第26話 Rewards and Encounters

「レクス!!」


 何かスキルを使っているのか、青い敵の銃弾が途切れずなかなか動けない!!


 空から落ちて海に浮いているがここからでは月花が呼吸出来ているか確認出来ない!


「コロちゃん!ブレイズスタイル!レクスの氷を溶かして!」

「ににに!」


 コロちゃんに飛行結晶を付けると流星の様に飛び立っていった!



「あの氷は二度と溶けねぇよ!」

 月花と戦っていた赤い方が…月花の名も無き刀を奪って襲ってきた!


「少し大人しくしてろ!」


 銃の青い奴を花鳥風月で立方体に閉じ込めた!

 銃弾も反射するから中から壊せまい!

 続けざまに男の偃月刀えんげつとうを魔槍で受け止める!


「ほらほら、弱い奴がこんないい武器を持ってるからぁ!身の丈に合う武器で戦え!クソガキ!」


「身の丈に合わない物を持っているのはお前なんだよ…その刀は塵芥ごみが持っていい刀じゃない!」


「いいねいいね、吠えるだけ吠えろ!俺の偃月刀を受けるだけで何も出来てない貴様に何が出来るッ!…相方の刀で死ねよ!」


「……死ぬ前にクソガキの本気を味わえ!不死猫の好奇心ナイン・ライヴス


 私が八人増えて九人になり、同時に

「くいぎゃああああああ!この刀で死にやがれ!」



 名も無き刀を上に振り上げ、私に振り下ろそうとしたが!


 その瞬間、振り下ろした赤い奴本人が真っ二つに切れる。

 身の丈に合わない武器を持つから…


 名も無き刀は赤い奴の死体と海に落ちると思いきや、軌道を変えて月花が閉じ込められている氷に向かっていき、コロちゃんを避けて垂直に刺さる!


 その瞬間海がモーゼの御業みわざの様に真っ二つに割れた!


 氷が裂け目に落ちていくが、途中で粉々に砕け、王が刀を取り飛んでくる!



 しまった!

 花鳥風月を消さないと!

 色 々 バ レ ち ゃ う !



 一瞬で解除するが、同時に青い奴が銃弾を馬鹿みたいに撃ってきた!


 私は魔槍を回して跳ね返すが、月花は…封印解除したのか紅く目を光らせ闘気だけで銃弾を弾いている!!


 ゆっくり飛行で近づいていく王。


 相手の銃がもう身体に触れている。


「どうした?撃ってみろ。この至近距離ならダメージが通るかもしれんぞ?眼球ならどうだ?その豆鉄砲でも口の中なら貫通するかもしれないぞ」


「クソボケェ!血反吐ちへど吐きやがれ!」


 銃弾を至近距離からどんどん撃つが全てが塵芥ごみとなり海へ落ちていく。


 ガチン!ガチン!と弾切れの音を慣らし、怯えた声を出す。

「終わりか?」

「まだだぜぇ!!!」

 銃がビームの様な光を両手の銃から放つ!


「ひゃあはははははははは!溶けやがったぜ!勝ち誇って余裕こいてる奴を殺るのは超愉快だぜええええ!!!」


 こいつ…本当心底下衆だ。

 だが、月花が背後に回り込んでいるのに気付いていない…



「…塵芥にしてはいい攻撃だったぞ。それで何人の民を殺した?」

 耳元で囁かれて咄嗟に背後に銃を撃ち飛び退く!


「…何を怯えている?私はここだぞ?」

 耳元で囁きが聞こえる度に振り向いて銃弾を何度も撃つ!

「ハズレだ」


「ここだ」


「下手くそ」


「こっちだ」


「ぎぃぃぃあああああああああああぁぁ死ねぇぇぇぇぇぇぇ!」

 男が先程のビームを乱打するが、射程距離が短いのか、周囲を光らせる玩具みたいになっている。


「眩 し い」

 月花が両腕を切り落とした。

 脳内麻薬が出ているのか痛みを感じていない。


「その余興は飽きた。次のをやれ」


「……は?………」


「次だ」


「許して下さい…もう手がねぇから何も出来ません…」


「つまらん…さっきの銃で何人殺した?」


「覚えてません…数え切れない位…許し」

 その瞬間、青い奴が数え切れない位の肉片になった。



「下の奴らも血の臭いが酷い…今まで何人の民を殺した……全員肉片に」

「ストーップ待って待って封印!封印して!」


「……あれ、式部?」

「封印解除、控えた方がいいかもね?少し残忍な感じになってる」


「あー…そうかもしれないー」

「今、下の沈みかけの船団を殺そうとしてたにゃ」

「……まじか!」


 改めて下の沈みかけの船団と、泳いで逃げる海賊団を見ていると…



 バクン!



 十隻以上あった船団と海に浮いていた海賊達を超巨大な魚が下から飲み込んで消えた…


「…何…あれ…」

「魚っぽかったけど…」



 幸い海兵団の船はまだ到着しておらず被害がなかったが、まださっきのがいるかも知れないから知らせて引き返して貰った…


 その後、港で見ていた人の誰に聞いてもあんな魚見た事無いとの話だった…

 天罰だったのだろうか…

 それを確認する術は何処にも無かった。



 一息着いた後、海兵団から海賊団に掛けられていた懸賞金を貰えるだけ頂いてしまった。

 結果、街に殆ど被害はなく事無きを得た。


 …もう海賊来ないよね?

 流石にもうお腹一杯だよ…




 改めて聞くとこの街はワーズガルド王国といい、この近隣の諸島の国々を纏めて統治しており、非常に評判がいいらしい。


 海兵団から報奨金を頂いた後、街を三人で歩いてみた。



「活気もあっていい街だねー!」


「うんうん、まずはご飯でも食べるにゃ!」


「ににっ」


「そういやバタバタしてて昨日から何も食べてなかったね…」



 少し町の人に聞き込みして、美味しいと聞いた料理屋に入ってみた。


「いらっしゃーい!お好きな席へどうぞ!」


「凄い…日本のお店みたいな空気あるね!」


「ここは…なんかぞわそわする…もしや当たりかもにゃ…?」



 テーブルに着いた瞬間女性のスタッフさんがお水と漬物らしき物を持ってくる。


「いらっしゃい!見ない顔だけど旅人かい?」


「あ、そんな感じですにゃ!ここのオススメはなんですか?」


「ふふふ、よく聞いてくれたね!うちの看板メニューはズバリ!ガッツ丼!!!」


「カツ丼じゃなくて…ガッツ丼…?」

「そう!上質の餌を食べさせて広い牧草地で元気に飼育したガッツ豚の、特に良いところだけをうちが独占契約してね!言っとくけど…食べたらもう戻れない、引き返すなら今だよ?」


「ふっ…その挑戦受けてやるにゃ…」

「ふーん…あんたも食う側の人種って訳かい…存分に味わっていきな!」


 B級グルメ劇場がまた始まっちゃった!

 でも式部の感は間違いないから楽しみ!!



「お待たせー!存分に味わっておくれ!」


 …見た目はほぼカツ丼…三つ葉らしき物も乗ってる…


 ぱくっ!


「……上手い…卵は半熟のギリギリを見極めてる…しかも卵は二回に分けて投入されてるから食感が絶妙…カツは衣がサクサク感を失っておらず噛むと肉汁が溢れだすぅ!」


「肉の旨味が洪水の如く口の中に溢れ、卵と織り成すハーモニー…ご飯と口に入れる事で丁度いい三位一体のバランス、私の口が早く咀嚼して口に入れろと催促しているっ!」


「美味いだろ?上の香草でまたアクセントが付くから……ふふふ、完食後、二杯目を断れるかしら?」


「えっ!?もう食べ終わったの?…物足りない…」

「駄目だにゃ!身体が二杯目を求めているにゃー!」

「毎度ありー!」

「にににんににん!」

「コロちゃん、顔にご飯粒が沢山ついてる!」




「ふー、いつも通り食べ過ぎた…」

「流石に年頃の女子が丼二杯は体重気にしちゃうけど…あれは病みつきの味だったにゃ!」


「さーて式部さん!このガッツ丼!B級グルメのランキングは如何に!?」

「悩むにゃー…これは…三位入りにゃ!!」

「装甲イカの壁は厚かった―――!」



 ☆ご当地B級グルメランキング!

  一位:アクラサーモンの塩焼き

  二位:装甲イカの姿焼き

  三位:ガッツ丼

  四位:ワタリ魔牛のジューシー肉串

  五位:あったかほっとたこ串

   出来たての味は神☆(ゝω・)vキャピ




「とうとう五位まで来たねー!」

「もっと世界を回って美味しい物を残らず食べるのにゃ!」


「あの…」

 声をかけられて、見ると騎士のような出で立ちの女性だった。

「《社》のレクスさんとデッドエンドさんですか?」

「そうだにゃ♪」


「私、ワーズガルド王国騎士団長のメルフィーと申します。長年我が国につきまとっていた海賊団を討伐して下さり有難う御座います!つきましては、国王から直々にお礼が言いたいとの事で御同行願えますでしょうか?」


「分かりましたー!」


 食後で動きが緩慢なヘビーコロちゃんを頭に乗せて、メルフィーさんと一緒に城へ向かった。


 攻め入られない為の工夫か、途中で細くなったり曲がりくねったりしているが、案内がいるので迷うことなく着いた。



 騎士の皆さんが左右にズラリと並ぶ中、国王様と王妃様に謁見する。



「私が国王のワーズガルドⅫ世である。こっちは王妃のサニアだ」


「お会い出来て光栄です」

「ですにゃ♪」

「ににー!」


「この度は長年手を焼いておった海賊を懲らしめてくれてご苦労であった」


「いえ…救えなかった沢山の方々もいるので…」


「全ては巡りあわせだ。もう少し早く来ていれば、もっと上手くやっていたら、は水掛論みたいなもんだ。過ぎた事よりは己が来た事により助かった命が確実にあるという事を忘れるでない」


「はい!」


「今日呼んだのは他でもない。国を代表して礼が言いたかったのと、あの海賊共が欲しがっていたアイテムを提供したいとおもってな」


「そんな大事なもの…宜しいのですかにゃ?」


「争いの火種になる位なら、良き心の持ち主に持っていてもらう方が良いだろう」


 左右にいた騎士団が小さい台座を二つ持ってきた。


 それぞれ指輪と腕輪が乗っている。


【闇夜の腕輪】

 対象を中心に闇を展開する。

 腕輪の所有者はこの闇を見通せる。


【達人の指環】

 念じると移動速度と蹴り速度が三倍になり、両脚に見えない防御を張る。



 両方共使えそうなフォースアイテムだったので頂いておく。

 私が腕輪で式部が指環!


「有難う御座います!因みにこの国は防御システムとかはないんですか?」


「うむ、あるのだが例の海賊らの誰かが城に侵入して潰したのだ…今復旧させているから、次は大丈夫だ!」 



 国民を大事にしているいい国だ…

 お礼を言い、城を離れた。


「しかし、何で海賊がこのアイテムをねらってたんだにゃ?」


「推測だけど、海賊の親玉は体術使って蹴ってきたし、もしかして護身の為に使いたかったのかもね。いつ暗殺されても仕方ない顔してたし…」


「まぁ、一旦平和になったみたいだし帰るかにゃー!」


「帰ったらすぐ学校…」


「《社》依頼休暇とか出来ればにゃー!」




 帰ったら丁度オアシカの閉店時間を過ぎていたので、皆いるかなー?とお店に入るとママと小町ちゃん、小花ちゃんに……目がキツい警察の人と…何故か龍安寺先生がいた。


「ただいまー…って何で先生がここに!?」

「月花、式部ちゃんお帰り!何でって、前から知り合いよ?あんちゃんも巫覡ふげきだったし」



『えええええええーーーー!』


「そないに驚く事ないやん!逢禍おうかが奈良以外ほぼ出なくなったし、大戦で奈良県民激減して移住優遇しとったさかいな。まさか六花はんと小町はんの子供受け持つとは思わんかったけど」


「私達の親…色んなとこで繋がってね?」

「何をしてもどこからか報告されてそうだにゃ…」


 ちなみにパパは仕事でまた留守らしい。


「美姫さんこんばんはー」

「こんばんにゃー!♪」

「うむ」

 目付きが怖いので挨拶は欠かさない。



「そういえば美姫さんて死ぬ程強いって聞いたんですが、武器は何を使ってるの?」

「あ、興味あるにゃ!」


「私の身体、全てが武器だ」

 絶対にお友達になりたくない人No.1の台詞!


「美姫先輩、学生の時校舎に乱入してきたバイクを校舎の三階まで蹴り上げてたもんね♪」

『嘘でしょ!?』


「あと、教室で暴れてたヤンキーを隣の教室から、黒板を手で突き破って締め上げてたもんね」

『嘘でしょ!?』



「凄い人って案外近くにいるなぁ…」

「先日のミキドの眷属も凄かったにゃ!」


「……何?」

『ひっ!?』


「月花、式部、今何と言った?」

「ひっ!?って…」


「その前だ」

「みみみみみミキドの眷属って…」


「そのワードはどこで知った?」

「実は先日アナザーバースで戦った人が物凄く強い人で、聞くと毒殺で滅んだミキドの眷属という血族で、旅立って消えた人以外はその人しかもう生き残りがいないって言ってました」


「そうか…道理で。私の名もミキドが付く。南城戸みなみきどのルーツであるミキドの眷属を探しても見つからない訳だ…まさか異世界がルーツだったとは…」


「こんな身近にミキドの眷属がいるとは…」

「これもまた巡りあわせだにゃ♪…でもどうやってこちらに来たんだろう?」

「美姫先輩、次元の壁を蹴り破れるよ♪」

『嘘でしょ!?』




「巡りあわせ…か…よし、二人とも少し手解てほどきしてやろう」

『え』


「美姫先輩がうちの子をいじめるっ!」

「先輩、手加減して下さいねー♪」

「二人とも死なない程度に頑張れー」

「成仏しなはれ♡」

 先生酷い!!!


 もうすっかりやる気になってて逃げられない我々…

 先に飛び上がり、美姫さんにも飛行結晶を付けて飛べるようにしてあるが、まだ地上にいた。


「周囲に被害が出そうなので結界張りますねー!」

 ママが刀をキキンッ!と鳴らすと多重結界が張られる。


「月花、式部、いきなり全力で来い。私の攻撃力は五千三百万だ」

「桁が二つ程違う―――!」


 突然美姫さんが犬沢池に設置されてる石柱やら椅子を蹴りでこちらに打ち上げてくる!

「ひぃぃぃ―――!」

「魔槍よ!穿うがて!」


 式部が一撃必中の魔槍を放つが、煙草の火を付けたばかりの手で止める!

 握ったまま押し返そうとするが、必中の魔槍だ!

 だが、力で強引に逸らすと耳の横を掠って式部の元へ帰っていく!


「クロエと同じいなし方!これなら!」

 空中から蹴りを繰り出し、美姫さんは膝で受ける!

 肘打ちから廻し蹴り二連!

 下段蹴りから旋風脚で追い詰めるも全てガードした!

 その後式部に一撃蹴りを入れると、アニメでしか見たことない飛ばされ方で旅館に突っ込む!


名も無き封印ネームレス・シール解除リリース!」

 目が紅く光り、赤き闘気を纏う!

名も無き一之太刀ネームレス・ワン五連クインティプル!!」


 ギギギギギン!と一瞬で命中させるが、全てをピンヒールの蹴りで受けている!

 美姫さんの足捌きも凄いが、それ以上にあのピンヒールの素材はなんだ!?

 ガンダ○ウム合金か!?


「…名も無き切り札ネームレス・ジョーカー!」

 高速移動抜刀術…集中して、相手を良く見る。


 一瞬で間合いを詰め、抜刀!

 と、同時に右背後から魔槍が飛んできた!


 何故か美姫さんは向かって右後方に避ける!

 刀の範囲から絶妙に避け、私の刀の腹が魔槍の軌道を変える!

 刀をピンヒールで受け流し、魔槍は矢張り美姫さんを掠め、式部の手元に戻っていく。

 そういう位置に逃げたのか!


 一旦仕切り直しで、二人で下る。



「ふむ、服を切られたか…今日は合格としてやろう」


「よし!」

「激甘判定な気もするけどやったにゃー!」



「式部…その魔槍、で甘く使っているだろう?確かに能力は高いが無理矢理当たる場所を反らせる事が出来る上に、本来反れる事がない武器故に耳や髪を掠めると当たったと認識して帰っていく。真剣勝負の場はの技を使え!」


「はいにゃ!」


「月花は、まだ色々隠し持ってるのだろうが技の主体が突進か遠距離だろう?近距離から中距離で刀に頼らない技もいくつか持っておけ!」

「はい!あとその高そうパンツ…お幾らですか?」


 後ろで大声で笑うママ達!


「外国で取り寄せかオーダーメイドだ。女なら何歳でもいつも良いものを付けておけ」


「ここここれが大人の色気…」

「なんか凄いパンツだったにゃ!」


「じゃ、せっかくやしうちも遊んであげよか?」

 赤い着物に鞠を装備した龍安寺先生が現れた!


「あ、色気のない先生」

「振り袖が似合ってるにゃー!♪」



 この後滅茶苦茶、鞠でいじめられた。

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