第14話 Witch without a face

『全員下がれ!』



 私と式部の言葉で機械仕掛けの神デウス・エクス・マキナ二体とフレキ・ゲリが下がる。


 相手は黒白離れたまま、私達とは距離を取ってる。

 白の方は刀が再生している。



「…少し事情が変わった。貴方達には何の関係も無いが…私達の家族の命がかかってるんだ…一分で終わらせる!」



 名前の無い刀を腰に構え、抜刀の低い姿勢で溜める。

 身体が熱くなる…漏れる吐息すらこの高温の砂漠で蒸気する!



 機械仕掛けの神が黒と白に一体ずつ襲いかかる!

 二人とも両手にガトリングガンを突然出し、不意をつけたのか相手に一発ずつ被弾させた!


 フレキとゲリが喰らった攻撃を…黒敵に一点集中で反転攻撃させる!

 喰らった技の増幅・反撃させるのがフレキとゲリの能力!



「原点へ回帰せよ!ミーミルの泉!」


 流れる様に水となった魔槍が黒敵に纏わりつき、相手の死角から槍に戻り腹を貫いて地面に突き刺さる。


「…名も無き…次元ネームレス・レヴェル!!!」

 私も黒敵に向けて技を出す!



 さっきアンタは黒敵をかばいに行った。


 だから、また来ると思ったよ!


 技の到着を白と黒が重なる瞬間に合わせる!


 二人とも一刀両断、魔槍と機械仕掛けの神は上手く避けて斬った。

 断面から別次元に吸われていく黒と白。


「…よし!」

「後はあいつを!」


 突然!


 背後に湧いた、控室の女が短剣で式部を背後から貫く!



「式部!!!」

 肩を貫通するまで刺された!

 空間移動か!



「うんうんうん、コーティング効いてないのに頑張ったねー?」


名も無き一撃ネームレス・スラスト!」


 電光石火の突きを放つも、また空間移動で隠れた!


「道理で履歴の閲覧禁止ブラウズ・バンを付けてる訳だ。やましいことだらけだったんだな?神殿こどのインダストリアルの男も配下か?」


「よーく分かったねぇ?そうよー?この大会が終わったら死ぬ様にスキルセットしてるけどね」


        …ドクン



「……お前…お前!種の事件…あれもお前かーっ!?」




 死ぬほど嫌な顔で

         ニヤリ

            と笑う女!




「お前が岡崎君を!」

そそのかしたのかーーーっ!」

 こっそり死角で準備していた式部が、刺されて動けないながらも魔槍を女の背後から飛ばし、女の腹と砂の大地を縫いとめる!


「ぐああああああああぁぁあああぁ!」


 そこに、突然黒と白の人が現れて刀で相手の動きを制御する!

 助かるオセロコンビ!


「空間転移してみろ?次元の狭間を永劫に漂わせてやる。小花ちゃんを返せ!」


「くっ…餌の役割として以外は別にどうでも良かったから…適当に監禁してるし探したら?…天地開闢ビギニングオブアース!」


 突然、爆発と閃光が女を中心に放たれた!


 衝撃が大きい!

名も無き疾風ネームレス・ゲイル!」

 高速移動技で式部を抱えて退避!!!


 動画の逆再生の様に一瞬で爆発が収束するが、女は空間転移で消えていた…


 黒の人の刀に血が付着してるから一撃入れてくれたんだろう…いい腕の人だ。


「月光の相愛!」

 回復呪文だが、思い人なら効果アップのスキルで式部の傷を癒やす。


「大丈夫?」

「うん、平気っ!♪」


「オセロの人有難う!」

「私達、家族を探してて…なんのお礼も出来ないですが…」

「助けてくれて有難う御座いました!失礼します!」


 二人で急いで飛行結晶で飛んで帰るのをオセロさん達はただ静かに見送ってくれた。




「お、控室に来たらしっかりスキル封印は解けたな!助かる!」


「月花!コル…何とかさんが三つ編みの制服少女と猫が暴れてるから助けてって!」


「流石!小花ちゃんとコロちゃん!」



 調べたところ、神殿こどのインダストリアルはそれ程遠い場所じゃなかったので、アナザーバースから戻り、全力で飛んで行く!


「見えた見えた!」


「あの事故ってる感じのビルだねー♪」


 至る所にレーザートラップで焼き切れた外壁とコロちゃんの炎と思しき火災が発生していてもう消防車が十台位来ている!


 割れた窓から侵入し、中を見るとホラー映画の悪役がうろついていて絵面がとんでもない事になってる!


 危機感知!

 レーザートラップだ!!!!

 式部を抱えて名も無き疾風で躱す!


「ちょ!小花ちゃーーーん!迎えに来たよー!」

「来たにゃー!♪」

 怖いので物陰からアピール!

「あ、お疲れ様。脱出のタイミングはこんな感じで良かった?……って二人とも泣かなーい!私は無事だから安心して。他は知らないけど…」


 身内にゾッとする私と式部!


 家族チャットで「小花ちゃんゲット」と送ったら全員から「おかえり」って来た!


「おおーい!」


「あ!コル何とかさん!見つかったよー!有難う!」

「おう!スマホ、お前のだろ?あと…俺のサインやるよ!」


 やべぇ…世話になったから下手に断れない!


 ぽいっ!

 コル何とかさんの目の前で、床で燃えてる炎に色紙を焚べる小花ちゃん。


「有難う…感謝する。何かあったら借りは返すから言って頂戴」

 コル何とかさんを格下の様に話す小花ちゃん。



 その後、一旦うちの家に連れて帰り、皆で再会を祝した!


 本当…良かった……




 神殿こどのインダストリアルは警察の捜査が入り、監禁された部屋は工事閉鎖されていて密室になってると気づく人間はいなかったらしい。


 二回戦で戦った男は……残念ながら神殿インダストリアルのビルから落下死しているのが発見された。

 この人も岡崎君の様に利用された犠牲者なのかも知れない…



「小花ちゃん!」


 パパとママが戻ってきた!

「良かった…小花ちゃんは二度目が無い様に自衛スキル渡して置かないとな」

「月巴ちゃん、六花お姉ちゃん有難う!」


 おじいちゃん、おばあちゃん達も来て、小町ちゃんも少し仕事を抜けて来てハグハグしてる。


 家族が揃ってるのは…やっぱりいいなぁ…

 こっそり式部と手を繋いだ。



 決勝戦で襲ってきた魔女は…警察に連絡し《社》に入社した経緯等を調べて貰ってる。

 岡崎君の件も、小花ちゃんを攫ったのもゆるさない!


 あ、ママが私達をハグりに来た!


「二人も無事で本当に良かった…」


「ママ、有難う!」

「六花ちゃん有難うにゃ♪」


「まさか二人だけデスゲームになってるとは思わなかったからな…」


「パパ、見てくれてたの!?」


「うん、捜索しながら見てたよ。二人とも強かった!」


「褒めてもらえた!」

「嬉しいにゃ♪」



 夜は皆で食べる事になって、オアシカ・カフェが閉店するまで少し待ち、小町ちゃんとうちのおじいちゃんが料理をしてくれる。

 プロの料理人だから間違いなく美味しい奴!!


「小花ちゃん、コロちゃん、本当無事で良かった…」

「ねー、あれだけ暴れて死人ゼロは良かったにゃ♪」

「コロちゃん偉かったぞー!それでこそ私のお姉ちゃん!」

「にににー♪」


「誰が犯人か、誰が無実か分からないから下限したけど…バイオな奴の三作目みたいなバトルしたかった…」


「ビルに入った時は小花ちゃんより、周りの人の方が可哀想に思えたにゃ♪」


「式部は後で激辛チャーハン作るから完食してねっ!♡」


「小花ちゃんウソにゃ!いや言葉のあやにゃ!!」





 食事が終わり、おじいちゃん・おばあちゃんズが帰り、コーヒータイムで皆一息ついていた。


 バァン!!!

『ぎゃーーー!』


 吃驚して悲鳴を上げる私と式部!!!


 誰!?ヒールでドアを蹴り開ける奴!!!


 勢い良く入ってきた人はセミロングの黒髪、キツイ目つき、タバコを咥えた…警察官?


「…私だ」


「誰!?」


 突っ込んだら、睨まれた!

 目が恐ろしくキツイ!

 近寄ってきたー!


「月花、式部か、大きくなったな」

 頭を撫でてくれたけど圧が凄い!!!


「美姫さんお疲れ様」

「美姫先輩お疲れ様です!」

「美姫先輩いらっしゃーい♪」


 パパ、ママ、小町ちゃん、三人とも心なしか笑顔が強ばっている!


「小花、今回の事件で話を聞きに来た。少しだけ事情聴取させてくれ」


「わかりました」


 小花ちゃんは本当に物怖じしないなー…



『パパ…あのエグい人誰?』

『言い方!奈良警察署署長の南城戸みなみきどさん。六花と小町の高校の先輩で、そこらの軍隊より強いから敬語で頼む』


 南城戸…最近聞いた様な…気のせいか。




 けど…無事に終わった…


 疲れたけど、あの女は…まだ何かある。


 隠しているが、あの女の怨嗟は私達に向けて連綿と続いてる。


 早くあの女を特定して捕まえなければ!





「二人とも寝ちゃったねー!オセロコンビもお疲れ様♪手加減難しかったでしょ?♪」

 小町が月巴と六花にカフェオレを可愛いティーカップで渡した。


「決勝が俺達で良かったよ、他の相手だったら死んでいたかも知れなかった」


「私の技で月花が怪我した時は冷や汗が止まらなかったよ…かなり動揺しちゃった…」


「安全なゲームを想定してるから手加減をしない…月花と式部ちゃんを狙ったのか…もしかしたら俺達の事がバレていて、俺達の手で殺させる事まで想定していたのかも」


「悪質だなぁ…相手の心当たりは?」


「容姿は俺も六花も記憶がない。ならこの子達なのか…」


「標的は私達家族…小花ちゃん以外の誰か…」


「もう俺と六花、月花と式部に絞った方が早いかも知れない。笑いながらも底知れぬ殺意だった」





 気がつくと朝方だった。


 疲れて寝てしまったのか、人を台無しにするソファを並べて私と式部が寝ていて、パパとママはいつものベッド、小町ちゃんが私のベッドで寝ていた。



 慌ただしい一日だったが、誘拐騒動とかが無ければ試合は意外と楽しめたのかもしれない。


 あ、賞金とスキル貰ってなかったな…


 矢張り式部が危ない時に私の命をかけても絶対助けられる様なスキルが欲しいな…



 式部が起きてからメールチェックすると、授与されるスキルリストのリンクが送られてきていた。


「式部、何もらう?」


「今の自分に足りない物…若しくは今回の事件で不便だった事を考えてるー♪」


「やはりそうなるよね…巨乳化とか高身長スキルみたいなのはないのか…」


「そっちの足りない物だったー!♪」


 結局お互いに内緒にして一個ずつ貰った!


 式部は回復系かなーと推測!


 もう一つの賞品である依頼報酬のベースアップは楽しみにしておこう!




 お昼になってから、また《社》からメールが来た。


 あの女の履歴書から住所を尋ねると本人が出てくるも、全く関係ない別の会社に勤務で出勤の裏付けも取れたとの事。


 つまり、リアルなりすまし!


 容姿も住所も名前も全て偽物だった。


《社》社内で親しくしている人も居らず、会話は最低限。

 ただ、スキルの研究部門への転属希望を申し出ていたので、スキルを狙っていた節はある。

《社》もそれ位は分かるので余程有能で身元や履歴が綺麗な人物じゃないとスキル管轄系には配属されないらしい。


 けど、ママと小町ちゃんの親友がさくっと《社》に入ったらしくて、二人とも滅茶苦茶吃驚したらしい!



 しかし、あの魔女の手掛かりは無しかぁ…


 犠牲者が増えない様に早く捕まえなければ!

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