⑦side girl

数分前の赤石

「あぁ、楽しいな」

 私はその横顔を見た。

 どういう顔だったかは少しだけ覚えている。

 少し薄暗くて、少し寒くて、顔は少しだけ見える。

 光はブルー、暗さと相まって暗い青が周りを包んでいた。

 私も包まれてた。私がどんな顔をしていたかはわからないけど、私はその相手を見た。


 城ヶ崎は、すごく集中していて、楽しそう。

 だけど、少年のような純粋な楽しさとは違うような気配がした。

 いろんな思いが込められた楽しいなだった。

 この人はどんな世界を見てきたのだろう。

 まだ15か16で誕生日は知らない。

 部活のみんなの誕生日も知らない。


 大勢の人はそんな少ない人生で何か大きなことを経験したとか、まだ挽回できる。というけれど、それを経験してない私たちは言うべきじゃないと思う。

 つまり何が言いたいかというと、私たちは踏み込めないのだ。

 社会の授業で習ったけど、私たちはヤマアラシのジレンマにあるらしい。トゲトゲで近づきたいけど近づけない。そういう関係。


 誕生日は、自分でいうと祝ってもらいたいという厚かましい思いを相手に伝えているのと同じなのではないか、なんてことを考えている。

 私が彼に思っていることはなんだろう、今回のことで意外と頼りになる……なんてことや、普段は楽しそうじゃないけど、戦いになれば熱くなるってとこかな。

 



数分前の神 ボイスレコーダーを渡された時の振り返り

 今知った。知ってしまった。やつの不正。

 まさかボイスレコーダーを事前に取っていたなんて。

 絶対やっちゃダメでしょ!


 渡された時、押すしかなかった。

 ちょっと共犯者の気持ちがわかったかも?

 いや、ちょっとワクワクしちゃったかも。

 悪い子になっちゃったかも……どうしよう。


 

 あああ、もうやめやめ!

 いつも通りの私で回らないと!

 これで仲良くなんてならないわ!

 だけど、もうちょっと楽しんでもいいよね、、

 ああああ、違う違う!もうどうしよう!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る