第20話 Revival of Punishment
「―お前、何が目的だ!?」
「破滅へ誘う力を付ける為さ……」
町人風の男の姿が、一度ウォーカーの姿へ変わり、茶髪の顔のいい、現代風の男に変わった。
「あの男…
「お前が言葉を一音発する度に虫酸が走る」
「そう言わないでくれ。関係者ならと思い、絶命させる前に話してやっている…そして、ここに辿り着いた時、ここには管理人と呼ばれる狐がいる事を聞いた。浄化作用の強いその獣に
「式部、狐さんの手当出来る?」
「分かった!」
「後は簡単。一人一人殺していけばいい。ただ、狐は能力を封印しても能力が煩わしかったから少しずつ丁寧に処理して行った」
「…何人その手に掛けた!?」
「全員だ」
「……え?」
「こちらに来てから生み出した技でね。脳を殺さずにそれ以外を侵食するんだ。全員、自分が死んでいることさえ気付かず日常を送っている。と言っても、狐が尻尾に避難させた人間とその子供はやり損ねたが。その子供、運良くスキルを入手したと見える」
「……あの気のいいおでん屋、おときちゃんのお母さん、子供の事を考えて門を通してくれた門番さん…全員死んでいるだと……」
「済まない、話し方に正確性が欠けたな」
指をパチン!と鳴らすと黒い泥々が転送門から続々流れてくる。
「今、全員死んだ。意思のない逢禍の泥となりこちらに流れてくる」
「…お前…人を何だと思っている!?」
「特に何とも思っていないが、世の中が回る程度生存していれば事足りる働き蟻で良いのでは?優秀な女性は私の子孫を育む価値だけはあるが」
「貴様はここで終わらせる!輪廻の環にも入らせぬ!魂を終焉させる!」
「威勢がいい女性は嫌いじゃない」
「
存在を塵に返そうとするが泥が庇い、庇った部分が消滅した。
「おっと、今のは三人分は死んだな。今死んだばかりなのに二度目がすぐ来るとは…実に残忍で残酷な話だ」
「くっ!」
「人の子よ…充分回復致しました…彼女を助けてあげなさい」
「終わったらまた続けて回復するから待っててね!おときちゃんもお願いします!」
「少し纏うか…残りは集合体となり、もう一人の女か狐を殺せ」
逢禍を纏い、身体が大きくなる。
残りの逢禍は圧縮され、筋肉質の大型ウォーカーになった。
「
突きを最速で芝辻に繰り出す!!
胸にまともに食らわせたが効いていない。
「
突きを刺した姿勢のまま激震を当てるが、男は両手を二枚貝の様に広げてガードしつつ、私の背後に回る。
「娘、名を聞いておこう。私は
「…
「ふ…ふふふ…そうか、あの男と巫女の子供だったか…江戸の仇を長崎で討つという言葉があるが正しくそれだな!」
「そうか、パパに負けたのにママにも負けたのか?」
「いいや…私は貴族の血筋てね…優秀なあの女に私の子供を産んでもらおうとしてたのだがな。もしかしたらお前は私の子だったのかもしれないのだぞ?」
「
「……なんならお前が私の子を生むか?世界を導く血筋としては
ぞぞぞそぞ!
身の毛がよだつ!!!
「月花 変わって こいつは 私が 殺す」
「なんだ……お前も血縁か?お前の相手はそっちのゴツい方だ。隙あらば狐も子供も全て殺す」
「クズがッ!苦痛を存分に堪能しろ!」
式部が槍を横に構える。
「
詠唱が終わると式部が九人に分裂した!
三人ずつ、芝辻、逢禍、狐さんと散らばって攻撃し、隙を見せない連携で押している!
式部がキレてるから任せてるけど私の仕事してない感が半端ないので、一発ずつ入れるか…
「スイッチ!!」
「分かったにゃ!!」
……どことどこの式部!?
九人も居たら違いに気付けない!
「
大型ウォーカーに一撃入れると逆側が爆砕し、崩壊が始まる!
追い打ちを掛けるように式部三人とライトニングコロちゃんが追撃する!
「民よ…静かに…安らかに眠れ…」
本体の芝辻はまだ余裕がありそうだが…流石に式部三人に勝てる筈も無く、ダメージが蓄積している。
「式部、変わって。こいつは私が
式部が秒で引く。
私…そんなに怖いのかな……?
芝辻が上に逃げるが、こちらは飛べる!
すぐ追撃しに掛かる!
「
流星が幾つも現れ、触れた場所が月蝕の様に
出した刀で幾つか斬られたが、流星に刀が喰われてからは成す術無しの様だ。
「
両腕に喰らいつき、離さない魔狼達!
「フレキ!ゲリ!下に引きずり降ろせ!」
足を流星に抉られ、両腕をフレキとゲリに喰われた状態で
「鹿鳴の家系はいつも良いとこで邪魔してくる。煩わしい…目の上の
「羽虫にだって命があるんだ。誰にも踏み
「私は人を愛している。だからこそ正しき指導者として私、及び私の血族が導いていくはずだっ…ぐぁぁぁっ!!!」
「
言い終わった瞬間、頭以外を微塵斬りにした。
何回斬ったか覚えてないが、
身体は細切れ状態から全て塵になる。
ベンチの上に残った芝辻の
「ぐげぉえ!」
「見ていたぞ…お前…身体にダメージは通らないが、頭にダメージが及ぶ時のみ全体防御する振りをして頭を防御していたな?貴様ほど戦闘が下手糞な人間は見たことない」
少しずつ刀を上に上げていく。
名も無き刀は、特に力を入れなくても生物ならば、バターの様に斬れる。
「はぐえがあああああああああああああああああああああああああああぁぁぁぁぁ!!」
「お前は鹿鳴の家系に喧嘩を売っていた様だが…何故負けたか教えてやる。気が向いたら」
刀をスッと上に斬り上げると頭が真っ二つになり、逢禍の体組織で作った頭蓋骨の中に脳味噌が入っていた。
「貴様は魂まで
刀を持ってない左手を向ける。
「
強い光が直線方向に、何もかも消滅させた。
きっとこの掌の先には無しかない。
悍ましかったので、刀をひと振りし血や
念の為、
「人を舐めるな…鹿鳴の血を怖れよ」
狐さんが、分身式部に回復してもらったのかこっちにぴょんとやってきた!
尻尾を一瞬嬉しそうに振っていたが…
「私の社務所が…庭木も…面影も残ってない…」
崩れ落ちる九尾の狐!
「ぎゃー!ごめんなさいごめんなさいごめんなさい!!!」
芝辻と一緒に無に還してしまった!!!
「いや、この窮地を救ってくれただけ有り難い…感謝のしようもありません…」
「いや、結局沢山の人を救えなかったにゃ…」
「お二人が来たときには手遅れだったのです。それでも一縷の望みを託して分身を飛ばして生存者を探してました…」
「あ、それで空を駆けていたのか!」
「はい、それに首輪で激しく戒めを受けていたので声も出せず、余計な事をすると首輪が棘で私も周囲も殺そうとしてきました」
九尾の尻尾から沢山の人が出てきた…が五十人もいない…
「おねえちゃん!」
「おとき!よく生きてたなぁ…よしよし」
良かった…おときちゃん
「街を再建するなら《社》に言って下さい!救援物資等送ります!」
「それは有り難い…街の再建は難しいでしょうが、この子らと頑張っていこうと思います…亡くなった皆が喜んでくれる様な新しい街に…」
「また悪さする奴がいたら、懲らしめに来ます!」
「こんこん!」
「にゃんにゃん!♪」
「にっにっ!!」
「おときちゃん…元気でね!また遊びに来るからね?」
「元気でにゃ♪」
「にに!」
「またきてね!おねえちゃんたち、コロちゃんばいばい!!」
あ、スキルを貰えた…こ…これは!
「月花も同じもの貰えたかにゃ?♪」
「うんうん♪」
「ちょっと心が疲れたし…」
「帰ってすぐ使うにゃー!♪」
帰るともう夜だった。
今日は六花ママの得意のオムライスが出るらしくて、パパ、ママ、小町ちゃんの三人が我が家にいた。
扉が開きコロちゃんと、ミニサイズの九尾の狐と九尾の猫が入ってくる…
「え、何このもふもふズ!めっちゃ可愛いー♪」
「なになにー?おおお!何このもふもふズ!コロちゃんの仲間?」
姉妹でネーミングセンスが一緒!!!
六花ママの胸に九尾の狐が飛び込み、小町ちゃんの胸に九尾の猫が、パパのとこにコロちゃんが座る。
「めっちゃ尻尾振ってるー可愛すぎ!♪」
「しっぽぶんぶんー!♡…でも、二人とも化けても匂いは変わらないんだからね?」
……ぼふんっ!
私も式部もママにハグしている状態に戻る!
「年頃の女子はそんな匂いしませんー!」
「しないにゃー!♪」
「ふっふっふっ、ママズ舐めるなよ!我が子なんだからすぐ分かります!」
「その通り♪」
「オムライス作るから二人とも手洗いうがいしてらっしゃーい!」
『はーい!』
食事の後、今回の事件の凄惨さを話し、少ししんみりする。
「自ら《社》に依頼して、管理人を殺そせようとする陰湿さ、町の人を生きたまま殺すという残忍さ、罪悪感を植え付けるとこまで計算する下衆だったよ…あの芝辻罰って奴…」
「何…芝辻罰だと!?」
パパとママが嫌な顔をする。
「そう言えばパパとママに復讐するから力を蓄えてたとか…」
「昔、色々な事件を起こした奴だ…呪いを駆使し、呪いで攻撃し、自分が負傷したら呪いで他人を臓器以外を乗っ取り生きながらえてきた奴だ。自分が高貴の出だと言い、子孫を残す事に固執していた」
「私にもママの血が流れてるから、お前が私の子供を産めって言われて寒気走った…」
ママが後ろに来てハグしてくれた。
「怖かったね…よしよし」
ママが震えている…聞かないけど怖い目に合ったんだろう…ママの手を握って互いを勇気付ける。
「まぁ…式部がキレて大活躍だったから、助かったけどね!」
「月花、倒したか?」
「うん、大量殺人して平気な顔して子供産めとか生理的に無理だったから、脳を真っ二つにしてビームで焼き殺したし、刀に付いてた肉片や血も塵にしたよ!」
「……あいつは百年以上も他人の身体を奪い、生き長らえて来た。俺が仕留めたと思っていたのだが、プライドを捨てて脳だけで生きるとは、想像以上の生への執着だ」
「もう、脳を塵にしたから大丈夫だよ!安心して!」
「月花…パパ怒ってる訳じゃないぞ?」
「ん?」
「確認をさせてくれ。芝辻のスキル履歴を見たか?技術破壊や、技術強奪で奴の所持スキルをゼロにしてから倒したか?」
「………見てなかった…」
「千人前後の人間のスキルがゼロだった、これは逢禍だから分かるが、もしかしたら殺される前その人の中に、塵にされても戻れる様なスキルがあったかもしれない。スキルショップのスタッフも逢禍だったとしたら、カタログのスキルも全て奪われてたのかもしれない」
「……くっ…私が甘かった…」
「怒ってないし可能性の話だからな?俺達は奴をよく知っている。だからこそ可能性の話を敢えて口にした。もし、ホームワールドであるここに戻るなら、俺が確実に倒す。月花も式部ちゃんも、万が一二度目があったならスキルを破壊し、奴の可能性を潰してやれ」
「うん…」
「わかったにゃ!」
「月、自分で言って自分で凹んでるー♡」
犬沢池のベンチで肩を落としているのを六花が慰めに来た。
「いや、俺も悪いんだ。あの子達の能力の高さを見て安心していた。二人とも逢禍の察知能力がないのに…」
「でも二人とも力を合わせて乗り切ったよ?私達の子だもん!」
「落ち込んでるかなぁ…?また冷たくされそう…」
「ぷ」
「あはははは!♪」
「え、二人ともいたのか?」
「六花ママに隠れてついてきたにゃー♪」
「冷たくしないし!弄るけど冷たくしてないもん!」
「弄るのは弄るんだな……って小町も笑い声聞こえてる!」
「ふふふふふ♪」
二人の子供がハグで俺を慰めてくれる。
この温もりを守る為に、もし奴が生きてたら引導を渡す!
「そう言えばライトニングコロちゃん大活躍だったよ!」
「……何それ知らない」
「コロちゃん、ライトニングスタイル!」
掛け声でコロちゃんに電気が迸り、縦横無尽に空を斬る!
「コロは月花のお姉さんになってから更に強くなったな…」
「寿命も進化も留まることを知らないコロちゃん!♪」
「まぁ、月花のお姉さんだもんね♡」
「ににっ♡」
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