第37話 Material Procurement
謎の野良試合があったけど、無事にスキルショップの店員さんをウォータリアへ送り届けてこの案件は無事に解決し、私達とグレースの依頼とシャドウの依頼が纏めて解決された事になる。
まぁ、女子の顔面に石投げた事は、シャドウに会う度にチクチク言ってやろうと思う。
シャドウとグレースは到着確認後にダイヴ・アウトし、私達はトワに挨拶してスキルショップのおっさんを弄り倒してから帰還した。
何だか長く感じたけど、やっと私達の世界に戻ってきた。
早速家に帰ると、ルクレツィアが白い仮面に赤い軍服を着ていた…
分かりやすさ満点か!
「…見せてもらおう、若さ故の過ちとやらを!」
「うん、色々違うにゃ♪」
「式部、さっき転送装置が二つ増えてたけど、そろそろルクレツィアも連れて行ってみる?」
「まだ武器選びが終わってないけど、言葉遣いは良くなった気がするし、社会見学もいいかもにゃ!」
「坊やだから
「服装にも言葉遣いにも不安しか浮かばないがまぁいっか」
「あら、月花、式部ちゃん、コロちゃんお帰り!」
「ただいま、ママ!」
ご飯まで五人で今回の仕事の話をしてると、急に立ち上がるママ!
「おにょれ!娘の顔に傷を!今から突撃して超切り刻んでやるんだから!」
「ママー!神器で人を殺しちゃ駄目ー!」
「大丈夫よ!一太刀で全て終わりにするから!」
「手数の問題じゃな―――い!!!」
式部とコロちゃんと三人で
「分かった…今回は月花に免じて執行猶予を付けますっ!」
「執行猶予ってあれよね?今回処刑しないけど次やったら問答無用って奴」
「私ならチェーンソーで真っ二つにするわ♪」
「ママが突然現れて、火に油を注ぐ発言をっ!♪」
「式部が帰ってきたのが見えたから、サボ…サポートに来た!♪」
「言い訳が苦しい!♪」
ご飯も済んで、ママ、ルクレツィア、コロちゃんと四人でテーブルを囲んで、今回の仕事の話をしたが、コロちゃんを含む全員が嫌な顔をした。
「好きな人以外は…触られるのも嫌だわ!」
「ママは生物とか種族関係無くパパしか受け付けないからー♡」
「ににににんににん!」
きっと女の子のコロちゃんもご立腹!
「矢張り同じ種族でお願いしたいよね…」
「私達エルフも他の種族と結婚とか殆どないもんねー!まぁ、浮遊大陸で閉鎖的な生活なのも理由なんだけど」
「因みにルクレツィアはどんな人がタイプなの?」
「赤い彗星の人とか赤い彗星の再来の人とか赤井っていうFBIの人とか」
「統一感凄いねー」
と、突然ドアが開いて式部が走ってきた!
「月花、ごめん!生命の安定をママに掛けて欲しい!」
「どうしたの!?」
「ママが高熱を出したの!」
病気が異世界のルクレツィアにどう作用するか分からないから、ルクレツィアとコロちゃんは家に残してオアシカへ行くと、客席のソファーでぐったりとしていた。
「
スキルを掛けてみたら少し落ち着いた様に見えるが…
「二人とも、いつもの病院に連絡しておくからお姉ちゃんをお願いしていい?飛んでいった方が早いから!」
『分かった!』
小町ちゃんは軽いから私が抱えて、式部と二人で向った。
救急入口から入り、先生を待つ。
ママが段取りしてくれたから先生が早く来てくれて診察に入る。
最近のお医者さんは何かしらのスキルも使ってるみたいで凄い。
「お二人か、身近などなたかがアナザーバースに行かれたりされてませんか?」
「私達ですね!何か関係が?」
「はい、病気自体は普通の風邪に見えるのですが、私の知識でもスキルでも病名が特定出来ず、何を処方すればいいのか見当が付きません」
「そんな…」
「兎に角、どう症状が変化するか分からないので、解熱剤を投与して、点滴と酸素吸入器を付けておきます。薬を探しに行くのなら、貴方達が最近訪れた土地を中心に医者や薬を訪ねなさい」
「分かりました!」
「月花……」
「いいよ、小町ちゃんの付き添いしてあげて!あと、おじいちゃん、おばあちゃんにも連絡してね?」
「分かった!月花、気をつけてね!」
「任せなさい!」
取り急ぎママに連絡を入れて秘密基地へ向かうとルクレツィアが待っていた。
「月花!私も行くわ!」
「ごめん、ルクレツィアのスキルや装備をまだ見てあげてないから、今回は皆で待ってて!」
「…分かった!私の国のお医者様も高名な人だから、手掛かりが無かったら会ってみてね?」
「有難う!行ってきます!」
早速ダイヴ・インして、さっきまでいたウォータリアの遺跡の
門番さんに伝わる様に貰った鱗を押す。
程なくして門番さんが迎えに来てくれたので、事情を話すとマーメイド達にはその病気は移らないので対処法が分からないとの事で、お礼を言いアクラドシアへ飛んで向かう。
人の命が掛かっているかもしれないと思うと嫌なイメージばかり考えるが、頭を振ってイメージを頭から追い出す!
アクラドシアへ高速で飛び、とりあえず王様を呼ぶ。
謁見の間で待つと王様だけ来た。
まぁ、時間が遅いし、会ってくれるだけでも有り難い。
「あーあー、余がアクラドシア国お…」
「うっさい!トワに余計なイタズラ仕込むな!」
「そうか、やはり引っかかったか!あっはっはっ!」
「次やったら鼻の穴にスイートコーン突っ込むからね!以前エルフのお医者様を手術した妖精さんに会わせて欲しいんだけど…私達が風邪をホームワールドに持ち込んだみたいで、治し方がわからないの!」
「む、それは笑ってる場合ではないな!ニーナ=ティジカ!ニーナ=ティジカはおるか?」
「はいはーい!どうしたの?」
「軽っ!!」
「また君なのね!どこを切ってほしいの?」
「私じゃないし、何なら切られる位なら先にお仕置きしてやるわっ!実は…」
…………
「…うんうん、水辺熱で間違いないね!」
「水辺熱?」
「主にリザードマンやサハギン、マーメイドがいる地域で流行る熱で、前述の三種族は抗体がある上に、もし掛かっても熱がそれ程上がらないんだ。でもたまに人が掛かったりすると高熱が出ちゃうね」
「お薬はある?」
「それが、水種族が住まう地域にしか発症例がないからね…原料を栽培していないんだ…あるとしたら北にある少し大きい国に原料を栽培してる人が居る筈だよ?」
「王様には話したけど、その国は滅んでしまって…」
「え、ほんとに!?むー…ならここから北西の国は?」
「その国は大丈夫な筈!!」
「ならゲネツミドリソウを手に入れて来たら、王様が横で腹筋しながら僕が調合するよ!もし薬そのものが手に入ったら万事オーケーだし」
「吾輩の腹筋は薬の調合に必要かね?」
「ないよ?患者がいるなら急ぐんだ!」
「王様、ニーナ=ティジカ有難う!」
「頑張ってねー!王様もスクワットしながら応援してるよー!」
「吾輩のスクワットは応援に必要かね?」
辛い思いをしたあの国へまた足を運ぶとは思わなかったが、小町ちゃんの為だし仕方あるまい!
小町ちゃん、仕事柄、水仕事あるしそれで移ったのかなぁ…これからはリアルワールドに持ち込まない様にしなければ…対病期スキルを今度探そう!
あの時は三人で三日がかりの旅をしたが、今回は高速で飛行しているので三時間程で到着した。
あの時はスライム騒動で閉鎖的だった街も、今は
「すみません、警備強化中で身分証を拝見します」
「ああ、はい、これです」
「…はい、拝見しました!堅固なるガルワルディアへようこそ!」
「あの、お薬のお店か、お医者様の場所を教えてもらえませんか?」
「ああ、それなら街の脇にストリートの数字が振ってあるから、2-5の緑の屋根の建物を目指すといいよ!」
「有難う御座います!」
流石に街中で飛行するのは行儀が悪そうなので歩いて探す。
街中は賑やかで笑顔が多い。
街の人の笑顔が多い街はどこも良い街だ!
道なりに進んで行くと2-5が見え、すぐに緑の屋根が視界に入った!
ノックをして様子を伺う。
「御免下さいー!」
「…中には誰もいない様だ」
「喋ってるアンタがいるだろ!」
扉がそっと開き、年配の男性の顔が半分見える。
「客の察しが良過ぎて困るっ!」
「客言うな!急いでるんだよ!」
「無礼な、我国王ぞ?国のトップぞ?」
「嘘つけー!あーもう!ゲネツミドリソウくれたら帰ってあげるから!」
「それを先に言わんか!秒で済むなら楽なもんよ」
「もうね、医者じゃなかったら
「…これじゃ、ゲネツミドリソウ。薬を作ったら周囲の人も飲んでおきなさい」
ああ、見た目がスーパーで売ってる長ネギそのものだ…
長ネギでも行けんじゃね?
「有難う!病人には優しくしなさいよ?」
「ギリ死人は出さん」
「ギリはやめなさい!!!」
長ネギもどきを持って、ガルワルディアを後に…
しようと思って、視界に入った。
広場の隅に少し大きめの墓地があり
手前のまだ墓石がない区画に、出来たばかりの二つの墓石と
一本の見知った剣が刺さっていた。
近くの花屋で花束を二つ買い、墓前に置いた。
「クレド、フィル、また会いに来るからね」
小町ちゃんが心配だし、泣きそうになったからガルワルディアを後にした。
次はニーナ=ティジカに調合して貰わないといけないのでアクラドシアへ戻る。
うええ、風に長ネギが
そうか!風に向けて垂直に…よし、抵抗が少なくなった!
ばくん!!!ばっさばっさばっさひゅー…
「そこの鳥類待てコラァァァァァァァァ!!!!」
飛んでたから油断した!!!
速度を上げて追いつくも、流石鳥類は機敏で捕まえさせてくれない!
「蜘蛛の銀糸!」
近距離で絡めとるのに成功し、とりあえずカロリーバーを出して咥えてた長ネギらしきものを取り上げて、代わりにカロリーバーを口に入れてから開放してあげた。
「ごめんねー鳥類!」
カロリーバーに満足したのか、鳥は素直に帰ってくれた。
もう奪われない様に飛ばないと!!
時間が掛かったが、アクラドシアが
後は調合して貰うだけ……何か門が騒がしい…
この距離から人に見える何かが暴れている!
巨人でもいるのか!?
近づいてみると本当に巨人だった!
あれは…ミノタウロス!!
身の丈が十mを超え、身体が筋肉質な人型だが、頭と足が雄牛の怪物で巨大な斧を振り回し自警団と戦っている!
こんなデカイやつ何処から出てきた!?
「後は引き受けます!皆、負傷者を連れて中に入って門を閉じて!」
「助かります!」
「あー、あとこれ持ってて!後で返してね!」
「お預かりします!」
中に負傷者と自警団が入って門を閉じたのを確認後障壁を取り除くと、まっしぐらにこちらに切り込んで来るミノタウロス!
殺意
「
怪力スキルで力比べをして見ようと試みるが、いきなり負けて吹き飛ばされる!
空中で飛行結晶を付け、姿勢を制御する。
だがもう目前にはミノタウロスが迫って来ている!
「
すり抜けながら胸から脇を斬りつける!
筋肉が硬い!
筋肉オバケか!!!
「
前方に雷を発生させ、着弾点で爆発を起こす!
持っていた斧に雷が寄ってしまい、爆発が右腕に集中するも、相手がタフで傷だらけでも全く動きが落ちてない!
「
「
エクリプス・メテオで相手の動きを見る!
当たれば良かったが、当たらず
すり抜けざまに左足を切断し、返しで技を繋ぐ!
「プロミネンス・ゲイズ!」
クレドから譲り受けた切り上げ炎属性攻撃+継続ダメージ!相手の背中を切り上げた頂点でまた技を繋ぐ!
「
背中を斬られて仰け反る頭に突きを決める!
筋肉は硬くても流石に骨はそれに及ばなかったのかすんなり貫通し、巨体を大地に落とした。
「レクス様、有難う御座います!」
「ちょっと急いでるから後片付けお願いしていい?」
「了解しました!あと、お預かりしたネギです!」
「あ、うん、やっぱりネギにしか見えないよね…」
城の中に入れてもらって、ニーナ=ティジカを呼んでもらう。
「やっほー!どうも僕だよ!」
「ゲネツミドリソウ持ってきたから調合お願いしていい?」
「おっけおっけ!三年程そこで座って待ってて!」
刀を抜こうとすると三十分と訂正したので刀を収める。
「王様の腕立て伏せとかはいらないの?」
「君は…医療を志してるのかな?この薬には必要だね!」
「いや、いらんだろ」
「あ、王様出てきた!」
「さっきノリでスクワットしたら足がバキバキだから今日はそのノリはもう無理だ」
「代替行為として、国王様が一曲歌うのもありだよ!」
「いいから早く作りなさい、いててて」
歩き辛そうで面白い動きになってる!
………三十分後
「出来たよー!百人分位出来たから、うちにも少し分けてね!」
「うんうん!こっちは十人分位あれば大丈夫!……粉薬だよね?」
「そうそう!眼から点眼、
ニーナ=ティジカの眼に入れようとしてみる。
「本当は水、または白湯で経口摂取してね!えへっ!」
「えへっじゃない!…でも、国王様、ニーナ=ティジカ、有難う御座います!」
「うむ、お大事にな」
「材料がもし無かったら長ネギでも大丈夫だからね―――!」
「……長ネギでいいんか―――――――――い!」
ここ最近で一番のツッコミを入れて、ダイヴ・アウトする。
早速いつもの病院へ飛んで、病室へ行くと全員揃っていた!
「月花!大丈夫?」
「勿論!これ、小町ちゃんに!あと私達も飲んでおいた方がいいみたい!」
「じゃ、私がお姉ちゃんに薬飲ませるから、式部ちゃん、皆のお水買ってきてくれる?」
「六花ちゃん有難う!了解にゃ!」
式部がお水を買ってきたので皆で飲む。
「ん?月花、これゲネツミドリソウ入ってる?」
「ルクレツィアよく分かったね!って、フォースアイテムで医療知識が頭に入ってるんだったね!」
「うん、こっちの世界ではお鍋にして食べるんだ…ってカルチャーショックだった!美味しかったけど」
「う、うん…長ネギ…美味しいよね…」
なんか、長ネギの為に振り回されたけど、翌日には小町ちゃんがすっかり元気になったので本当に良かった!
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