わからない
私には、5歳離れた弟がいる。
弟が生まれてからは、弟に愛情を親が注いでいたから、今は寂しがり屋だ。
常に人がいてくれないと寂しい。弟を見ると長女だからしっかりしないとという気持ちと、愛情を奪っていった腹立たしさが拮抗して、結局分かり合えなくて対立する。
世の中には、「孤独の時間も必要だ。」「自分と向き合う時間が必要だ。」
「たまには一人にならないと」などという言葉が出ているが、その必要がない人もいる。それが私。常に一人でないと幸せになれない人がいるように、孤独を紛らわすために常に人といる必要がある人間もいるということをわかってほしい。弟が成長して、話ができるようになると少し楽しくなる。幼少期のように妬むことは少し減ってきている。弟よ、寂しいのに友達ができていないのは本当につらい。きゃーって言って群れる気もなければ、何かに夢中になることもない。ただ流れに沿って下っていくだけ。家族がいるから私でいられる。どんな私でも受け入れてくれて、つらくても寂しさを紛らわす話し相手になってくれた。弟はまだわがままで完全には受け入れられなくて言い合いの喧嘩をすることもある。大嫌いでも、大好き。
「さっき、浮かない顔してたけど、どうした」
「ちょーっと頑張りすぎちゃったかもしれない」
一日で完成してしまうなんてすごいやつだ。そう思っていたが、どうやら、かなり無理をしてしまったらしい。
おっと目の前に選択肢が出てきた。
1、お疲れ様!とにっこり返事をする
2、ありがとな、でもぶりっ子はキモいぞとぶりっ子気味で返す
3、…… スルーを決め込む
「お疲れ様、ありがとな」
1と2の折衷案を採用。
ギャルゲの裏コマンドを使用!
「え、なんか素直で気持ち悪い」
「ですよねー」
にこにこで返した。
二人になった帰り道、夕陽が差し込み、また一段と日が伸びたように感じる。
「実はさ、ちょっと不安なんだよね、あの案で、あのチラシ配りで部員が来るかどうか」
やっぱりか、そりゃ不安だよな。
「そうか」
「正解なんてさ、わからないじゃん?どれが正解かわかったら、こんなに悩むことなんてないんだろうけどさ。大人から見たら、小さなことでへこたれてるって思うかもしれないけどさ。まだ子供だし、経験積むしかないよね。将来とか、訳のわからない正体不明の未来のためにさ」
「できることから積み重ねてるんだな、赤月は。大人ってうるさいよね。大人の存在は忘れたい。けど、大人から離れることはできない。自由と、制約と板挟みされて、まさに現代の地獄と言える」
「なんか今日面白いね」
「確かに、ふっ笑えるね」
赤月とふざけて、大人っぽい余裕のある話し方をしてみた。
こういう何気ない会話って内容は忘れるけど、楽しい思い出になったりしそうだ。
「なんで、友達いないの?」
何日か一緒に過ごして、ふと思った。失礼な言い方をしてしまったと思った。
だけど、普通に話ができる。癖はあるけど、悪いやつじゃない。
気になってしまう部分はあると思う。
俺だけが、おかしいと思っていた。
「それはそっちもでそしょ、なーんかヘラヘラしてるのが気に食わないとかそういう理由で友達がいらないって思ってそう。私は、友達が多くなくてもいいと思ってる。本当に大事な人を大切にしたいから。」
そうかと呟いて、その日は終わった。
これ以上踏み込んではいけないような気がしたからだ。
過去、嫌なことがあったかもしれない。それはみんな少なからずあるのだから、そこまでは踏み込まない理由にはならない。だが、いざ実際に聞くとなると、それなりに時間を有するものだと悟ったのだ。
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