甘んじるのは臆病だからだ。
俺は何がしたいんだろう。
思えばいつもそうだ。
何がしたいかと言われれば、そんなものはどこにもない。
何か楽しいことをしても、それは結果的に楽しかったのであって、したいことじゃない。
俺は一生見つからない気がする。
人生が長く感じる。そこまではいかなくとも、少なくとも今日は長く感じる。
俺は俺がわからない。
話せないと思ったら、ある程度話せる時もある。
二極を行ったり来たり。うまくいってるなと思えば、次はうまくいない。
俺はいない方がいいんじゃないか、なんてことは何回も思ってきた。
だから塞ぎ込んできた。塞ぎきる前に白波が引っ張り出してくれた。
流れに乗れさえすれば、あとはこの両極から抜け出せると思ってた。
でもそうじゃなかった。
いつもそうだ。こっちで一生いいと思ったら、憧れているとことに連れ出され、放っておかれる。だから、ついてこなければよかったと思う。
俺は部活をやめようと思った。
シャワーの音が聞こえる。
いつもは聞こえない。だけど、今は外に向けなければ自分が壊れてしまう気がして、雨に打たれるようにシャワーを浴びた。
「俺は部活を辞める。」
「踏み込んだ答えがそれか。」
それを言った顔は想像したような驚きの表情とは違く、核心を見透かそうとするような真顔であった。
「それは逃げでしかないぞ。」
「俺はそれでいい。」
白波はうーんと唸って言葉を口に出した。
「まぁいいや。いいよやめても。今はそれでいい。そういえば、ジンとは別れたんだって?早いね」
「喧嘩売ってんのか?」
「直視しろよ、ジンの目には何が写ってると思う?お前はなぜ付き合った?本命から逃げただけだろ。本命からは目を逸らすなよ。」
そう、ジンとは別れた。昨日のことだ。赤石と白波が別れたことを知った時、二人とも冷静に戻った。失って、わかって、破滅を知って、外を見て気がつく。
本命はそこにあったのだと。
形だけの傷のつかない恋人。理想は外にあり。
理想に目を向けずに内をみると友達がいる。
仲間ではないが、同じ志を持っている。
同じ志を持つならばと、わかるわかると頷き。
他方同じ人間であり、同じ思考を持つものではないと知る。
本命を差し置いて、わかっていない相手をわかるわかると同じでないのに同じであると言い続ける。本命にあなたは違うと言われるのが、否定されるのが恐ろしいからだ。
踏み込む。
お互いに別れることが最善だと気がついた。
一人で内省するからこそ、両方が気づいた。
普通の恋人なら、理由を言って、やだと言い合いなんとか別れになるが、俺たちは違かった。二人ともはっきり俺たちじゃないと気がついた。本音はそこじゃないと。
俺は考えて考えて考えて返した。
「直視してるさ。俺と赤石とジンはコミュ障だからな。」
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