対峙

 部室にて。


 俺たちに必要なのは、話すこと。

 だけど、うまく話せないから、一人でいることが多かった。

 その三人が集まっても、会話はいい方向には向かなかった。


 コミュニケーション障害。


 みな抱えているものがみえない。


 俺はここにいていいのだろうか。


 こんな時に白波がいない。


 白波が俺らを会わせて、白波が逃げたようにも見えるこの状況。

 確かに、今あいつがきても何ができるか、あいつと赤石が会ったら気まずい。

 でも、どうなったらこんな状況にできるんだよ。

 まとまりかけてた雰囲気を告白の一つで壊せるものなのか?


「なぁ、赤石。本当にあいつと仲悪くなったのか?」

「ううん、そうは言ってないでしょ。」

「じゃあ、この状況どうにかしてくれよ。なんで白波あいつは来てないのか知ってるだろう?」


 仲悪くなってないようで何よりだ。

 とはいかない。

 説明してくれ。


 廊下から足音が聞こえる。


「よう、俺の話か?」


 渦中を起こした者が来た。




「部活はやめるよ。俺がいてもなにも進まない。俺がいない方がいい。」

 白波がやめる?

 この部活を作ったやつが辞める?

 白波は続けてこう言った。

「今の状況が俺にとって気まずいだけだ。大丈夫、また戻る。」


 俺はある疑いをぶつけてみることにした。

「白波、お前、俺たちを催眠で操ってるのか?」

「ふんっ誰が親父みたいなこと」

 白波から一瞬、嫌悪の表情が見てとれた。

 続けてこう言った。

「大丈夫、してないよ。君たちの思いは君たちのものだ。」


 俺はさらに疑う。

 白波に対して信頼ができていない。

 そりゃ、思い出作りに力を貸してくれたんだ。ありがたい。だけど、ヘラヘラしながら裏で動いていたり、友達が大勢いる。なぜ、俺のような友達がいないやつを誘って部活を作ったのか。友達になってクラスを円滑に進めてワンチームにするため?

 わからない。

 無償の善意ほど怖いものはない。


 俺のこと、本当は陰で笑ってるんだろ、その言葉がでてこない。

 言いたくないからじゃない。俺はきっと怒れない。怒ると大抵めんどくさくなるからだ。

 怒った後の周囲と相手の目。それを思い出す。

 関わるのが面倒だから無視する。怒る人だったんだと冷ややかな視線。驚きの視線。


「踏み込め、ここで踏みこまなければ、お前は変わらない。部活にはいる前と同じだ」


 俺の顔から読み取ったのだろう。本当に気味が悪い。


「どうでもいいのに、誰もが自分を守りたがる。人の目線。他人の悪口。これが社会というのを見せつけられる。だが、それで人生が終わるわけじゃない。今は令和だ。これを直視せずして、何が人と落ち合う。」


 なんでそこまで心に浮かんだことを言えるんだ?

 冷静すぎる。

 こいつの普通。

 みんなの普通。

 言うことと言わないこと。

 俺は無意識のブレーキが多い。

 だけどそれは悪いことなのか?

 相手を傷つけないための、コミュニケーション術ではないのか?


「だから、思ったことを言わないといけないのか?言わなくてもいい言葉はあるだろう。」

「それで言わないから相手に伝わらずに、今まで過ごしてきたんじゃないのか?」


 言い当てられた。

 突きつけられた。


 お前は、自分が可愛いだけだろと。

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