォーカー退治するからこの子お願い出来る?♪」
「いいわよー頑張ってね!」
ママは椅子に座り、危ないから
さて、やるか!
早速式部が
次いで式部が魔槍で頭を貫いてみるも、どうやら再生能力高めの様で貫通した穴が徐々に塞がっていく!
「
高速ですり抜けながら居合斬りで周囲の建物ごと斬る!
「廻れ魔槍!ニーベルングの指環!」
魔槍がドーナツ状の軌道でウォーカーを貫き続ける!
「
小さな火球が体内に撃ち込まれると超高熱度を発生させ、ウォーカーの身体を内側から焼いて行く!
発火し、焦げた匂いと共にウォーカーは炭化し、灰になり散っていった…
元は人だと聞いているので式部と手を合わせる。
祓い終わったのでママの処へ行くと、
「ママー、終わったよー!」
「……ふぁぁぁー!うたた寝してた!二人ともお疲れ様♡」
「娘と姪っ子が戦闘頑張ってたというのにっ」
「ごめんごめん!この子の色がコロちゃんみたいだからついつい寝ちゃって…」
「コロちゃんカラーの恐るべき睡眠導入力!」
「そういえば、今日はコロちゃん見ないにゃ?」
「ルクレツィアの頭にお供えした筈だよ?」
「迷子になってなければいいにゃ!」
「いや…コロちゃんは最早、生物を超越した生き物だから、迷子すら無い筈…」
「流石だにゃーコロお姉ちゃんは!♪」
「ていうか
「この子、お家どこなんだろう…」
結局夜まで起きなかったので、そのまま小町ちゃんご飯タイムになり一緒にご飯を頂く事にした。
「宜しくだよー…式部ちゃんママ!」
「宜しくぅー♪モテ期ノンストップの小町様だぜー♪
「お肉!」
「このロリっ子…イケる口だぜ…いいぜ、私の肉
小町ちゃんの調理を興味津々で見る羽心ちゃん!
「ルクレツィア、お仕事はどう?」
「色々な人と話せて楽しいよー!たまに強烈なおじいちゃんとか、インパクト強いおばちゃんとか、スメルがバッドでファットなお兄さんが来る辺り、いつ地雷踏むか分からないドキドキ感が合っていいの!」
「クレームだけは駄目よールクレツィア♪」
店長からダイレクトのツッコミが来た!
「まぁ、一人一人にエルフ耳を突っ込まれると面倒だし、隠しておいて正解だわ!」
「地域住民の数だけ説明しないと駄目そうだもんにゃ♪」
「あと、小町ちゃんが何かやらかして副店長に説教される流れっていつもなの?」
「それはお姉ちゃんが十年以上副店長とやってるコントみたいな物だから!」
「道理で息がピッタリだと思った!」
「誰がM-1チャンピオンかっ!?♪」
M-1チャンピオンの肉が焼き上がった!
「頂きまーす!……ん―――!!旨味たっぷりの肉汁とスパイスと焼き加減のバランスが最っっっ高に美味し―――い!」
「ふふ、満足してくれたみたいで良かった♪」
「ママ、コロちゃんは?」
「さっき部屋でカリカリ食べて寝てたよ?」
「珍しい…猫っぽくないのがコロちゃんの売りなのに!」
「ルクレツィアもお肉好きだよねー!」
「エルフという種族は殆どベジタリアン寄りだからね…食事にお肉とか余り出て来ないし、何なら食も細かったりするし…」
「ルクレツィアは何故そうなった…?」
「言わないでー!ママに言われた言葉が脳内でハイレゾで響き渡る!でもお肉は大好きっ!」
「脳内再生が高音質!♪」
「まぁ、ルクレツィアが問題なのは肉好きな事じゃなくて、言動が由々しき事態になっちゃってる処だもんね!」
「おおう、二百年以内に帰れる様に頑張ろ…」
「ご馳走様なのだよー!」
「はーい!綺麗に食べてくれて有難うね♪」
「さて、家族団欒を見てたら妹に甘えたくなったので戻るのだよー!今日は色々ご馳走様!」
「いいよー!またいつでもおいで!」
「
「何かすっごく可愛い子だったね!」
「……え、浮気?」
「イイエ ゼッタイ チガイマス!」
一瞬式部の目が怖かったので全力否定する!
「本当に何処から来たんだろうね、あの子…近いとは言ってたけど、見た事ない…あんな目立つ子なら絶対忘れないのに」
「本当だにゃ♪」
コロちゃんが起きてきて、足をよじ登ってきたので頭に乗せる。
「そうだよねー、私も見た事無い♪」
「私も最近、スーパーとドラッグストアしか行かないけど見た事無いや…」
「ママは絶対運動不足なのに、何でそんなゴリマッチョをキープ出来てるのか謎…」
「ゴリラじゃないよー!室内トレーニングしてるもん!」
「ママも不思議とスタイルをバッチリキープしてるにゃ♪」
「そりゃーもーパパに嫌われたらやだから食事のコントロールはしてるよー♪」
「もうそろそろ15年近くになるのに未だに見た事無い謎のパパ…」
「本当、式部パパを一度でいいから見てみたい!」
『お……おう…』
二人で言葉を詰まらせる
「ルクレツィアのパパとママってどうなの?」
「ルクレツィアに似てて超美形だよー!王ともなると品格が全然違ってたよねー!」
「エルフってだけで美しいのに、ちょっと
「ルクレツィアはエルフでも月島方面寄りのエルフだもんね」
「駄目なエルフにカテゴライズされているー!」
「でも、今日は何枚かアドレス貰ってたよねー?♪」
『まじか!!!』
「ああ、スマホ持って無いって言ったら『またまたー躱し方上手いね!』って強引に手渡される感じが何人かあったかな…」
「流石に美少女エルフはモテるなぁ…」
「うーん、恋愛の気持ちがまだ分かんないんだよねー!誰かに興味を持ったら一つ一つの言動に意味を感じたり、惹かれたりしちゃうんだろうけど」
「やべー!私達、恋愛力は負けてる!」
「私達は…幼馴染とか友達とか色々混ざってしまってるからにゃ♪」
「あと、何か不潔そうな人に手を握られかけたから、ついつい牛さんで轢いちゃおうっかなって思った!」
「そこは全力で耐えろ接客業!!!」
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