身近にある幸せ
腹が減っては戦はできぬ、ということでやってきました、学校の近くのコンビニエンスストア。コンビニに入って直進すると牛肉の入ったおにぎりに目がいく。ここでいつも迷う。だいたいその牛肉おにぎりを手に取るのだが、誘惑してくる他のコテコテおにぎり。うーんっ僕を取って~、私も私も~などと誘ってくる。迷う。
「何買うの?」
そう言って隣に立った赤石
俺の方は全く見ずに目の前の梅おにぎりを手に取った。
私ダイエット中なのーと少し前に言っていた彼女は、商品をとり裏側を見て商品棚に戻した。
「商品の裏側見ちゃう系?」
「うん、なんか添加物が危険っていう情報見ちゃうと不思議と食べたいって思わなくなるんだよね」
「で、何か買うの?」
「昼は何も食べてなかったからお腹ぺこぺこ、でもお腹空きすぎて、何見ても美味しそうに見えるからどうしよう。赤石が決めて?」
「もしかしたら、一個で満足するかもよ?」
そう言ってさっき戻した梅おにぎりを手にして差し出した。
「そうだな、でも牛肉おにぎりは食べたいから、二つだな。ありがとう」
「どういたしまして」
そうして彼女はサラダコーナーへ行って、レタスとドレッシングが入ったサラダを買った。
とぼとぼと二人で学校へ戻ると気づけば三十分過ぎていたので、残り十分急いで梅おにぎりと牛肉おにぎりを食して、手を合わせてご馳走様。みんな着替えが終わっていていつも通り一人残されて体育館に向かい体育の授業を受けた。
今日はバレー。女子はバドミントン。正直言ってライトノベルのような展開はない。女子と男子が出会ってばったりこんにちはなんてことは、話すなんてことはない。
アイターッ!
コツンとバレーをしている俺の後頭部にバドミントンの羽がやってくる。
「はい」
「ありがとう」
「赤石はん、羽のコントロールはきちんとするんやぞ」
「あんたもな、バレー集中しとき」
たまに出てくる大阪弁。俺たち大阪で過ごしてたことあんのか?
バチコーン
バレーの上手いやつは、顔に当てない。
この勝手な想像は、当たっているらしい。
こちらは漫画のように振り向いたら顔にあたって、「城ヶ崎ー集中ー」などとは言われない。地に落とせば得点が取れるというのに。
そして実際には点を取ってもスポーツ祭でもない限り、女子は見てないし、声援はない。非常にやりやすくて、体を動かすだけで3は取れる。体育というのは最高の授業だと思っている。
午後最後の授業は美術だ。体育祭とは真逆の授業。だが、絵を描くだけで3を通知表で書かれるという授業は貴重である。大体の授業は、考えないと答えが出ない、歴史など数字を使わない授業でも、記憶の中から引っ張り出しているのだから頭を使っていると同様だ。その点美術は、遊び感覚だ。勉強を遊び感覚とか言っている秀才と同じく、絵を自由に描くというのは遊びであると思っている。先生の心の中は真面目にやってんなぁと思っているかもしれないが、高校生なんてこんなもんっすよ、すんませんとこちらは思っておく。
そのあとは集中して、先生の指示に従い筆を洗い、水を捨て授業は終了した。
それにしても、遠くの未来でやってくる行事があるというのは、勉学というのを著しく妨げている気がする。確かに行事に精を出すのも素晴らしいとは思う。だけど、どうにも落ち着かない。じゃあ、行事がなければ勉強をするのかと言われればそれはない、空いた時間はバイトに打ち込むことだろう。去年は部活にも入っていないので文化祭には行かなかった。一度休むと休み癖がついてしまうのか、今年は不安だ。多分当日になったらトイレに駆け込む回数が多くなるだろう。なんだろう胸のモヤモヤがこの言い訳に繋がっている気がする。友達と話すのが正解だと思うが、今日はその紛らわせるバイトである。
自分の大体のバイト出勤時間は17時から21時の四時間である。
この時間帯には深い、それはまた深い理由がある。
帰ってご飯を食べて、少しsnsをして、お風呂に入って寝るという。生活リズムを崩さないためだ。少し飽きてしまう日常がこれである。まさに一生続くのではないかという錯覚に陥るくらいだ。起きる、学校、バイト、寝る。これを何日か繰り返してテストを迎える。早いが必ず迎える最後のテストに向けて頑張る。これを十一年繰り返した。長い長い旅の途中。まだまだ続きそうだ。大学行ったら十六年になる。
でもこういう日常は絶対に終わる時がくる。それはわかっているのだが、実感がついてこない。俺は将来何になってるんだろう。残暑がまだ残る中、空を見上げると夜空に煌めく一つの星が見えた。
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