お姉さんという一面
帰る方向がたまたま同じだったので一緒に帰ることにした。
本当にそれ以外の理由ではない。
本当だ。
本当の本当だ。
しつこすぎて本当ではないと思うかもしれないが本当だ。
そんな茶番はさておき、 帰る途中でレイアウトを決めようという話になり、真っ白な紙を買うべくコンビニに向かった。
普段ならなら何か余計なものを買ってしまう恐れがあるため、コンビニは目に入れていないのだが、今回ばかりは仕方がない。俺意識高すぎ。もちろんこんなことを赤月本人に言っていないが。
赤月は家族からアイスを頼まれていたようで、アイスコーナーからバーの六本入りを選び、紙と一緒に購入した。
「一緒に食べる?」
「いいのか?家族から頼まれていたんじゃ?」
正直に言ってしまうと、五月は特に食べようとは思わないが、誘われたし食べてみようかな。
「そう家族に頼まれてたけど、うち四人家族で、六本もいらないんだよね。だからあげる。いっほにたへよ」
赤月は会話の途中で口に突っ込んでいた。
「じゃあ遠慮なく、いただこう」
「はいほーぞ」
選んだのはオレンジ色のアイスバーだった。
フルーツバーの六本入りだったようで赤月が口に入れたものは桃味だった。
「赤月は、こういうSNSとかに貼れる紙作るの得意なの?」
「宣伝のチラシなら見よう見まねでできるかなって、まずそういうのって飛び込んで、それから調べるとなかなか面白かったりするからね」
自分で恥ずかしくならないようにか、赤月は、ちょっといいこと言ってやろうという雰囲気で話していた。俺も乗って突いてやろう。
「なるほど、得意ではないと」
「でも形だけ決めるレイアウトなら今でも、今までの宣伝チラシを思い出してそれっぽい形ぐらいは決められるでしょ」
「確かにな」
赤月のそういう今は知らないけどこれからやってやろうという精神は、今後必要になってきそうだし、頼る場面が増えるかもしれない。部活のメンバーはこういうのやらなさそうだしな、、ははは。
「そこはそんなことない、赤月だからできることだよっていうところだよ」
「そういうふうに言っちゃつとことが、友達いない理由なんじゃないのか」
「それは君もそう」
「そうだった」
「姉貴、彼氏できたの?」
多分、赤月家が近くなってきたのだろう。弟がやってきた。小学六年生だと。
「ちょ、やめて」
「姉貴、顔赤いぜ?」
弟よ、はったりで困らすのはやめてくれ、
赤月さんはてなマーク浮かべてて、なんかいい雰囲気になってたかもとか妄想してた俺がはずかしい。いやほんとに、やめてっ!
「あ、フルーツバー買ってきてるじゃん。もーらい」
弟くんは、紫色のバーをとった。あれはグレープ味だった。多分俺も小学生の時、グレープ味が一番好きだった気がする。勝手にとるなと怒っているところを見て見ぬふりして「かわいいな」と呟いてみせた。
「ねーさんやったね!」
どうやら聞こえてしまったらしい。
目をキラキラさせてこういうのであった。これで終わっても良かったのだが、顔を赤らめることなく、俺と弟を睨みつけてふんとでもいうように歩き出した。
かわいいというよりなんか、おもしれー女。
今日のところはもう終わろうかと赤月の家から出たのは、到着から十五分してからだった。意外と早い。ひとえに赤月の優秀さのおかげである。感謝。レイアウト配置を決め終え、歓迎ビラの図を明日持ってくるそうだ。
次の日「おはよーさっきコンビニで刷ってきた。」 右手に昨日決めたレイアウトに沿って作られたビラを持ち、頭上に掲げてやってきた。
「早いな!すげー見せて!」
「おおーすげー」
「ほんとだすごい」
みんなとやり遂げた一つのこと。それが僕には快感だった。 しかし、それとは逆に、赤月の顔はどこか浮かない顔だった。
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