第10話 銀の糸

「魔獣退治?」


「そう…この街の南…隣街は堅固な外壁があるにも関わらず甚大な被害があるそうなの…」


「ターゲットの情報は?♪」


「…なんかおっきくて痛そうな攻撃と紐で縛られる攻撃と…口からなんかやべーのを吐く…」


「最後しか情報が入って来なかったね」


「だが!小雪ちゃんは可愛いから許すのだー!」


「…もーふーらーれーるー!」


 なんか身内で久しぶりに会うから、昔話とかママやパパや小町ちゃんの話も聞いてたが、やってる事が余りに変わりがなさ過ぎて逆に笑っちゃった!




 翌日の朝。

 六人で食事を摂るが、ダーリンとコロちゃんのお肉の譲り合いが可愛いのなんの!

 癒やされるー!


 結晶飛行でサクッと目的の街へ!


 茨・小雪親子は何故か鎌にまたがって飛んでいる。

 以前パパにも聞いたが何故飛べているか謎らしい…


 さて、そろそろ街が見える頃………なんか砂煙が凄いな………攻撃されてるー!!!


 しかも物凄い数の魔獣!!!

 どうやって量産されたの!?

 街を集団で襲うのも理不尽過ぎる!


「3割ほど一気にやるからまだ降りないでねー!」


「はーい♪」



 魔獣が居てない端に降り立って、名前の無い刀を構える。

「…名も無き一閃ネームレス・フラッシュ


 街に掛からない様に光速で一振りし、光の刃が走り、魔獣が倒れていく!


「全て穿け!魔槍よ!」

 魔槍が生き物の様に魔獣達を貫いていく。


「…不審死」

 茨ちゃんが鎌を地面に打ち付けると突然広範囲の魔獣が不審死した!


「…轢死」

 小雪ちゃんが手を突き出し下に沈ませると、視界内の魔獣が潰れていく!



 思ったより私が掃討出来たから、残りの魔獣は比較的早く片付き、戦意喪失して逃げていった。


 それでも堅牢な外壁が傷んできているあたりに壮絶さがうかがえる…



 話を伺う為に街の中へ入る。


 街の名は堅牢なりし都市ライズラムダ。


 大きな街だが、魔獣の踏み荒らしで隣接していた森が可哀想な事になってる。


 入り口で身分証明書を提示し、街の中に入る。


 外観が殺風景な分、思ったより中は活気があり賑やかな街という印象を受けた。



「活気があるにゃー♪」


「見て!内側から鉄板で外壁補強してる!」


「あのサイズの石をどうやって積んだんだろう?」


「…ピラミッドと同じ位謎…」


「これだけ活気があるのに、埃?蜘蛛の巣が多いねー」


「…依頼人の街の長と会いに行きましょう…」




 いくつかの検閲を経て街の長と謁見する事が出来た。


「《社》の皆様、依頼をお受け下さり有難う御座います。私が長のグレインです」


「…では…詳細をお願いします」


「一ヶ月程前、魔獣が現れ、突然人を拐っていく様になりました。最初は、たまたま滞在していた冒険者の皆様が撃退して下さったのですが、それ以降も不定期に…しかも人を攫う数が増えておりまして…」


「…あの数で中に入られて…被害がかなり出たの…」


「数…?数は奴一匹ですが…?」


「…今、街の周囲を囲んでた魔獣を一掃してきたんだけど…間違いだった…?」


「…ああ!あれはこの時期繁殖する野生の牛ですね!街の周囲を攻撃するのは伸びすぎた角を折る為らしくて、折れたら元の生息地に戻る無害な生き物ですよ!」


「あれ見たら有害だと思うでしょー!」


「しかも折れた角からこの街の特産物を作ってるのでWin-Winですよ、はっはっはっ!」


「うう…ごめんね謎の野獣ちゃん…」


「月花、泣かないで!…あれ美味しいらしいよ!」


「ちなみに…ターゲットはどんな魔獣なのかしら?……」



「…蜘蛛です…」


『蜘蛛!』

 ハモった!


「巨大な女型の蜘蛛で、この街の真上に降りてきて、人を拐っては真上に消えて行きます」


「うえーなんか気持ち悪い…」


「もしかしたら子供の栄養の為かなぁ…?」


「…可能性高いわね…」


「ママが切りたくてウズウズしてるのわかる…」


 今まで出た状況等を詳しく聞いて配置を決め、近い宿屋を取る。



「皆、なんか美味しいもの探しに行こ!」


「いえあ♪ご当地グルメ見に行こー!」


『…おー!』


 クローンかな?って位ハモる親子可愛い!



 フードコートらしき広場に行き、ぐるりと回ると気になる物が…


[ワタリ魔牛のジューシー肉串]

    (先程入荷仕立てで新鮮!!!)



「…食ってやる事が最高の供養だぜっ♪」

 肩を叩かれて、一本買ってみる…



「…うっま!!!旨味、肉汁、適度な噛みごたえ!全てが口の中で渾然一体となってハーモニーが奏でられてる!」


 私の反応を見てから買いに走る三人を私は見逃さなかった!


「本当だー!すっごい美味しいにゃー♪」


「…これはなかなか…帰り雪に買っていこう…」


「きっと…雪ちゃん喜ぶ…」


「式部先生、今回のワタリ魔牛のジューシー肉串と、あったかほっとたこ串…ランキングはどっち!?」


「たこ串越え!!!」

「出ました!暫定一位!」



 ☆ご当地B級グルメランキング!

  一位:ワタリ魔牛のジューシー肉串

  二位:あったかほっとたこ串

   以下、乞うご期待☆(ゝω・)vキャピ



 結局肉串美味しすぎて一人二本食べた。

 カロリー高そうだが後悔はしない!




 その夜、作戦会議を立てる。


 蜘蛛は夜行性なのだが、どうも日中の出現ばかりらしい。

 あと、蜘蛛はどこから降りてくるのか?

 芥川龍之介の小説じゃあるまいし、どこか引っかかりがあるのか?

 空中都市とかあったらワクワクするなー!


 その日は就寝し、翌朝自分達の配置を実際の街を見て決める。

 連携は全員イヤホンを装備しているのでアドリブは効く!


 街の外壁や高台で待つも、そんなタイミング良く来るはずもなく夜になる。


 連携のイメトレをするにはいい時間だった。

 本音を言うとめっちゃ退屈だった。



 四人でご飯行って、また作戦会議。

 今日はご当地グルメのシチューだが、ワタリ魔牛が入ってて極上な味だった。



 その蜘蛛は何故昼間に来るのだろう。

 視力が悪いからなのか?

 この世界の蜘蛛は昼夜逆転しているとか…


 そんな事を考えつつふとテーブルを見るとダーリンとコロちゃんが武者修行中で、コロちゃんの技を全段ブロッキング後、幻影陣を決めるがコロちゃんもぬかりなく疾風迅雷脚を決めてていい戦いだった!




 翌日。

 持ち場から空を見ているとデカい蜘蛛が気持ち悪い程早い速度でぬるっと降りてきて引いた!

 上半身が美人の女性で、胸丸出しで大きくてなんか腹立つ!

 下半身はほぼ女郎蜘蛛でちょっと嫌だなぁ…


『来た!皆行くよ!』


『了解!』


 私と茨さんがメインアタッカー、小雪ちゃんが捕らわれた人の救出、式部がマルチフォロー役で、あとは臨機応変に行く!


 向こうの主軸は人々の拉致で、我々をゴミ位にしか思ってない筈!

 その隙に決める!


『シャアアアアアァァァァ!栄養ォヨコセ!』


 人を狙い、蜘蛛の糸を口から吐くが小雪ちゃんが素早く切っていく!


 しかし、下から見ると大きすぎて特撮映画みたいだ!


名も無き一之太刀ネームレス・ワン!!」


 高速移動中に一太刀で全てを斬る!


 節くれだった脚を右半分斬り落とした。


『餌が!餌如きが私の足をっ!!』



Requiescat in pace安らかに眠れ


 茨ちゃんの大技で鎌が高速で蜘蛛の周囲を回り、スライスしていく!!


『私ノ子達…』


 そういうとスライスされた全身が中央広場に落ちてきた。


 先に散らばったのか、蜘蛛の子が一斉に散らばる!


「式部、あれ使ってみよ?」


『最新スキル!りょ!』


機械仕掛けの神デウス・エクス・マキナ!』



 同時詠唱で、金髪の神が現れる!


「どうされた、小さきわが主?」


「今後、小さいは禁止!周囲に散らばった蜘蛛のデカい子供を殲滅して!人には危害咥えちゃダメだよ!」


「承諾した」


 あの強さは味方にしたら強い!


 頼りにしてるが、次小さいって言ったら存分にキレようと思う。


 見る限り一撃で決めてるから、掃討は早い筈!


『雑魚が終わったら完了かな?♪』


「…皆、上を見て…」



 

 上を見ると



 先程の蜘蛛が小さく見える程の



 蜘蛛の顔



「あれが降りて来たら被害が甚大に!!!」


「…倒しても肉片が街を潰す…」



 どうする!?


『我ガ妻ヲ殺シタノハ誰ダ…!』


 巨大な蜘蛛の足が一本街に降りてくる!


「式部!あの質量を貫通させずに飛ばせる!?」


『彼女の前で出来ない!は言わないんだぜ♪安全な方角にブチ飛ばすね!』


「茨ちゃん!塊で式部が飛ばすからワンカットお願い!私がその間に大技を決める!!」


『…私…蜘蛛の子退治頑張る…』


「小雪ちゃんいい子!」



 私の大技…発動まで時間が掛かるからそれまで皆を守って!


「…墜死ついし


 指二本を迫りくる巨大な脚の根元に伸ばし、横に切るとその場所が切断され落ちる!



「魔槍よ!王の力となり、魔物を追放せよ!!」


 茨ちゃんが落とした足に式部が魔槍を投げると、先端に特殊なフィールドが出現し、巨大な脚が街の外へ押し出されていく!!!


 さす式部!!


 充分な推進力が付くと魔槍が式部の元へ自動で戻る!


 便利すぎる!!


 二回目、三回目、と脚が切断され飛ばされていく!



小癪コシャク!動キヲ止メヨ!!」


 蜘蛛の糸が正確に茨ちゃんと式部を捉え拘束する!



 だが、蜘蛛の子の掃討が終わったのか、機械仕掛けの神デウス・エクス・マキナと小雪ちゃんが拘束を斬り払った!!


 再度、蜘蛛の糸が放たれるが、小雪ちゃんの障壁、花鳥風月で全て防がれる!



 そろそろ…行ける!


「ごめんね、棲み分けで貴方と私達は共存が難しい…次は皆、人に生まれて来てね…」


『マルデ我ニ勝利出来ル様ナ物言イ…笑止』




名も無き次元ネームレス・レヴェル!!!」



 地上から蜘蛛の顔面まで一瞬で詰め、一刀両断した!!


 斬った顔の断面の内側に別次元への片道切符が開かれる。


 これだけ巨大だと吸われるのも遅く感じるが、一切痕跡を残さないので、下の街への被害はゼロだ!

  



 あ 落ちる


 力を使い過ぎた


 式部が飛んでくる


 あれ 飛行結晶付けてないのに


 そか 小雪ちゃんか







 事が済んで、月花を宿屋まで運んで、休憩する。


 月花にはママ特製の薬を飲ませたので、すぐ回復するにゃ♪


 それよりも今は…咄嗟に結晶飛行を使ったので


 パ パ ば れ る !


「これが小町の願いだったのね…納得…」


「…ママ、どういう事?…」


「…大人の話…式部が結晶使えるのは…絶対ナイショね…」


「はぁい…」



「茨ちゃん、小雪ちゃん有難うにゃ♪」


「…寧ろ、式部が一番大変だもんね…」


「いいんだー!ママ大好きだし、あんな感じだから諦めてるにゃ♪」


「いいこね…」




 休んでる間に、人々は絶望に打ちひしがれ…る事もなく、広場に落ちた女郎蜘蛛の身体を再利用、若しくは食べれないかと強かに画策していた。

 腹の中から攫われた人が出てきたのは吃驚したそうだ!


 遠くに飛ばされた脚も表皮を剥して何か作れないかと思案している。


 アナザーバースの人々はどこも逞しい。


 多少の苦境も創意工夫で何とかしようと肩を組める強さ。


 頭でっかちな現代社会の一部の人々に見習って欲しい。




「……ねむ…」

 疲労で朝まで寝てしまった…


 ちょっと狭いベッドで向いてる角度も違うのに、きっちり式部が寝ぼけて横でくっついて寝てるのが凄い。


 ちなみにコロちゃんも一緒に寝ている。


 あ、新しいスキルを貰えてた。


【蜘蛛の銀糸】

 掌から蜘蛛の糸を発射出来る。

 強度、長さ、伸縮等は自在。

 但し、火には弱い。


 ほー!使いやすそう!

 蜘蛛男ごっこ出来そうだし、捕縛にも使えそう!



【天を識る瞳】

 半径5キロ以内なら倍率を上げて何処でも見る事が可能。

 但し遮蔽物を見越す事は出来ない。



 成る程、望遠鏡スキル!


 こっちも使えそう!




 隣を見ると、疲れているのであろう式部がぐっすりと寝ている。

「式部…有難う」


 おでこをくっつけてもう少し三人で寝よう。



 起きてから街の長に退治と、対象が二匹いた事を報告。


 追加の報酬も貰える事となり、宿に帰る前に新しいご当地グルメ「蜘蛛饅頭」は如何?と勧められて全力で首を降る四人。




 ホームに帰って報酬の精算したら、茨ちゃんが持ってきてくれる事となった!




 式部と一旦家へ集合する事になって、家に入ると柔らかい空気の可愛い女性がいた。

「わー!雪ちゃんだー!」


「月花ちゃんに式部ちゃんもお久しぶりですわー!」


「さっき茨ちゃんと小雪ちゃんと一緒に仕事してきたよー!」


「あら、偶然だったのですねー!」



「二人ともおかえり!」


「二人ともおかえりなさい!」


「ママ!存在感が微妙に出てきたパパ!ただいま!」


「ただいまにゃー♪」


「月花、パパそろそろ泣いちゃうから認知してあげなさい?」


「認知するには、1.0k以上のギフトアイテムを送って下さい」


「ライブアプリかっ!二人とも無事で良かったよ」


「…ライブアプリに雪を投稿したら伸びるかやってみたい…」


「茨ちゃん、小雪ちゃん、おかえりー!」


「はい、今回の報酬よ…」


「…封筒が分厚い!!!」


「…あったかほっとたこ串が何個買えるのか…」


「あ、二人にお土産!」


 ワタリ魔牛のジューシー肉串を渡す。


「私もママに渡してくるー!」


 雪ちゃんも茨ちゃんに貰って食べ始めた。


「旨味凄いお肉ね、これ!」


「アナザーバースの素材はイノシン酸やグルタミン酸が豊富なのか…?美味すぎる」


「肉汁でお口の中がパラダイスですわー!」



「うん、これめっちゃ美味しいねー!仕入れルート作って売ろうかしら…♪」


 知らない内に小町ちゃんもいた!



「そうだ!式部、月花ちゃん、二人に依頼が入ってるわよ!」


 依頼続くなぁ…学校行けてない…

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