第11話 separation

「依頼?今度はどこの世界?」


「ここの世界なのだよー♪」


「と、いう事はスキル悪用絡みかにゃ?♪」


「そうなのだよ愛娘!♪しかも地元!近鉄奈良駅の道を北に真っ直ぐ行ったら左手に神眼寺しんがんじってお寺があるんだけどね。そこって縁切り寺なんだけど、どうもそこから縁切りスキルが発生しちゃったみたいで…所有者は不明、スキルは縁切りだけど、様々な縁を切ってしまう」


「様々な縁?」


「例えば人間関係、例えば恋、例えば死相…良くも悪くも使ってるみたいだけど前任者は追う側の縁を切られて発見すら出来なくなった」


「縁に例えれば何でも切れちゃいそう…パパと仕事の縁とか…」


「お仕事無くなるから止めなさいっ!」


「今回は式部はお休みね?」


「えー!なんでー!」


「…二人の縁切られたら困るじゃん///」


 全員にヒューヒューされた!



機械仕掛けの神デウス・エクス・マキナもいるし、一回位なら大丈夫でしょ!」


「またそんなヤバそうなスキル手に入れたのか?」


「大丈夫だよパパ!スキルになったらいい子だから!」


 機械仕掛けのデウス・エクス・マキナを呼び出す!


 金髪半裸のイケメンが出てきて一同おおおおってなる。


 ひざまずく機械仕掛けの神。


「胸と背がない主よ、何用か?」


 スリッパで殴って、すぐ引っ込めてやった!




 次の日、すぐに縁切りが発生してると思われる中学校へ向かう。


 うちの中学じゃないのがめっちゃ新鮮!


 教室も何も分からないのでまずは職員室へ行くとすぐに悟られたのか、校長室へ案内される。


 中へ入るとカーテンも締め切られていて、情報漏えい対策もしてくれていた。


「おはよう御座います、《社》の方。…鹿鳴ろくめいさんでいいのかな?」


「はい!」


「私が校長の神功じんぐうです。事の起こりはどこからだったのか推測が付かないですか、気がつくと広範囲で人の不和が発生して手がつけられなくなっています。噂によると人間関係が嫌だった人が神眼寺で願掛けした処スキルが手に入ったとか何とか…」


「分かりました。で、今回は潜入捜査ですか?」


「いえ、悟られるとまた縁を切られてしまうので、潜入せず監視でお願いします」


「成る程、分かりました!因みにお二人のスキルの履歴を拝見しても宜しいですか?」


「え?あ、うん、どうぞどうぞ」


 …おい聖職者!なんかハッキリしないと思ったら…大人って汚れてる!


 まぁ、無実なのは分かった。


隠密追跡ハイド・アンド・シーク…」


 スキルで消えた後、校舎の外から授業中の生徒を履歴謁見ログブラウズで見ていくが…地味に手間がかかるのと、人間不信になりそうなスキル持ってる人が沢山いてる…


 隣のクラスにスライドしたら、女子が着替え中だった…

 いや、私も女子だからやましい事ないのに、窓一枚挟むだけでとっても罪悪感に駆られる…現代病なのだろうか?


 同性だし、履歴謁見ログブラウズはするけどね…

 異常なし!

 だが巨乳は滅びろっ!

 個人の意見ですっ!


 まだ全てを見回れた訳じゃないけど、なかなか良いペースで見て回れたと思う。

 問題は偵察を悟られてスキルの使用を控えて潜伏される事!


 それだけは避けたいから、バレない様に進めなければ…

 ただでさえ一度見つかって警戒されてるみたいだしね。



 放課後まで履歴謁見ログブラウズしていたが、今日は発見に至らず…寧ろ私が若干人間不信になる結果に…人間て汚れてるっ!


 と、突然隠密追跡ログブラウズと結晶飛行が解けた!


「蜘蛛の銀糸!」


 屋上のフェンスに繋ぎ、外壁に上手く取り付いたが…下を見ても下校中の生徒しかいない。

 私が気づかれた様子もない…


 だが…


 潜入捜査だと思って学校のスカート履いてきたから、上を見られると丸見え!


 兎に角静かにやり過ごす…



 ん?喧嘩してる男女がいる…さっきのスキルはあの二人に向けた物か?


「天を識る瞳!」


 その二人をズームして見てみる…

 顔は覚えたが、会話内容は分からない。


 お、結晶飛行が戻った!

 隠密追跡ログブラウズも再度使用する。


 やはり不審な人物は現時点でいない…


 この日は部活が終わった後、校門が閉められたので撤収した。




「ただいまー」


「おかえり、ずっと他人をうたぐるのって辛かったろ?」


「うん、パパ…精神衛生上良くないね…特にね…周りが巨乳多くてね…」


「パパの胸でお泣き!」


「有難う!パパのまな板で泣く!」


「胸板ですって否定出来ない…」


「月花はパパに似たのかなー?ママはそれなりにあるのに…」


「大丈夫!パパと同じ道を辿らない様に頑張って巨乳になる!」


「月花、最近パパを弄るの上手くなったねー♡」


「俺、家庭内ヒエラルキー最下位だからいいんだよ…」




 時間になったので小町ちゃんのとこでご飯タイム!


「小町ちゃんお疲れ様でーす!」


「いえー♪まだまだチャットアドレス聞かれて止まらない小町ちゃんだぜー♪」


「お姉ちゃんのモテ期いつ止まるの?」


「うーんいつかにゃー?♪」


 私は式部にハグハグされてる!


「月花大丈夫だった?ナンパされなかった?」


「隠密行動してたからそんな隙ないよー」


「月花をナンパする奴は…魔槍の餌食に…」


「しちゃ駄目だって!浮気しないから」


 またハグハグされる。



「なんか昔の六花を見てる様なハグっぷり♪」


「隙を見てハグしようとして逃げられてたなー」


「で、ママ!アドレスくれた人の中にイケメンとかいた?」


「いたけどアドレスは全部捨てたよー?パパ以外興味ないからね♪///」


「一途過ぎる!♪」


「小町が真っ赤すぎる!」


「うっさい月巴つきは!たまにそういう事もあるの!///」


「お姉ちゃん本当に一途だねー!」


 表面上和気藹々わきあいあいとしてるけど、その実とんでもない爆弾話をしてるなーと冷や汗を掻く式部だった…




 夜、就寝前にコロちゃんを額でお供え物にして考える。


 ① スキルの具体的な入手情報が出ているのに、対象が特定されていない。

 ② 放課後男女の喧嘩の時、スキルが上空の私にまで及んでいた。



 ①に関しては情報操作されているか、どこかでフェイクを入れられている。

 ②に関しては対象を取るスキルだと思っていたのだが、余波が来ているという事は対象指定が特殊なのか、それとも対象から範囲がドーム状に広がるのか…

 それだとあの時校庭にいた全員が喧嘩になってる筈…


 スキルに関しては複数対象は無くはないが、スキルのタイプとしては複数対象ならば無差別すぎる。

 朝早いけど、早朝から見張ってみるか…




 早朝…少し冷えるかな…

 ふとスマホを見る。

 朝六時過ぎ…待受は式部とコロちゃん…尊い…


 え、先生が登校し始めてる!

 矢張り先生って大変なんだなぁ…


 校門が開いて朝練の生徒がチラホラと入って来た。


 時間を開けて、日直なのかな?生徒が登校し、そこから続々と人が来る。


 ここで履歴閲覧ログブラウズで調べても二度手間なので授業が始まるまでは見張りに徹する。


「ふざけんな!」


 ん?体育館の方かな?


 見に行くとバスケ部のメンバーが口論から胸倉を掴む喧嘩にまでなっていた!

「お前が出来ねーから俺がやってんだよ!」

「違うね!お前に才能ゾーンがねーからだよ!!」

「前回負けたのはお前がいたからだよ!」


 おいおいおい、バスケ部がドッジボール部になってるぞ…

 姿を現していいなら止めれるんだけど…


「あ、バスケ部また、やってるわよ!」

「皆…あの技を使います!」

 ん?バドミントン部が何かしだした?


METEOR SHOWER流星殺!!』

 パパパパパパン!!と打ち出したシャトルコックがバスケ部に一人一個命中し気絶する!!!


「正義は執行された…皆帰りますわよ…」

『はい!南城戸先輩!!』



 ……え、何だったのあのバドミントン部…?

 中学校直属の殺戮部隊かな?



 倒れているバスケ部の方々は全力でそっとしておく事にした。




 授業が始まり、昨日チェックしてなかった教室をチェックする。

 あとは昨日今日と休んでる生徒を教えてもらってチェックすれば殆ど完了する!


 ん…あれは昨日喧嘩していた女子…

 一応、履歴を見ておこう。


【乱反射】

 スキルの対象になった場合、それを跳ね返す。

 跳ね返す対象はランダムに選ばれる。




 これは…自らが対象になる事を知っている…?

 昨日のはたまたま防御手段として使用して私に反射したのか?

 いや、これは常駐スキルか!


 この娘はキープしておいてまずは他の生徒をチェックしよう!




 放課後、殆どの生徒をチェックし終え、例の乱反射スキルをもっている女子と学校外でひっそり接触した。

 おばあちゃんちの近くに公園があるのでそこのベンチでお話を聞く。


《社》の身分証明書を見せると少し安心してくれた。

 この身分証明書はこの世界は愚か、アナザーバースでも通用する。

《社》の権力がやべー企業みたいで若干不安を覚える。

あと、頭の上のコロちゃんが安心感を与えまくっている。


「時間をくれて有難う!私は月花…鹿鳴月花ろくめいつきかです!」


「私は…山陵美佐みささぎみさです…」


「単刀直入に聞くけど、誰かに狙われてたり、身の危険を感じたりする覚えはない?私はそれを調べに来たの!」


「!…あります…突然周りの人が怒ったり、疎遠になったり、友達も話を聞いてくれなくて…」


「そっか、辛かったね!なるべく早く解決するから、最近喧嘩した人とかいてる?友達、彼氏、小さい事でもいい!お寺でスキルを貰った人に心当たりがあるならそれでも…」


「彼氏とかはいませんが…スキルを頂いたのは私です」


「え、美佐さんが!?」

「私の乱反射というスキルが誤動作したみたいで、スキルが消えてしまったんです…」


「その時、一緒に誰かいませんでしたか?」


「一人でした…ただ、最近変な手紙を貰うせいか視線を感じたりはします」


「手紙は…どんな内容ですか?」


「最初はラブレターだったんですが、途中から性的な内容に…手紙もパソコンで打ってるみたいで見当がつかなくて」


「マジキモい!絶対見つけるから安心して!!!」





 三日目、放課後。


 先生が何人か帰宅し始める。



「先生…」


「山陵さん、どうしました?」


「今日の授業で分からない部分があったので、少しだけ教えて頂けませんか?」


「あー…分かりました。教科書は教室?では教室へ行きましょう」



 教室につくと先生は閉校前だから、と戸締まりのチェックをし始め、最後に内側から鍵をかけた。


教科書を見せて指を差す。


「先生ここなんですが…」


「そこは後で勉強しよう!」


 突然山陵みささぎさんの身体を強く掴んで押し倒す!


「やはり君は美しい…私が選んだだけの美しさだ!」


 制服の中に手を入れようとした瞬間、隠密追跡スキルを解除し、蜘蛛の銀糸スキルで全身グルグル巻きにする。


「美佐さん、こっちへ!」


 黒板前に立たせて結晶技・花鳥風月で壁を作る!


 その時突然糸が燃える!

 火系スキルを持ってるのか!


「くっそ……誰だ貴様!」


「≪社≫の使者だ!規律を正しに来た!」


「くそぉ!怨嗟えんさの火球!」


消去イレイズ


「流れる水毒!!」


消去イレイズ…もう止めて下さい。先生と私の戦力差は那由多なゆた程あります」


 次に出したのは日本刀!

 スキルで出すタイプもあるのか!


「貴方を切って、私は彼女と子供を作り幸せな未来を築く…そういう運命なのです」


「だから学校全体に不和をばら撒くと見せかけて、泣きついてくるまで彼女をピンポイントに攻撃し続けたのか!?歪んでる!!」


 名前の無い刀を取り出し対抗するが…


「迂闊にも武器を出したな!縁切り!」


 ………何も起こらなかった。


「縁切り!縁切り!何故効かない!」


「私の装備は殆ど異世界で手に入れたものだ。異世界の縁切りは出来ない様だな?」


「それなら貴様とこの世との縁を切ってやる!!!縁…」


「痴れ者が!技術破壊スキルブラスト!!!」


「ぎゃっ!」


「貴様のスキルは全損させた。辛うじて実体化させた日本刀は無事みたいだけど…大人しく引くなら手荒な真似はしない」 


「私は剣術の心得はあるんだよ!ガキに負けるかぁっ!!!」


 大振りの上段斬り。

 技を使うと先生が死んじゃうから名も無き刀で受けるだけにする。


 刃が当たった瞬間、バターの様にするりと日本刀が斬れ落ちる。


 折れた日本刀が少し頬に掠ったが気にしない!



「解り易く言うぞ?お前は詰んだんだ。ここで引かないなら…その命を摘ませてもらう」


「目の前に私の理想がいるんだ!私は引かない!」


 ドン!!!


 突然窓の外から魔槍が降ってきて先生の太腿を貫いた。

「ぐぎぃぃだぁぁゃー!!!!」


 もー待機って言ったのに式部はー!


 魔槍は華麗に回転して何処かに戻って行った。



 花鳥風月を解き、美佐さんを保護!


「ごめんね、怖い思いさせちゃって!」


「いいえ、明日から安心して学校に通えます!」


「この後警察の事情聴取があるけど、私が殆ど説明しておくから大丈夫!動画も撮ったからこのメモリ、警察に渡してね!」


「はいっ!」


「それじゃ…元気で!学校頑張ってね!」


「月花さん………有難う!!!」


 最高の笑顔でお礼を頂いたから帰るかー!

 飛行結晶でふわっと浮いて、男を蜘蛛の銀糸でグルグル巻にして家路についた。





 夜のオアシカご飯タイム!


 パパ、ママ、私、コロちゃん、小町ちゃん、式部で反省会をする。


「結局今回は、対象の女性が軽いストーカー被害にあっていて、手紙が気持ち悪くなったから縁切りに行ったところ、縁切りスキルがポップした…」


「うんうん♪」


「だが、手待ちの乱反射スキルが誤作動で会得したスキルも反射した。ここからは想像なんだけど、犯人の先生、近くにいたからそのスキルを受け取れたんだと思う」


「うわー気持ち悪いー…」


「運良く手に入れたスキルを悪用・実験し、彼女を孤立させようと考えたが、彼女は乱反射スキルが常駐してるから、スキルの対象にならない。周りの近寄る男性の縁切りが出来なくなった結果、彼女以外全員を不和にして孤立させ、ワンチャン頼ってくるのを待ってたんじゃないかな?」


「男って怖いよねー♪」


「だが、結果として生徒は不和にしたが教職員を不和にすると自分が面倒になるから、それをしなかった。だから異常に気づいた校長先生が《社》に依頼をかけた。そんな感じー!」


「月花、お疲れ様」

「パパ有難う!式部も有難うね!」


「私は行けなかったけど、月花を傷つけた奴は刺す様に魔槍に命令しといたから、お仕置き出来て良かったにゃ♪」


「じゃー小町ちゃんが美味しいご飯作るぞー!ちょっとまってねー!♪」


 小町ちゃんの料理は100%美味しいから楽しみ!


「あ、月花、式部ちゃん!」


パパが改めて話を切り出した。


『はーい!』


「そろそろ二人とも、通り名とか二つ名を考えておこうか?」


「世紀末覇者とか黒の剣士みたいな中二病な奴!」


「世紀末覇者は発想がママと同じだから止めなさい。客観的に見て自分を体現してる名前がいいな」


「パパが間接的にいじめるー!」


 拗ねたママをさり気なく抱き寄せて機嫌を損ねないあたり流石だなーって思う私達。


「理由は簡単で、この世界の仕事をする時に『鹿鳴ろくめい』や『駒鳥鵙こまどり』と名乗ってしまったら特定されてしまう。つまり家族に被害が及ぶ可能性があるからだ」



「家族も友達も大事だから必要だね!頑張って考える!」

「る!♪」

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